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僕のクラスのマドンナに昼食を誘われて、ヤバイ。

ひとりじゃないって~~にゃんにゃにゃにゃにゃんにゃ~~♪~~♪いつまでも~~~♪どこまでも~~~も~~♪


「うぉ。きた~~ぁ!ナイトフル、オン!」


深海のような深い青色の甲冑の少女が、敵の首根っこをつまえる。


「に・が・す・か、よぉおおおお」


じたばたな動きを押さえ込み、2mは超える弓が引かれる。


「フォースは、ここで、脱落にゃん!」


青色の弓の矢が放たれ、直撃したのは深紅の甲冑の顔面だった。


ああああああああああああああああああああああああああああああ


「・・・・夢!?」


ハァハァ・・・・。


「嫌な夢を見た・・・・・」


最悪の目覚めからもう一眠り!なんて気分にはならず、結局朝まで、た~~るにゃんと、カードゲームをやって過ごした。僕は全敗した。デッキ交換後も合わせて。


「・・・・・・・・」


起立、礼!・・着席!


・・・・・・・・・・。


「あんたがそういうムッツリ面って珍しいわね。なんかあったの?」


美鈴は授業中にも関わらず、そんな事を尋ねてきた。


「ちょっとね・・・」


よほど不機嫌な顔をしているのだろうか。自分では分からない。悪夢を見るというのは、滅多なことだった。それが原因の一つだと思う。た~~るにゃんとのデュエルも一つの原因だろう。


・・・・。試してみるか。ウィザードの魔法カードで、自分自身の精神を安定させる。・・・・・。


・・・うん。悪くない。こういう使い方も、やはり可能なのだ。


にゃんにゃにゃにゃにゃんにゃ~~~♪


良い感じで授業を受けて、気が付けば、もう昼時。


「ご主人様!食堂ですか?・・・・なんちゃって・・」


高遠真理音たかとお・まりねさんが、僕の机に手を置いて言う。


「そ、その話は、厳禁だよ!内緒の事なんだから!」


声を潜めて言う。


「ですよね!じゃーん。お弁当作ってきました。たまには一緒に食べましょう?」


ニッコリ顔して、僕に言う。


「ありがとう。えっと・・・」


「大丈夫ですよ。目立たなくて、昼食にうってつけの場所ならもう見つけてるんです」


そういって僕は促されるまま、立ち上がる。長い廊下と広い中庭の景色。先導してくれる高遠さんは、外の景色を見向きもせずに、すいすいと、歩いていく。


「・・・・ここ?」


茶道準備室と書かれている。


「ええ。他には人はいないから、ゆっくり食べれますね」


「あはは・・・ありがとう」


こういうシチュエーションは、生まれて初めてだ。緊張してしまう。アニメやエロゲーギャルゲーでは御馴染みの展開かもしれないが、今の今まで二次元だけの存在が、リアルに僕の現実として浮かび上がっている。


「お茶、入れますね」


四畳半ほどの一室に、中には小さなテーブルが置かれている。準備室の名目で、実際は休憩室やら談話室やらに使われているのだろうと思う。


「あ・・ありがとうございます」


このシチュエーション。17年の僕の人生において。まさに絶頂期かもしれない。多分。もう二度とないだろう。僕は噛み締めてお茶を飲み、お弁当を頂いた。


「美味しかったです、高遠さん。悪いですね。勤務外なのに、気を使わせてしまって」


「いいんですよ。最近は本来のご主人様である三上君と一緒にご飯、食べてなかったですから」


「あはは・・・仕方が無いですよ。最近は僕も、会社も忙しいですから」


多分、もうないだろう。十分だ。学校生活で、この瞬間は絶頂だろう。この場所において、学校という場において、僕はただの、一高校生に過ぎないのだ。それも、ただの真面目な学生の一人。成績は中よりちょっぴり上なだけの、美鈴以下。そんな僕が、こんなシチュエーションだなんて。今日という日は、僕の人生を振り返る際の一ページに間違いなく数えられる事になるだろう。


相手は、あの、クラスでカワイイ女子生徒双頭の一人、高遠真理音なのだから。


「三上君って、あのミカミグループのお家柄だったんですね。私、びっくりしましたよ」


「あはは・・・僕もはっきりと伝えられたのは、半年前だったよ」


「そうなんですか?」


「うん。半年前に家が全壊してね。じゃなかった、火事で全焼してね。その時に助けてくれたのが祖父でさ。本当は仲悪いんだけど、それがきっかけで改善修復って感じだったんだ」


火事だったかガス爆発だったか、どっち扱いだったか、もう忘れてしまっている。


「そうなんですか・・凄いですよね。私、毎日発見の連続ですよ。ミカミタワー。超高層ビルですし、八町島全体が眺め渡せますし」


「そうだね。祖父の力だから、僕もただ、凄いって思うだけだよ」


「・・・実は私も、魔法少女た~~るにゃんをプレイしてみたんですよ」


・・え?


