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自由戦争 -兵器と異能が戦火広げる世界大戦の果てに-  作者: 夜求 夜旻
第2章 世界大戦の引き金

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No.94 数多の反撃

小龍が適応に必要な一度目の経験を拒絶するような人間であれば、グレード1などには到底該当されない能力となっていたことだろう。程度は問わないにしても銃弾や爆発などを一度経験しないといけないというのはどう考えても躊躇するものだ。回復やダメージ軽減などの補助があっても、自らそれを一度見に受けようとするのは異常な感覚と言える。それでもそれを修行として突破し、実戦において基本的な脅威となる要素を排除している小龍は英雄的ですらある。


「基地の防壁がっ...。日本にいる怪力みたいな能力?それにしては...きれいに壊れすぎじゃないっ?」


ニコは小龍の能力を分析しながらも有効手段を探すため、いろんな兵器を小龍に向けて放つ。弾丸の包茎をハンドガンから対戦車ライフルまで。手榴弾から砲弾、ミサイルにナパーム弾。次々に一発ずつ小龍に叩き込んでいく。発射するための砲門は必要としない。弾があればそれを自発的に放つことができる。予備動作も発砲音も無しに対象へ放つ。


「これが兵器操作っ。でも僕には効きませんからっ」


小龍の適応は該当する対象が持つ自分へのあらゆる害を無効化するものだ。銃弾一つでも貫通力や衝撃、痛みなど様々な要素を一気に無効化している。そしてその無効化範囲は大雑把でも機能することが強みだ。五・五六ミリ弾だろうと七・六二弾だろうと同じ銃弾として括られ、一度でも経験していればそれは適応の対象になる。しかも貫通していなくても、防弾チョッキなどで受けたりすることで適応可能だ。大小にかかわらず、小龍自身が対象によって何かしら害を受けたということがトリガーなのだ。


「うそっ。なんも効かないじゃんっ。AZ!敵をここエリアから引き離して!!」


効果があるものがなにで、効果がないものがなにかがわからない状態で、初回しかチャンスがないという逆初見殺し状態。雑に数撃てば当たる戦法でやっても、当てて仕留められなければもう二度とそのチャンスは来ない。そんな状態を継続することはリスクが大きすぎることをニコは理解し、抵抗不可、防御不可の攻撃をさせないよう基地から距離を取らせるためにAZに命令する。


『おっけ!ロケットパ~~ンチ!!!』


『あははは!ただの突撃じゃん!』


「ぐっ」


数体のAZが小龍目掛けて突撃を仕掛ける。その衝撃で小龍にダメージは与えられないが、その勢いまでは無力化できない。単純な移動が害であるはずがない。


「くっ。くそっ!邪魔しないで!」


『あがっ...』


二撃。AZの体を構成する超合金。そこらへんのライフルや砲弾であれば凹みすらしない熱伝導率も極めて高い優秀な金属。それをたった二撃で木っ端微塵にした。高性能AIすら反応できないほど相手の属性やステータスを完全に無視した破壊の押しつけ。部品レベルですべてバラバラになる。


「ぐっ。離されたっ」


その勢いのまま地面に衝突するが、不自然にビタッとその場に突き刺さったように止まる。とはいえ、空中に投げ出された時間が多く、ロシア軍基地からはかなり距離が空いてしまった。対象には何かしら攻撃を当てないといけない。ただ、肉弾戦でも銃弾でも武器でも手段は関係ない。


「くっ」


「そんなの許すわけないでしょっ」


能力を付与した弾丸を拳銃から放ち、さらに迫りくるAZの迎撃を試みる。だが、それが許される相手ではない。弾丸は踵を返すように発射したはずの小龍側に軌道を反転し、小龍を襲う。その弾丸も例外なく小龍には効果がないが、小龍は肉体以外の選択肢を根こそぎ奪れた。


「くっ。...今のところ武器は大丈夫だけど、こっちも近づかないと能力を使えない。すぐに攻略は難しいか」


先にニコを攻略することが必須である。しかし、AZを含めた兵器操作はそう簡単には崩れはしない。そもそも小龍一人のみを相手取る必要など、ロシア側にはない。


「AZっ。この人はそんなに気にしないで敵軍を攻撃して!」


『わかった~!いくよ私たち!』


『おっけ~!』


「っ。数で押されるのにこっちからは武器を使えないのか..」


戦争とは個人戦ではない。完全なる団体戦だ。対面ではほとんどの能力者が小龍を攻略することは難しいだろう。


「ちょっと離れたところで見ててよ~。どうやら武器とか兵器じゃなんの効果もないみたいだからさっ」


互いに相性が悪いが、双方の目的が異なることにより、現状有利なのはニコ側だ。いくら基地が破壊されても武器や兵器自体を転送し、補充できるニコにとって、そこは大きな問題にはならない。


「っ....。こっちの攻撃も一切聞いてなくない?全弾何かで消されてる。着弾が確認できない」


ただ、ニコの能力による攻撃は一切その効果を感じられていない。砲弾やミサイルなど、火器を十分に使用しているため、着弾地点には何かしらの爆発や黒煙が発生するはずだが、それは一切確認できない。ニコは自分の能力の対象になっている砲弾らが途中で完全に能力対象から除外されていることを感じ取っている。


「もうバカスカバカスカ撃ってくるら~。あたしの昼酒を邪魔すんらって~の」


何かの酒瓶が何本も空になっている。本来ならじっくり飲むか何かで割るかするはずの酒をストレートやロックでぐびぐびと飲んでいる。戦闘中とは思えないほど遠慮なく飲み続けている。しかし、そんな状態でも一切、米軍側にロシアの攻撃は通用していない。届いてすらいない。前線基地を広く囲うように断裂、圧縮、隔絶などの空間操作による防壁を展開し、基本的な絶対防御を顕現させていた。


