僕の異常な日常に僕自身が慣れてしまって、ヤバイ。
「で。最近オナニーしてないって顔してんのね」
美鈴に、そんな事を言われた。もう慣れてしまったけどね。
「・・・・・・」
「今日は部活あるから。それじゃーねー」
「それじゃあー」
今日も普段通りの学業が終わった。サボってたけど、欠席扱いではなかったのが気になった。
ピピピピピ
「もしもし」
「やぁ。少年!元気かいー?」
「沢木さん・・元気ですよ」
「昨日は人生初の授業ブッチデェーだったそうじゃないか!」
「・・・・はい。すっごく楽しかったです」
「どうやら、少年は、少しずつダークサイドに堕ちていっているようだね。あとちょっとだよ。フォースの暗黒面の素晴らしさは!」
「厚生省の内定を蹴るような真似はしませんけどね」
「ああ・・・。あれね。あれ、本当は厚生省じゃないんだよね」
「嘘だったんですか!!」
「本当は、MI6をクビになって、薬漬けにされそうになったところを、社長に助けて貰ったんだよ」
「そうなんですか・・・どうしてクビになったんですか?」
「ネトゲのやりすぎに決まってるじゃないか!!アイツラはすぐ病気病気っていってやがる!全く!イギリスのジェームズ・ポンドに憧れて入社したのに、やる事はセコイ事ばっか!・・・おっと、失礼」
僕は電話を無性に切りたくなってきた。
「まぁいい。本題に移るよ。晃弘君の精神状態をベストにするのも、俺・・・っていうより、特事の仕事なんだよ。それで、ね」
そこで話を区切った。もったいつけているらしい。
「・・・はい」
「好きな時に、休めるように手はずを整えたよ。権力を使ってね。だから、晃弘君は、これまで通りの、無遅刻無欠席は守られるってワケさ!トレビアーン!」
「・・・・それって・・」
「うん。最高じゃないか!だから、これからは、俺と一緒にネトゲしないか!?」
「・・・・結構です。僕はすでにギルドに入ってますから」
「・・・・・・・・・・・もう入ってるの?」
「はい」
「・・・・・・・そっか。・・・そうなんだ。・・・・・あーあ」
凄まじいテンションの落胆を感じた。この人、どうなってんだ!?危ない薬でもやってても不思議じゃない!むしろ、アルコールを飲んでるとかかもしれない。
「・・・・・以上!サラダバー!!」
言いたいダジャレを言うだけ言って、切られた。・・・・・もう慣れたよ。
「お乗りくださいませ。ご主人様」
目の前のスポーツカーが急停止した。目立つから止めてって言ってるのに!!・・あれ!?
「もしかして、色変えたんですか?」
僕は車に乗り込みながら、た~~るにゃんに言った。
「いえ。新しいの買っちゃいました」
「へぇ。意外だなぁ。もしかして、た~~るにゃんって車好きなの?」
「・・・・・・・・・はい」
「そうだったんだ。知らなかったな」
「晃弘様の監視と盗聴が必要の無い時は、よくレース動画を見ていますよ」
「・・・・そうなんだ」
もうこれも慣れたんだよね。こういうの。
ミカミタワーに着いて、僕はとりあえず、自分の部屋に戻る。
「あ。晃弘。おかえり」
生まれたまんまのお姿で、アリスがリビングを徘徊していた。
「・・・・ただいま」
僕は無我の境地でその光景をスルーする。これも、慣れたものだ。
「風呂でも入って、ざばっとするか!」
すでに浴室には暖かいベストな温度のお湯が張られている。
おーとこにはー男のーせかーーいーがーーあるーー!
コンコン。浴室をノックする音が聞こえた。
「入ってますーーー!!!」
僕は大声で叫んだ。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
カチャ・・カチャカチャ・・・カチャ・・・ギ・・ギィイイーーー・・
「・・・なんで!?」
ドアが開く音が聞こえた。・・・・まさか・・。
「・・・・・・兄さん」
ですよねー。じゃないッッ!!これは初めての事だ!これまで、暗黙のルールがあったはずだっ!沙織は決して浴室にだけは、狼藉行為は慎んできたはずだっ!
「今日は疲れてるんですね。代えのパンツと服、置いておきますね。それじゃ」
ギィィイーーーバタン。そんな稲川淳二先生のフルボイスを、僕は脳内補完できてしまった。
「・・・・ちょっとほっとした。・・・・まだ居るなんて、オチはないよね・・・」
僕は浴室から更衣室を見る。誰もいない。・・良かった。
「・・・・・今、考えると、改めてよくよく考えると、僕の日常って、一線をいろいろ越えてるよなぁ・・・」
そんな事を考えながら、身体をずぶずぶと口も浸して、鼻の先、ぎりぎりまで浸す。
「・・・・幸せ・・」
着替えると、夕食時間のようだ。えるにゃんとた~~るにゃんが、キッチンで料理を作っていた。
「あら?ご主人様はお風呂ですか~~?」
「高遠さん・・・じゃなくって、えるにゃん。そうだよ」
「今度は一緒に入りますかー?・・なんちゃって。ウフフ」
「ア・・アハハ・・・」
僕は腰に手をやって牛乳を飲みながら笑う。こういうのも、慣れたものだ。
「ご馳走様でした」
食事が終わると、自室に戻る。以前は全部後片付けをやっていたが、今ではえるにゃんというメイドさんがいるから、楽だ。
「・・・・・また。サムネに騙されちゃったよ・・・」
ついつい、扇情的なお尻で誘惑している動画をクリックしてしまう。その挙句に釣り動画に飛ばされるのだ。これも慣れたものだ。
「・・・・寝よ・・」
電気を消して、ベッドにもぐる。最高の寝心地だ。ベッド、最高だ。
「・・・残り三分の一の宿題は朝やろうっと・・・」
・・・・・コンコン。ノックの音が聞こえた。
「もう寝てます!寝てますから!」
・・・・・・・ガチャ。ガチャガチャ。ギィィイイーーー。
「・・・・・・・・・」
「兄さん。今日の調教がまだ済んでませよ。昨日の分も併せてです」
今日は五秒か。当初は三十秒はかかってたのに。そんな事を考えながら、意識は眠りに溶けて込んでいた。
「またですか・・兄さん・・・」
そんな声が、聞こえたような・・・聞こえなかったような・・・。




