僕の幼馴染のお姉さんが怪しい態度で、ヤバイ。
チャイムが、終わり、今日も一日の学業を終えた。・・・そうだ。
「た~~るにゃん?晃弘だけど、今日の迎えはいらないから。・・・・・・・・・。いや、違うよ。ただ歩いて帰りたいんだよ。最近歩いてなかったし、高校からミカミタワーへの帰路って、まだ歩いて帰ってなかったからね。・・・うん。それじゃ」
僕は歩く。歩く。この辺は、佐織との一件で、歩いたっきりだったなぁ。なんて思いながら、夕陽の浮かぶ、海岸沿いを歩く。
ピピピピピ
「もしもし」
「もしもーっし。お姉ちゃんダヨー!やったね!わーーーい!」
「・・・晃弘です」
「良かった!最近、私達って、ご無沙汰じゃない?」
何の!?なんて事はいえない。分かってるから。あえて言ってしまっては、分かってるのに、言わせてしまうような、変態になってしまうからだ。
「・・あのですね。付き合ってもないのに、そうほいほいと異性がキスをしてもいいという訳じゃないんです」
「いけずーーー。本当はお姉ちゃんの体が恋しくて、夜な夜な机に向かって目を瞑り、一心不乱に」
「切りますよ?」
「あーだめだめ!せっかくだし。今日ヒマ?」
・・・・正直にいこう。『一生幸せでいたいなら、正直でいることだ。』野原ひろしの台詞を思い出した。あの映画は最高だ。
「ヒマです」
「お姉さんと遊ばない?」
「・・イ」
「遊ばない?」
「はい」
・・・・・・・・姉さんのイエスマンを卒業できる日は、果たして来るのだろうか」
「よーし。それじゃ、バッフェルクイットのバッファロービルで会いましょう。それじゃー」
電話が、切れた。
「・・・・・・・・・」
僕は回れ右をして、今まさにやってきてバスに飛び乗った。
・・・・・・・・。今日の目標。キスを絶対に避ける。うん。頑張ろう!
『やぁ、悪い子、良い子、お父さんにお母さん。家族のキッズ!元気かぃ!?俺!?おれぇあ?おれぇあ元気だぜぇぇい?バッフェルクイットのバッファロービルへようこそ!俺の名前こそが、バッファロービル。みんなぁ。覚えたかい?バッファ』
ゲームセンターだ。バッファロービルは、メダルコーナーのシンボルマークであり、今も必死になってバッファロービルは、じゃりんこ達に、蹴られたり、抱きつかれたりしている。・・・今食らったのは、アンパンチだ。・・・懐かしい。
「お待たせ?待った?」
「今来たところですよ」
「それじゃ、遊びましょうか」
そう言って、メダルコーナーにカップを置いて、メダルを出す。
残り・・・・18493枚。
「どんどん、ガンガン使っちゃいましょうか」
カップ一杯の500枚も渡されて、とりあえず、僕らはグランドクロスという名前の大規模メダルマシーンで遊ぶ事にした。
「面倒だから、ガンガン流しちゃっていいわよ。えーっと、ふんふん。今日は三番と五番ね。まぁいいわ。空きのある二番に座りましょうか」
言われるまま座って、僕と姉さんはコインを流して、ルーレットを回す。
「ここのジャックポットが、なっかなか出なくてね。シルバーは見たんだけど、ゴールドはまだ見てないのよね」
そんな事をいってのける。
「よく来るんですか?」
「ええ。ヒマ潰しにシステムの穴を見つけにね」
「そ、そうなんですか・・・」
「そうそう。見つけて連絡すれば、いくらか謝礼が貰えるのよ。私にとっては割りの良いバイトね」
僕の考えるバイトとは、方向性が全く異なる。流石、才女。ここでも歴然とした差が表れるのを感じた。
「お!グランドジャックポットチャンスね!頼むわよー!ごーごー!!」
大きな銀色の玉がルーレットに沿って、回りだした。ルーレットも回転している。ゴールドジャックポット、シルバージャックポットと両極に書かれている。なるほど。あの穴に入れば・・・じゃ・・・っく・・ぽ・・っと・・。
カコン。
ステイションナンバー2、ゴールドジャックポット!