「ど・・どうだった・・?」


てのひらから汗が滲み、心臓の鼓動が聞こえ始めて、呼吸が荒くなるのを感じた。


「すっごい良かったです!おもしろいですね!私も小学生の頃なんかは、セーラームーンとか毎週見てた子ですから。実際のえるにゃんも結構好きになれましたよ」


「そ、そうなんだ。うん。うんうん。良いよね・・・」


まさか、クラスのカワイイ子の代表格の子と、こんな会話をする日がくるとは。想像さえしていなかった。


「よく、私が思ってただけなんですけど、魔法少女が悪者にやられて、Hな事されるんじゃないんですね。ドラマ展開が凄かったです」


「そうなんだよ~~!!ドラマ展開が凄いんだよ!そこの前提が良くってね。まず、プレイしている時に、プレイヤーを安心させるのが良いんだよ。魔法少女の強さも十二分に発揮されてるシナリオだし」


「ですよね!特にた~~るにゃんと、先生とのバトルシーンは泣きましたよ・・・」


「そうなんだ!憎い演出もあるもんなんだよね!まさか、そこで!みたいなところが!」


熱く、こんなに盛り上がれるなんて。しかも、ただ、プレイしているだけではなく、きちんと、ルートを全部廻ってるなんて、これは、もはや、『同士』と呼べるレベルだ。


「ところで・・・た~~るさんから、聞いたんですけど」


「うん。リアルの方のた~~るにゃんね」


「そうです。良かったら、高校を卒業したら、そのまま事務課や広報課、秘書課としても採用できるって教えてくれたんですけど・・・」


あの話か。あの話なのか。うう・・・。


「もしかして、変な事、た~~るにゃんが言ってた?」


「変な事?いえ・・・特には無いですけど、その、どうなのかな。って思って、三上君に尋ねたくって」


なるほど。ソレを聞きたいから、こういう場を設けたわけですね。わかります。


「大丈夫だと思うよ。うん。最終的にはた~~るにゃんが判断するんだろうけど、高遠さんさえ望めば、そのままうちにいてもらうって事はさ」


「そうですか。良かったです。ちょっと、不安になってしまって」


複雑な気持ちがした。そうですよね~。そういうのじゃないと、こういう場を設けるなんて機会は無いですもんね~。でも、顔には出さない。問題は無いみたいなのだ。十分じゃないか。それに良い体験もできた。もう二度とこういう機会は無いのだ。


「ご馳走様。ありがとね。でも、もう気を利かせて、僕の分まで作る必要は無いからだ、大丈夫だよ」


「いえいえ。こういうのも、メイドの役目ですから!・・・なんちゃって・・・・!」


「アハハ!」


「ウフフ!」


『ウィザード』の魔法カードを使用すれば、彼女の本心を探れるだろう。僕は内心、思った。どういう心境で、彼女は今僕と会話しているのだろうか、と。それでも、他人の心を勝手にこじ開けて覗き見するのは、ルール違反のように思える。道徳的に、許されない行為だ。


「魔法少女もののゲーム、私も他に手をつけようかなぁ」


「・・・やめたほうがいいよ。他は魔法少女が酷い目に遭うのばっかりだから。ハッピーエンド自体も少ないんだ」


「そうなんですか・・・」


「た~~るにゃんぐらいなものだよ」


それも大きな要因だけど、最大の要因は、恐怖だ。もし、彼女のこれまでの動作、所作、体験が、全て単純な僕の高感度を上げるため、この場を設けるためだけに時間を消費していたら、僕はきっと、辛くなるだけだろう。


「そうなんです~~。そろそろ、お昼休みも終わりですね」


自分の心の狭量さに、辟易してしまう。大人物は、それさえも、カワイく思えると思う。僕は、小物だ。ここまで考えが及ぶと、途端に、この場を楽しめなくなる。


「僕は先にクラスに戻ってるね。それじゃ」


「それでは、また!」


教室に戻る時に、考えた。僕は、何を以って憧れのマドンナに好かれてたと思ったんだろうか。どれもこれも、特筆は無い。


「僕は、僕を好きになる人の動機を知りたく思うのか」


どうして?なんで?これが重要なんだと思う。そう考えれば。


そう考えれば。


僕の全てを知っている、僕の全てを受け入れてくれている、佐織こそ、僕に・・・・。


ここまで考えが及ぶと、僕は頭を振り払う。ダメだ。・・・しかし。


僕は自分の恋人、付き合ってる人には、全てを分かち合いたいって思うし、分かって欲しいって願うと思ってる。こんなドロドロとした欲望すらも、許容してくれる人間は、おそらく、少ない。誰にでもある心の闇は、開放的でいて良いほど、社会は開かれていない。そもそもが、反社会的な事なのだ。エロゲーの趣味というのは。二次元の魔法少女に現を抜かしているのを、笑って許容してくれる人。


「ビクトリアって、相手の考えが読めるって、言ってたよな。15歳なのに、あんなに頑張って」


僕は、さっきの高遠さんとの一席さえ、本心を探るのは怖かった。あの子は、15歳にも関わらず、多くの欲望、心の底の闇、狂気、汚らしいモノに触れ続けてきただろう。・・・・正気で、いれられるのか?


「もし、これまで全部の全てが、聞こえてしまったら」


きっと、壊れてさえしまうと思う。


「あの電話」


だったら、あの引用、ゲーテやシェイクスピアの台詞は、彼女の心の現われか。


僕も周りの景色を観ずに、教室へ真っ直ぐに向かっていった。

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