Chapter13: 超紳士的処置
僕はクローゼットをかなぐり開けた。
急いで着替えを準備する。
ズボンは使用済みの赤いプーマジャージ。
上着はジャージではさすがに暑いだろうからテキトーな長袖Tシャツ……でも、腕を通すのがたいへんではないか? 半袖でのほうが着せやすそうだ――ということで、半袖Tシャツを選ぶ。こちらも使用済みだけれど買い置きがなかったので致し方ない。
そしてパンツは……なんと、購入時のタグが付けられっぱなしになっていた新品のボクサートランクスを発掘!
地獄で仏とはこのこと。
「さて、どうやって着させる、穿かせる?」
どうもこうもない。寝かせたまま、タオルをのせたままでやるしかない。
はじめは、ある意味楽そうで、ある意味難易度が高い下半身から。
ベッドに乗った僕は、くるぶしを並べた両足のつま先から、ボクサートランクスを片足づつ通す。隠さなくてもいいだろうとタオルを取り除いていた膝までは、一挙に生地をすべらせる。そこから太ももの付け根へというところで、ふと達観した。
……あまりに変態行為じゃないか、これ?
僕は自分が穿く予定だったパンツを、同級生の女の子に穿かせているのだ。
客観的に見ても、主観で見ても、画的に厳しい。顔から火が噴き出そうだ。これが僕の穿き古しだったら、うしろめたさで悶絶死する人間の第一号になっていたかもしれない。
もはや自らの行いを直視できず、リモコンで照明をオフり、室内を暗闇にして作業に戻った。……が、すぐにオンに切り替える。真っ暗な中でもぞもぞやっていれば、パンツを穿かせているのか脱がせているのか、自分でもよくわからなくなる。ますます変態度合いに磨きがかかるだけだ。
羞恥心や罪悪感に苛まれながら、時限装置とむきあう爆発物処理班のごとき緊張さで、処置をすすめていく。
ボクサートランクスを穿かせ、次にプーマジャージも穿かせ終える。
最終工程の上半身は、胴体にタオルをのせたまま、バンザイをさせ、両手の指先から半袖Tシャツの裾を通し、ひと思いに腰元まで下げおろした。
あとは裾からタオルを引き抜くだけ。
じわりじわりと慎重に手繰り寄せはじめる。
だがしかし、――
「んんっ……はんっ……ふぅ……」
敷島さんの口からあやしげな吐息がこぼれたため一時中断。
……これはしくじったかも。
思い過ごしであることを期待して再度、手繰る。
「ああんっ♪」
まいったな、と僕は顔をしかめた。
思い過ごしではない。酔いの成分が体内をめぐっているせいか、はたまた、元からの体質なのか、その判断はつかないものの、彼女は少々刺激に敏感になっているようだ。
後生だからそんな艶めかしい声をあげないでくれ。
僕が変態以外の何者でもなくなる。
ゆっくり手繰るべきか、一気に手繰るべきか。それが問題だ。
などと頭を悩ませていると、彼女が寝言を発した。
「やめて、痛いよ」
その内容にドキリとする。
てっきり、タオルが与える刺激に対して、快楽のようなものを得いているのだと思っていた。その実、受けていたのは苦痛だっただろうか。だとするならタオルはもう動かしたくない。けれど、「痛いよ」と口にした際、タオルがふれていなかった脇腹を彼女は押さえたようにも見えた。
関連性が気になって発言が継続されるのを待ってみれど、それ以降は沈黙。これでは引き抜きたくても引き抜けないではないか、とやきもきしていたが、予想外の形でミッション・コンプリートとなった。
敷島さんが寝相を変えただけである。
寝返りを打ってうつ伏せになった彼女は、違和感を覚えたのだろう。体を窮屈そうにモジモジさせてから、裾からはみ出していたタオルをつかんで、ポイっと投げ捨てたのだ。それでおしまい。
僕の心労は意味をなさず。
「ほっとけばよかったのかよ!」




