修行
楓は朝早くからパーティ会場に向かった。今回の会場は意外と遠いらしいのだ。
「さてと…」
僕は森に向かう。森なら誰もいないので集中して修行ができるからだ。
僕が修行をする理由は6柱の悪魔との戦いに備えての事だ。今の僕はただ相手を殴る事しか攻撃方法がない。そしてその攻撃が悪魔に通用するかも分からない。
僕は集中する。何も聞こえない程に集中する。そして気付くと視界は真っ暗になり、目の前には初めて戦った相手、かつてのいじめっ子が立っていた。
いじめっ子は僕に大量の魔術を放ってくる。そして一撃でも喰らえば僕の負けというルールだ。かなりひりつく。
しかし、準6級魔術師は正直言って弱い。だから簡単に勝ててしまうのだ。
僕は全ての魔術を避け、相手の心臓を貫いた。あまりにも簡単すぎる戦いに飽きていた。
視界に緑が戻る。イメージトレーニングに勝った印だ。だが、成長は全くしていない。
相手を強くすれば良いと考えた事もあるが、僕はあいつ以外と戦ったことがないのだ。
「もう少し奥に行こう。」
僕は森の奥に向かう。そこは基本的には立ち入り禁止なのだ。なぜなら魔獣という危険な奴らがいるからだ。
普段誰もが食べる魚や植物でさえも魔獣となり、人を喰らう。階級の高い魔術師でも死ぬ事が良くある場所だ。
森の奥に辿り着くとそこには5メートルほどの大きさの熊、ブラックベアがいた。
黒い体毛に獰猛な性格。そして高い耐久力。まさに魔術師殺しだ。僕は内心緊張していた。魔獣と戦うのは初めてだからだ。
ブラックベアは僕に向かって突進してくる。その攻撃はかなり速く、一瞬反応が遅れてしまった。
「ぐっ!?」
避ける事が出来ず、僕は木に激突してしまう。体が少し麻痺していた。脳が揺れていた。
「やってやるぜぇ…」
僕は興奮していた。自身が追い込まれていく感覚に、強敵との戦いに。
お互いに見合う。そして、互いに突進する。力と力のぶつかり合い。どちらの方がパワーが上かという比べ合いだった。
「流石に重いなァァァ!!!」
人間の力なら確実に負けていた。しかし、今の僕には悪魔の力が宿っている。だから互角だった。
僕達は距離を取る。互いにパワー比べは互角だと気付いたからだ。そして僕は拳を握るのをやめ、指を伸ばした。そしてゆっくりと近づく。
そして互いの息が当たるほど近寄った瞬間、鞭のようなビンタをお見舞いした。
ブラックベアは痛がった。そして僕も同時に痛がった。この技は空気抵抗が反動となるのだ。
「こいよ。俺がお前を投げ飛ばしてやる。」
───楽しい
心の底からそう思った。今まで現れなかった強敵との戦い。ライバルとの戦いに震えていた。
───もっと戦いたい
興奮が抑えられなかった。体が熱くなる。悪魔の力を手にした時の感覚が蘇る。
ブラックベアは僕に突進してくる。そして僕はそれを受け止める。そして体長5メートルもある熊を、僕は上空に投げ飛ばした。
筋肉が疲労する。筋繊維一本一本が破壊されていた。そしてそのまま僕は、気絶した。
───暖かい。
フサフサと肌に何かが当たる。まるで高級ベットのような感覚だった。
僕が目を開けるとそこには先程戦ったブラックベアがいた。ブラックベアは気絶した僕を守っていたのだ。
僕が立ち上がるとブラックベアは森の奥に立ち去った。僕は涙が流れていた。
「負けた…」
僕は気絶し、ブラックベアは立っていた。僕は完全敗北した。けれど良い戦いだった。
───強くなりたい。
僕は再びそう思った。楓を守れるくらい、そしてあのブラックベアを超えたい。
決意で僕の心はいっぱいになった。更に強くなって、必ず再戦すると心に誓った。
「み〜つけた。死の悪魔く〜ん。」




