第6話「揺れる気持ち」
蓮から届いたメッセージ。
『今度の土曜空いてる?』
その文字を何度も見返す。
嬉しい。
本当はすぐにでも返事をしたい。
だけど、その直前に見た写真が頭から離れなかった。
真奈と蓮。
並んで笑う二人。
ただの写真だ。
それだけなのに、陽菜の胸は苦しくなる。
もし二人が付き合っていたら?
もし真奈が好きな人というのが蓮だったら?
そう考えるだけで怖かった。
結局その日は返事を送れなかった。
翌朝。
会社に着いた陽菜は、いつも以上に蓮を意識してしまう。
「おはよう」
聞き慣れた声。
振り返ると蓮がいた。
「お、おはようございます」
「昨日返信来なかったから寝ちゃったかと思った」
蓮は少し笑う。
陽菜の心臓が跳ねた。
「ごめんなさい」
「いや、全然」
そう言いながらも蓮は少し残念そうに見えた。
その顔を見るだけで罪悪感が湧く。
午前中。
陽菜は仕事に集中しようとした。
だが何度も視線が蓮の方へ向いてしまう。
すると。
「蓮くん!」
真奈がやって来た。
明るい笑顔。
蓮も自然に笑う。
二人は何か話している。
その距離感が近く見えた。
陽菜は慌てて視線を逸らした。
見たくない。
なのに気になる。
そんな自分が嫌だった。
昼休み。
社員食堂。
陽菜は一人で席に座っていた。
すると目の前にトレーが置かれる。
顔を上げると蓮だった。
「ここいい?」
「え?」
「空いてるし」
自然に向かいへ座る。
心臓がうるさい。
「最近元気ない?」
突然言われた。
陽菜は驚く。
「そんなことないです」
「そう?」
蓮はじっと見つめてくる。
優しい目。
だから余計につらい。
「無理してない?」
その言葉に胸が痛くなった。
無理している。
でも理由なんて言えるわけがない。
「大丈夫です」
そう答えるのが精一杯だった。
その日の帰り。
会社を出ようとした時だった。
エレベーターの前で真奈に呼び止められる。
「陽菜!」
「どうしたの?」
真奈は少し嬉しそうな顔をしていた。
「実はさ」
陽菜の心臓が嫌な音を立てる。
「今度、その人と二人で会うことになったんだ」
好きな人。
その言葉だけで胸が締め付けられる。
「そっか」
なんとか笑う。
「頑張ってね」
「ありがとう!」
真奈は本当に嬉しそうだった。
その夜。
部屋で一人。
陽菜はベッドに寝転びながらスマホを見つめる。
蓮とのトーク画面。
まだ返事をしていない。
このまま断った方がいいのかもしれない。
期待したくない。
傷つきたくない。
そう思った時だった。
通知が鳴った。
『蓮』
思わず息を止める。
メッセージを開く。
『陽菜と話したいことがある』
胸が大きく鳴る。
続けて送られてきた文章。
『好きな人のことで相談したい』
その瞬間。
陽菜の顔から血の気が引いた。
やっぱり。
好きな人がいるんだ。
真奈なのかもしれない。
そう思った時だった。
さらに通知が届く。
『だから土曜日会いたい』
陽菜は画面を見つめた。
断ろうと思っていた。
でも。
もし本当に蓮が真奈を好きだったら――
その相談を自分が聞くことになる。
好きな人の恋を応援するなんて無理だ。
涙がにじむ。
その時。
またメッセージが届いた。
『陽菜にしか相談できない』
陽菜の心臓が止まりそうになる。
どういう意味?
どうして私なの?
期待したらダメなのに。
期待してしまう。
スマホを握る手が震える。
そして迷った末に、陽菜は短く返信した。
『大丈夫です。土曜日、会いましょう』
送信ボタンを押した瞬間。
もう後戻りはできない。
蓮の好きな人を知ることになる。
そう思うだけで苦しかった。
だけど――
本当は知りたかった。
蓮の気持ちを。
そして土曜日。
待ち合わせ場所へ向かった陽菜は、
そこで信じられない光景を目にすることになる――。