機械のランプが全て消灯し、眼前の大きなモニターで、不思議の国のアリスのアリスが、パレードしている動画が流れた。
『グランドクロス、ステーションナンバー2のお客様、ゴールドジャックポット、おめでとうございます』
店内アナウンスが流れ、ガラスの後ろ越しでは、野次馬が出来ている。じゃりんこ達や、小さい子供達は、目を丸くして、アリスの凱旋パレードを眺めている。
「・・・・へえ。こんなのだったんだ・・・」
そんな言葉を呟いているのは、隣の姉さんだ。
「・・・・・ちょっとだけ、達成感あります」
このちょっとだけ、というのがミソだ。これまでこういう体験は無かったのだ。・・・嬉しい。
メダルというメダルが、前から、横から、流れてくる。7846枚なんていうメダルが、一斉に流れ込んでくる。下のコイン口から、次から次へとカップを交換しなければいけないほどだった。クルーがいくつものカップと、お祝いの言葉を持ってきてくれる。
「さぁ!次はマリオよ!」
そう宣言され、いっぱいになったコインに見向きもせずに、席を移動する。見ていた恋人らしきカップルに席を譲った。
僕達は、マリオ、ぷよぷよのようなステーションを次々とジャックポットチャンスをゲットし、大規模なマシーン稼動を楽しんだ。次から次へと。
「・・・・・姉さん」
「・・・何?」
「どうかしましたか?」
「どうかって、何?」
「今日の姉さんは、ちょっと変だなって感じたからです」
「別にどうでもないですー・・・いけ・・いけ・・・いけ!いったあああ!よっし!やった!」
「二年、三年の付き合いじゃないんだから、分かりますよ。・・・・何かありましたね?」
「・・・・・・私、プロポーズされちゃった」
「・・・おめでとうございます」
まただ。大切な何か、僕を構成するパズルのピースの一片が、外れるような感覚。この寂しさを埋めるために、多くの代償を払う。僕は、この感覚が何か、今はもう、理解していた。
「・・・・ありがと」
「・・どうされるんですか?」
「受けようかなって・・・思ってるの」
「良い事ですよ。幸運なナイスガイはどんな人何ですか?」
「同期。私と同じチームのね。良い人だって、私は思えるわ」
「・・・何か手伝える事があれば、何でもやりますよ」
「彼は大丈夫。良い人過ぎるのが欠点かしら。・・・・どうしようって、返事は・・・まだ」
「良い人なら、迷わず、掴み取るべきだと思いますよ」
「あなたはどう?」
「心から、祝福しますよ」
「・・・・そう。そっかー。やっぱり」
「あーあーーーあ。私、あなたのおちんちんの皮の中のゴミを取ってあげてる頃から、目をつけてたんだけどなぁ・・・・人生設計、狂っちゃったって感じ」
「人は、成長するらしいですよ。そして、変化は喜ばしいものだって」
「ちょっと、怖いかな」
「姉さんでも、怖いものってあったんですね」
「あるわよ。そりゃあ。そっかーー。そうなんだ。受けましょうかしら・・っとーーー」
「おめでとう。姉さん」
「・・・・ありがとう。・・・・・最後にいいかしら?」
「なんでもどうぞ」
「キスしていい?」
「ほっぺたに、お願いしますね」
ほっぺに、柔らかい感触を感じた。目を開けると、姉さんの整った顔があった。
「ありがと。それじゃ、私、お返事しにいってくるね」
「どういたしまして。いってらっしゃい、姉さん」
僕こそ、ありがとう、だよ。
今日の目標。達成できなかったな。そんな事を考えて、僕はバス停へと向かった。




