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好きなのに、言えなかった。  作者: 雨宮もか


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11/12

第11話「揺れる未来」

『異動先が大阪じゃなくなるかもしれない』

そのメッセージを見た瞬間、陽菜は思わず体を起こした。

どういうこと?

会社で正式に発表されたはずだ。

慌てて返信する。

『どういう意味ですか?』

既読がつく。

しかし返信はすぐに来なかった。

数分後。

ようやくスマホが震える。

『明日話す』

短い一文。

それだけだった。

翌日。

陽菜はほとんど眠れないまま会社へ向かった。

蓮の言葉が頭から離れない。

大阪じゃなくなる。

その代わりに問題がある。

一体何が起きているのだろう。

出社すると社内が妙に騒がしかった。

「聞いた?」

「まだ内緒らしいよ」

そんな会話が聞こえる。

陽菜の不安はさらに大きくなる。

昼休み。

蓮からメッセージが届いた。

『屋上来れる?』

胸が高鳴る。

陽菜は急いで向かった。

屋上には蓮がいた。

少し疲れた表情。

でも陽菜を見ると優しく笑った。

「ごめん。心配させた」

「何があったんですか?」

蓮は少し迷うように視線を落とす。

そして言った。

「実は異動の話が変わるかもしれない」

陽菜は息を呑む。

「大阪じゃないんですか?」

「うん」

「じゃあどこですか?」

蓮は苦笑した。

「まだ決まってない」

それは予想外の答えだった。

「どういうことですか?」

「新しいプロジェクトが立ち上がるらしい」

蓮は続ける。

「その責任者候補に名前が挙がってる」

陽菜は言葉を失う。

責任者。

それは昇進以上の大仕事だ。

でも。

「それって良い話じゃないですか」

そう言った陽菜に、蓮は首を横に振る。

「そうとも言えない」

蓮は少しだけ声を落とした。

「成功したら大きい」

「でも失敗したら終わる」

空気が重くなる。

陽菜も事情を理解した。

会社にとって重要な案件。

責任も大きい。

「だから迷ってる」

蓮は空を見上げた。

「受けるべきか」

「断るべきか」

その横顔が苦しそうだった。

陽菜は胸が痛くなる。

何か言いたい。

支えたい。

でも簡単な言葉は見つからない。

その時。

屋上の扉が開いた。

二人とも振り返る。

そこに立っていたのは――

真奈だった。

「やっぱりここにいた」

真奈は少し慌てた様子だった。

「蓮くん」

「部長が探してる」

蓮の表情が変わる。

「今?」

「うん」

真奈は真剣な顔で頷く。

「あとね」

真奈は続けた。

「その件、多分もう決まってる」

「え?」

蓮が眉をひそめる。

真奈はゆっくり言った。

「責任者候補じゃない」

数秒の沈黙。

そして。

「責任者に決定したって話」

蓮も陽菜も固まった。

突然の決定。

逃げ場のない現実。

そしてその日の夕方。

部長室から出てきた蓮の顔は、

今まで見たことがないほど険しくて――。

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