『神酒さんっ。敵のアンドロイドのせいで敵軍基地までうまく接近できません。敵軍基地の裏側などに空間転移してくれませんか!』


「はいは~い。敵軍はアンドロイドの武装女子だけ~?」


『今のところそうですっ』


「じゃあこっちは能力で守り続けないとやばそうだなあ。....一瞬でそっちいくからすぐ転送するよ~ん」


『お願いしますっ』


遠距離からでも空間操作は可能だが、少しでも位置ずれした場合、何が起こるかわかったもんじゃない。感覚的な能力行使なだけに繊細さが問われる。酩酊状態でそれを正確にやっているのは天性の才能と言える。神酒の場合、酩酊状態じゃないときの方が精神的に不安定になることから、神酒の通常は酩酊状態だと言える。


「はい、お待たせ。ってうわっ!?」


神酒が空間転移した瞬間、目の前に現れた光景に思わず神酒は驚愕した声を上げる。


「神酒さんっ、すぐに空間拒絶をっ」


「やってるっ」


銃弾や砲弾、ミサイルなどのあらゆる武器、兵器が土砂降りの雨のように横なぶりで小龍に降り注いでいた。それを神酒は自分ごと隔絶した空間を展開することで遮断する。ダメージや衝撃が小龍に効かないとはいえ、視界を奪うほどの弾幕にはさすがに下手げに移動できない。自分にあたらずとも自分の周囲が次々に抉れていく状況では前に進めなかった。


「さすがに脳筋すぎるでしょっ。効かないってわかってんのにここまでやるらんて、敵さんもぶっ飛んでんれ~」


「すいません、簡単に近づけるとは思ってなかったんですけど。...ここまで」


自分には通用しない手段で足止めをくらい、思うように作戦を遂行できない状況に小龍は歯がゆさを感じていた。


「でも、あたしを読んだのは正解じゃんれ~。とはいっても、長居はちょっとやばいかもだからさっと送るよ~」


「お願いしますっ」


そう転送しようとした瞬間、状況は一変する。視界が覆われるほどの武器や兵器の雨はピタッと止み、周囲に人が存在できる隙間がないほどびっちりと爆弾が出現した。姿を目視した瞬間に起爆し、轟音と共に破壊的な光と炎で一帯を包み込んだ。


「ぐっ....。え、嘘」


「なにこれ!?どういうこと!!」


その爆発は一切止まない。爆発をずっと継続的に連鎖させ、視界と行動を奪い続ける。小龍はおそらく耐えられるだろうがそれでもより行動することが難しくなる。神酒が隔絶している空間以外が問答無用でどんどん消滅していく。そこに大地があったはずなのに、二人が立っている場所以外が抉れることでとてつもない高度まで伸びる柱のように孤立していく。


「無茶苦茶じゃんっ」


「ここら一帯を全部空間操作で敵軍の拠点ごと破壊することはできませんか?」


「できないことないけどこの範囲やるってなったら結構その後しんどいかんね?」


「それでも...」


神酒の空間掌握による全体攻撃。指定範囲内の物体を問答無用で断裂、圧縮し、消滅させる手段。これまた防御不可回避困難な一手であり、基地などであれば一撃で破壊できるだろう。何度も神酒と対峙していればその脅威的な能力は対策必須であることを嫌でも理解する。そう、それはロシアもまた同じ。


『逆咲伍長っ。本体周辺に敵軍の機械兵が無数に出現っ。周囲を完全に氷結され、身動き不可っ。隔絶空間の外は...マイナス二百度を下回るまで気温が低下っ』


「くっ」


小龍も神酒も単独であれば相当攻略が困難な能力だが、軍隊規模の戦闘であることが逆に二人の足を引っ張っていた。敵の能力が単純な兵器であるがゆえに、その物量と破壊規模は決して無視できない。そして、敵もまた軍隊として戦争をしていることを理解しなければならない。


『なっ、隔絶空間にアンドロイドが侵入っ。どうしてっ。うああああああ!?』


「嘘っ。あたしの空間にどうやってっ。大丈夫っ?ねえっ」


神酒の能力は対象範囲とその外界を物理的な干渉を完全に遮断するものだ。だが、その範囲内の空間が時間停止しているわけではなく、あくまでその境界が不可侵となっているだけに過ぎない。同じ空間能力であれば、出入りはできるだろうし、対能力者となれば抜け道もある。そしてニコの強みもまたそこに通じる。


「場所さえわかっちゃえばこっちのもんだよね~。兵器が遮断されたり、AZが感知した場所が敵がいる場所ってわかれば、そこに兵器を転送しちゃえば問題解決ってわけだっ」


ニコを見かけでは計り知れないほどの猛者だ。その年齢に似合わないほどの実戦経験とグリゴリーやネスメヤナから叩き込まれた戦術、戦略が彼女を構成している。手に持つ手段は武器、兵器の数と同じであり、それらすべてを行使して、敵軍を攻略する。その戦術によって米軍の侵略部隊は小龍と神酒を残して壊滅状態となった。

ご拝読ありがとうございます。

皆様の娯楽として一時を楽しんでいただくきっかけとなれましたら幸いです。


素人の初投稿品になります。

これからも誠心誠意精進いたしますので、ブクマや☆での評価・応援、どうかよろしくお願いします。

感想もお待ちしております。

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