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好きなのに、言えなかった。  作者: 雨宮もか


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第3話 「相談したいこと」

翌日。

陽菜は落ち着かなかった。

昨日の夜に届いた蓮からのメッセージ。

『陽菜さんに相談したいことがあるんだけど、今度ご飯行けない?』

何度読み返したか分からない。

相談とは何だろう。

仕事のことだろうか。

それとも――。

期待しそうになる自分を必死に抑えた。

会社に着いても集中できない。

パソコンの画面を見ていても、頭の中は蓮のことでいっぱいだった。

「おはよう」

聞き慣れた声に顔を上げる。

蓮だった。

「お、おはようございます」

陽菜は慌てて返事をする。

すると蓮は少し笑った。

「昨日の件、また連絡するね」

昨日の件。

ご飯の誘いだ。

胸が高鳴る。

「はい」

それだけ答えるのが精一杯だった。

昼休み。

陽菜は資料を取りに給湯室へ向かった。

その途中だった。

角を曲がろうとした時、聞き覚えのある声が耳に入る。

蓮だった。

そしてもう一人。

真奈。

思わず足が止まる。

「ちゃんと伝えた方がいいと思うよ?」

真奈がそう言った。

「分かってる」

蓮が苦笑する。

「でも緊張するんだよ」

その言葉に陽菜の胸がざわついた。

伝える?

何を?

「蓮なら大丈夫だって」

真奈は明るく笑う。

「応援してるから」

応援。

その言葉が胸に刺さる。

まるで恋愛相談をしているみたいだった。

陽菜はその場から静かに離れた。

聞いてはいけないものを聞いてしまった気がした。

午後。

仕事中もその会話が頭から離れない。

蓮には好きな人がいる。

そしてその相談相手が真奈。

そう考えると全て辻褄が合った。

仲が良さそうだったことも。

昨日のメッセージも。

きっと相談したい相手が他にいるのだ。

自分はただ意見を聞きたいだけ。

そう思った瞬間、胸が苦しくなった。

定時後。

スマホが震える。

蓮からだった。

『金曜日の夜どう?』

陽菜は画面を見つめる。

嬉しいはずなのに。

素直に喜べない。

少し迷ったあと返信する。

『大丈夫です』

すぐに既読がついた。

『ありがとう』

その直後。

もう一通メッセージが届く。

『相談したいのは、好きな人のことなんだ』

陽菜の呼吸が止まった。

胸の奥が冷たくなる。

やっぱり。

そういうことだったんだ。

昼休みに聞いてしまった会話。

真奈の『応援してるから』という言葉。

全部が繋がってしまう。

陽菜はスマホを握りしめた。

好きな人の相談。

それを聞かされるために、ご飯へ行く。

考えただけで苦しかった。

それでも断れない。

好きだから。

諦められないから。

陽菜は暗くなり始めた空を見上げた。

そして知らない。

蓮が相談しようとしている「好きな人」が、

自分自身だということを――。

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