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僕の預かったマーメイドが無垢過ぎて、ヤバイ。

ピピピピ!


ピッ!


「もしもし、三上晃弘様のお電話で宜しかったでしょうか?」


「はい。晃弘です」


「わたくし、レイラ・ミルフィーユと申す者です」


「はい。初めまして」


聞いたことの無い名前だ。僕は自分連絡先は、誰にでも配り廻る社交的な人間ではない。・・・もしかして、あの人魚の母親だろうか?


「えと・・・どちら様でしょうか?」


「以前お会いになられたマーメイドの母親でございます」


「こんにちは・・・レイラ・ミルフィーユさん」


なんて呼べばいいのか分からない。


「レイラ、で結構です。晃弘様」


かなり発音が良い日本語だが、わずかに、イントネーションがずれている。アクセントをかけているのだ。


「お気遣いありがとうございます」


彼女の境遇についてだろうか?僕が助けてあげるのは、住む場所と仕事と生活資金ぐらいなものだけど・・・・。


「急にご連絡差し上げて申し訳ございません。・・・今、心の中で考えてる事で合ってます。彼女についてです」


「心が読めるんですか・・?」


「いえ。声で大体解るだけですよ」


「凄いですね・・・」


「ええ。そうでしょうね。それでも、『およそ最強』だから末恐ろしい。今のあなたは、『魔法使いの弟子』の気分でしょうね。力は身に付けても、制御する方法が分からない」


僕が『魔法使いの弟子』のような力しか扱っていない?それでも、およそ『最強』?疑問も沸くし、反論したい事もあるけど、それよりもまずは本題だ。


「僕のことは結構です。それはおいおいお話するとして、ご用件は何でしょうか」


「もう済みましたが、新たな用件が浮上しました」


「何でしょうか」


「それより、先ずは、その呼称をなんとかして頂きたいのです。人魚という響きよりも、『マーメイド』という響きの方がベストです。そうそう、間違っても、『マーフォーク』だなんて呼ばないくださいね」


「わかりました。あの子、マーメイドの子のお母さん、彼女についてどうされるつもりですか?」


「彼女に関するお話をしたいのですが、お時間は大丈夫でしょうか?」


「・・・・・・・・・・・えっと・・・いいですけど・・」


大分こういうの、慣れてきたと思う。頭が混乱したり、動揺せずになんとか応える事ができるようになったのだ。


「ありがとうございます。それでは、早速ですが、お電話ではアレですので、直接会ってお話したいのです。今から来れますか?」


午後の授業があるけど、こっちが先決だ。


「いえ。大丈夫です」


「ありがとうございます。それでは、屍の嘆き所の王の玉座、三番街の死せる亡者の骸、一番地でお待ちしております。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


「晃弘様はご存知が無いみたいですね。そうですね。それでしたら・・・今から、八町島の八町美術館、二階のBコーナー、『蛹蛙の孵化』の前でお待ちしております。それでは、失礼致します」


電話が切られた。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


なんか、FFのラストダンジョンのような名前が出てきたと思う。もしかして、もしかして、そっち系の人?もしかして、ゾーマとか、デスピサロとか、オルゴデミーラとか、そっち系の人?


「・・・・行くけどさ・・・」


のこのこ行って大丈夫なものだろうか。一応、レイラさんは僕の事は『最強』だと評してたみたいだし、わざわざ、ハメるような事は無いと思うけど。


早速、学校を出て、た~~るにゃんに連絡し、車で飛ばしてもらう。


「ご主人様、本当に宜しいのですか?」


「行くよ。アポはとったし。娘の事をだしに、僕をどうこうっていうのも、つじつまが合わない話だし。とりあえず、話を聞くだけ聞いてみるよ」


「かしこまりました。お気をつけて」


美術館に止まり、1200円を支払うと、二階に上がる。


「すみません。蛹蛙の孵化という作品はどちらにありますか?」


「お待ちしておりました。こちらでございます」


カワイイ学芸員が僕を案内してくれる。・・あれ?ドアを一つ、さらに歩いてまた一つ。くぐっていく。


「すみません・・あの。蛹蛙の孵化という作品についてですが・・」


「・・・・・こちらになります」


ドアを開き、僕に入るように促す。僕は促されるまま、入る。


「・・・・なんだ・・これ・・・」


グロテスクな卵のような、繭のような、汚らしく白が茶色に侵されているカラーリングをしている。


「・・・・脈・・打ってる・・・・」


「お時間を取らせて申し訳ありません。三上様」


振り返ると、真っ黒のドレスに、真っ黒の仮面、漆黒の衣装には鈍く光る装飾品が飾られている。


「別にいいですよ。それで、どうでするんですか?彼女について」


「そうですね。私も散々散々悩みましたけど、結局、彼女の自由意志に任せる事にしました。陸に上がる事を許可しようと」


「それ良い考えですね」


「ですが、あの子は、何分、苦労というのも知らずに、ああやってずっと890年も海の底に潜っていたのですよ。これからの陸の生活の事を考えると、恐ろしくて、恐ろしくて」


