僕の見合い相手からの電話が詩的過ぎて、ヤバイ。
「それでは、配置を発表します。今作戦には、晃弘君、サポートに、アリス、援護に栞」
電話ですよ。兄さん。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
作戦会議を行っている大事なシーンで、なぜか、ここには居ないはずの佐織の声が響いた。・・・・・あっ。そうですね。僕の電話ですよね。
「す、すみません!ちょっと外します!」
もう市販のセキュリティじゃ、佐織には通用しないのか。今度からは、沢木さんか、最上さんにやってもらおう。
「・・・・もしもし」
「わらわじゃ」
見合い相手の15歳、ビクトリアからだ。
「さ・・最近どうじゃ?そ・・その・・心のカーテンはひ・・ひらめいて・・おるか?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「・・・・・・・え・・えっとですね・・・あんまり・・ひらめいてないですね・・」
「そうか・・そうか・・・・わらわのは、風が吹いて、ゆ・・ゆれはためいておるぞ・・・」
言葉が棒読みだ。もしかして、ビクトリア。・・・台本見ながら電話してるのかもしれない。なるほど。なるほどなるほど。僕もネトゲで自分の名前を決めるときは、かなり痛いネーミングをつけてたし、そういうのって、あるよね。
「・・・・・・ああ!お主の声が、聞こえぬ!夜が・・ためいきをつく!」
もしかして、これって、アレか?アメリカドラマとか、シネマによくある、格好良い引用ってやつか!?例えば・・・
『
悪役
俺のした事は全て正しいことだ・・・・目的は手段を正当化する
正義役
そんな事を言う奴は、自殺するような目に遭うぜ?ヒトラーが良い例さ
』
とかいう、アレか!?もしかして、僕は今、試されているのか!?
・・・・・・・どうしよう。こういうシチュエーション初めてだから、緊張して、どうすればいいか分からなくなってきたよ!!
「そ・・・・それはいけないな・・・ブランケットが・・必要だね・・」
とりあえず、なんとか、返した。ブランケットという単語あたり、結構良い返し方ではないだろうか?引用先は分からなかったけど。
「・・・・わ・・・私は、お前のもの、お・・お前は私のもの、私達はこんなふうに結ばれあった・・・・これが最も・・の・・望ましい状態だ・・・」
ええええええええええええええええ何か、さらに複雑なのがやってきたんだけど!どうすればいいんだ!ぐ・・・ぐぐーーー・・・・
「ひ・・・冷えきった・・空気は・・風邪を引き・・・」
こうだ!これでいいかな!?ハァハァ!もう僕はいっぱいいっぱいなんです!ほんと勘弁してください!
「ぶ・・葡萄の葉が音を立て・・葡萄棚が・・ざわめき・・ます」
う・・・ううぅぅ・・ぁぁぅぅう・・・。
「あ・・え・・っと・・・・ざ・・・ざわめく風は嵐のようだ・・・」
「何百もの兵士が踏み荒らす音をともなって!」
・・・・ダ・・ダメだ・・・もう限界だ・・・。
「ふう。なかなか楽しかったぞ。分かったのは、エイリーンコララーンだけじゃったがな。これでますます、勉学の必要性がでてきたわけじゃ!おぬしに負けんためにな!それじゃあな!またかけるぞ!」
「ま待ってるよ・・僕も・・・いろいろ本を読んでおくよ・・それじゃ・・」
電話が切れた。僕はなぜか、とても疲れきった。
「・・・・・・・・・・・」
・・・・・・。
「嗚呼!この疲労のなんということか!鉄のように重くのしかかり!風が私を削っていく!足は棒だ!私はただ、前へと倒れ込む事しかできぬというのか!!」
僕は左膝を地面につき、右手を上空にかざす。
「・・・・・・晃弘、疲れてる?」
ア・・・アア・・・アリス・・・・。
「い・・いや・・・劇の・・・練習・・・・だ・・よ・・・」
「そうなんだ。・・・・頑張って」
「う・・うん。ありがと・・」
僕はそのままトイレに行き、個室に入って五分間、壁に頭を寄せた。




