チェックイン、ロビーで鉢合わせ
「サード、配置完了」
アリスの声がしっかりと耳の鼓膜に届く。
「フォース、配置完了」
「スペシャルサンクス、配置完了」
スペシャルサンクスって何さ!というツッコミは、今は慎んだ方がいいだろう。僕達は今、空港の周囲で不審人物が見当たらないかを、警戒していた。僕はというと、目先が空港の建物の上だ。教皇の周りには、エリザベートさんが傍に付き添っている。っていうか、教皇ってあんなに若いのか!?二十代前半ぐらいの御姉様じゃないか。美人だ。
・・・・・!
タラップを降り切る前に、教皇様は、僕の視線に気付き僕の方向を見て、手を振ってくれた。これ、僕達の仕事じゃなくても良さそうなものだけど。
「それでは、引き続き、護送車の周囲の警戒を強めて」
教皇がホテルに無事到着した。世は事もなし。
「OK。三人には、同じホテルに部屋をとってありますから、そこで待機をお願い。パソコン、PS4完備。VRMMOだってあります」
「高待遇だね。オーッケイ。フォース、ホテルに向かいます。接続切ります」
骨伝導のイヤホンを外し、地上に戻って、ホテルへと向かう。
「帝国ホテルか。五つ星ホテルだったよね。結構役得かな」
そんな事を呟き、大きなロビーへと出てチェックインをしようと、向かっていると・・・。
「あッ!近親相姦野朗ですぅ!」
そんな事を、言われた。言ってる奴は、昨日のゴスロリだった。今日はスーツのようだけど、似合ってない。
「そのスーツ。全ッ然!似合ってないね!」
「うるさい、私の事はいいんですぅ。そっちのシスコンを治しやがれですぅ」
「・・・・・・・」
無視して、チェックインをまず済ませようかと思ってると、僕の目の前に背の高い女性が立った。この人・・・!
「君が、キングクリムゾンか。あたしは、フェイシー・カーリオット。先日はアーヴィングが失礼をしたな」
あっ。意外と、まともそうな人だ。こんなファーストコンタクトでさえ、まともそうだと思える人っていう自体少ないのって、僕の周りはどんだけだろうか。
「いや、いいんですよ。三上晃弘です。今回は宜しくお願いします」
「宜しく、アキヒロ」
手を差し出された。僕も手を差し出し、握手をした。
「アーヴィングはどうなったんですか?」
「図書館で魔道書の管理だ。これから一生あの生活だろうな」
ちょっと可哀相になってきた。
「別にきにしてないから、いいんですよ」
「いや、自殺を促されないだけでも、かなりマシな待遇さ」
「厳しいんですね」
「力を持つ者こそが、自らを律せる強さも持ち合わせていないとね」
「なるほど」
「リリーの事は、無視してくれてかまわないよ。この性格は元からだからね」
「うるさいですぅ!ジキルとハイド!」
「そうですか。お言葉に甘えさせていただきます」
「何言ってるんですか?シスコン!ロリ!夜中はいろんな女の子と、とっかえひっかえ、毎晩ベッドを共にしてる鬼畜野朗のくせに!!」
僕はカーフェイスの顔がわずかに変わったのを、感じ取ってしまった。
「・・・・・・・・・本当なのか?」
「いや・・・ぼ・・・僕は童貞です・・・」
「なら問題ないんじゃないか?」
「ですよね!」
「C以外は全部卒業してるくせに!!」
「・・・・・・・・いや・・してないです・・」
「嘘つけ!同僚から手を取られて、グチョグチョしたんくせに!オマン」
その瞬間に、アンジュリリーの口が、消えた。口だけ、消えた。
「あぶねーあぶねー。流石に放送用語はマズイだろ」
パリッと来たスーツを着たヒゲをカールさせた紳士が出てきた。
「カーフェイ・マローだ。噂には聞いてるよ。三上晃弘君。宜しくな」
イケメンだ。三十過ぎてるだろう。身体から余裕のオーラが放たれていた。多分、この人、既婚者だと思う。
「三上晃弘です。宜しくです。カーフェイさん」
この人とも握手をした。そして、軽く笑顔を作ってくれる。マトモな人だ!なんだなんだ。最初の二人が最悪だっただけじゃないか!ファーストコンタクトとセカンドコンタクトが、最悪だったなぁ。
「ところで、君、部屋番何?」
「え?いや・・・まだチェックインは済んでないんですけど」
「そうか。終わったら連絡してくれな。コレは名刺。いつでもかけてくれ。それじゃ、またね」
名刺を渡して、すぐにエレベーターに向かって行った。
「気をつけろよ、アキヒロ」
「どうして?カーフェイ」
「アイツ、バイだからさ」
「えーっと・・・両刀ってやつ?」
「そうだ」
「結構戒律緩い人もいるんだね」
「自称、恋の旅人だからな。それに、リリーを見れば分かると思うが、ウチの組織は、力優先なんだ。仕事さえこなしてくれれば良いって感じだからな」
「そうなんだ・・。大変だね」
「分かってくれるか・・・。あたしは、リリーから聞いたアキヒロの印象は最悪だったけど、話してみて、マトモな奴だったから安心してるよ」
「こっちのセリフだよ・・・」
「違いない」
そういって、軽く笑って、ロビーのチェックインを済ませた。
「私の存在を無視しやがるなですぅ!!」
そんな声が、エレベーターに乗り込み、扉が閉まると共に、聞こえてきた。