「なるほど」


「そこで、提案が」


僕はその提案を受け入れた。


「で。兄さん。この子誰ですか?」


「エリカ・ミルフィーユだよ。事情があってうちで預かる事になったんだ。ちなみに彼女は彫刻家だよ」


「はじめまして~~エリカ・ミルフィーユです~~。ちなみに私は彫刻家ですよ~~・・ってさっき仰られましたね~~。ウフ。フフッ。ちなみにちなみに、私の名前、エリカっていうのは、晃弘様が付けられたお名前なんですよ~~。素敵ですよね~~。フフ」


エリカという名前は、西洋風の名前でも通じるし、戸籍改ざんの際に、当て字にし易いろうと思って付けた。


「・・・・・・・・・兄さん」


「はい」


「ボク、アリス。よろしく、エリカ」


「よろしくです~~。アリスちゃん」


「・・・・兄さん」


「はい」


「どこで連れてきたんですか」


「えっと・・・あの・・・・・まぁまぁ。悪い子じゃないからさ。とりあえず、人間社会・・・じゃなくって、現代社会で自立していくまで、ウチで預かる事にしたからさ」


「・・・まぁいいですけど。私は三上佐織です。三上晃弘の、義理のっ!妹です。宜しくです」


「宜しくです~。佐織ちゃん」


「ちゃんと、みんなに話したんですか!?」


「うん。了承だって」


「ですよね」


「あのう・・晃弘様。母から言われた事なんですけど・・・」


「はい」


「まず、初めに、おトイレのやり方と場所を習えと言われたのですけど、どのようにやるんですか?」


「・・・・・・・た~~るにゃん!!」


「はい」


「エリカに教えてあげて」


「かしこまりました」


「宜しくお願い致します~た~~るにゃん~~~」


それから、バスタイムや歯磨きといった一連の事を教えてあげると、アリスがエリカを風呂に連れて行ってくれた。僕は自室に行って、ベッドに倒れ込む。太陽の匂いがした。


「ふーーー。・・・・・にゃんにゃん!!」


たまに僕は、ベッドに仰向けになってこんな事を絶叫してしまう。精神の解放だ。緊張からの。


「一応お風呂、歯磨きと、覚えてもらったし。あとは箸の使い方とかかなぁ・・。寝よう・・・」


コンコン。独り言を呟いた後にノックが聞こえた。


「はい」


「エリカです~」


ドアを開けて応える。


「どうかしたの?」


「母に言われたんですけど~」


「うん」


「『お前は何も知らないから、晃弘様に全て教えてもらいなさい』と言われてたんですよ」


「うん」


「だから、全部教えてください」


「えっと・・・」


「とりあえず、入りますね~」


「ど、どうぞ・・」


そういって、ベッドの腰掛ける。僕も隣に座る。


「それで、他にレイラさんに何て言われたの?」


「まず、お前は、晃弘さんと一緒に暮らすのだから、お前は身を委ねて、身を重ねて供に寝ろって言われました~」


「・・・う・・うん・・・」


「今日は母の言いつけを守って、一緒に眠りましょう・・・」


ファ~~アア。なんて口に手をあてて欠伸をされる。


「えと・・・えとね・・・男と女は、一緒に寝るべきじゃないんだよ・・」


「大丈夫ですよ~~。問題ないですー。晃弘様の匂いも良い匂いですし、私は眠れますよー」


そういう問題じゃあないんだよ・・!


「えっとね・・その、危ないからね。これは一般常識なんだよ」


「危ない?どうして危ないんですか?」


きょとん、とした顔で尋ねられる。本気だ。本気で伝わってない。僕はこの未曾有の体験に焦り始めてきた。


「えと・・ほら。・・・・そういう問題が発生しちゃうからさ」


「そういう問題って何ですか~?」


う・・。ううぅぅうぁぁぅぅう・・・。


「えと・・性教育って、習った?」


「習ってないですよー。どんなのですか?良かったら教えてください~」


「こ・・子供ってどうやって作るのか知ってる?」


「知らないです~。そういえば・・・どうやってでしょうかね~?晃弘様は知ってますか~?」


「・・・・ちょ・・ちょっと!待ってね!」


僕はスマフォを取り出して、た~~るにゃんに電話をかけた。


「もしもし!?」


「おかけになられた電話は、現在電波の届かない場所にな」


た~~るにゃーーーーーーーーーーーーーんーーーーー!!


「そ。そうだ。折角だし、リビングに行ってトランプしようか!トランプ!」


「今日はもう遅いですよ~~?私もう眠くなってきちゃって・・・おやすみなさい・・」


そのまま、僕のベッドで睡眠を取られる。


「・・・・・・」


僕はエリカの顔を見ていたら、急にパッチリと目を開けられた。


「そうでした~。寝るときは裸で寝るのだと言われてました~」


「エリカ!僕の家はその・・・湿度と温度はバッチリなんだよ。それに、着るほうがいいんだよ」


「そうなんですか?それでは、おやすみなさい~」


・・・・・。そんな言葉の五秒後に寝息が聞こえてきた。おそらく、レイラさんは、自分で思ってる以上に、自分の娘は何も知らないのだと思う。今日はこのまま寝せてあげていいかな。知らないなりに、どうこうなんて問題も発生しないだろうし。


「・・・・」


眠くなってきたので、下に敷き布団を敷いて、そこで眠った。眠ってる最中に誰かが僕の布団に潜り込んできたような気がしたのは、おそらく気のせいだと思う。

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