パーティ前夜
僕は街に出ていた。特に用事のない散歩だ。しかし、案外散歩というのは楽しいものなのだ。
「あれ、雪じゃん。」
目の前には楓が立っていた。何という偶然なのだろう。休日に男女2人が合う。その場合やる事は一つだ。
そう、一緒に散歩である。楓もやる事がなかったらしいので丁度良かったのだ。
「そういえばさ、明日のパーティ来る?」
楓がそう呟いた。パーティ、稀に行われる交流会のようなものだ。と言っても、階級の高いものに求婚をしたりする東の国でいう合コン?のようなものだ。
「行かないかな。」
僕はそのパーティに行ったことがなかった。それもそのはず、僕はハブられているからだ。
友達は楓以外にはいない。おそらく僕が何食わぬ顔でパーティに参加したら空気は最悪になるだろう。
「そっか…」
楓は少し寂しそうにそう呟いた。まさかと思い、僕は楓に質問する事にした。
「僕に来てほしいの?」
僕がそう聞くと楓は頷いた。ツンデレみたいに「あんたに来てほしいわけじゃないんだからね!」とかは言ってくれなかった。
「でもごめんね。僕が行くと変な空気になっちゃうから。」
そう。周りの人達が気にするのだ。だから僕も行きたくない。それは楓もわかっている。
「じゃあ私も行かない。」
───へ?
今"行かないと"言ったのだろうか?聞き間違えだろうか。きっとそうなのだろう。
「楽しんできてね。」
僕はとりあえずそう返した。会話の流れ的に「私行ってくるね!」みたいな感じだと思ったからだ。
「だから…行かないってば…」
楓は少し怒っているように見えた。そして今理解した。楓は"行かない"と言ったのだ。
しかしこの会話的に言うと「雪が行かないから私も行かない」みたいな事になるのだが…
いやしかし楓がこうなったのは悪魔的な感情のわけで決して僕に気があるわけではない。いやあって欲しかったが!
「ねぇ、少しショッピングに付き合ってくれない?」
楓は店を指差す。それは最近出来た店だ。目に入ったから行きたくなったのだろう。
「いいよ。」
僕は楓のショッピングに付き合うことになる。内心デートみたいな事してるな、と思っていた。
楓は美容道具から服まで様々な物を買っていた。とても楽しそうだった。そして、とても美しかった。
「あっ、雪ごめん。お手洗い行ってくるね…」
楓は恥ずかしそうにそう呟いた。何を恥ずかしがっているのか分からないが、女の子にはそういう事もあるのだろう。
僕が楓を待っていると、目の前にクラスメイトが現れた。そしてクラスメイトは僕を睨みつけ、
「てめぇ、楓ちゃんとどういう関係だよ!」
と叫んできた。僕は少し頭に来ていた。楓との2人の時間に介入してきたのだ。
「俺が楓と一緒にいて悪いかよ。」
僕は怒りのせいか少し口調が変わっていた。そしてクラスメイトは何故か逆ギレしてくる。
「ふざけんなよてめぇ!」
クラスメイトは僕に対して拳を向けてきた。しかし、今の僕にとってその攻撃はあまりにも遅く、あまりにも弱かった。
僕はその攻撃を躱した。そして殺意を向けた目線を送ると、クラスメイトは何かを察したのか逃げていった。
───なんで…
「なんで雪は…強くなっちゃうの…」
私はその現場を目撃していた。雪がクラスメイトの攻撃を軽く避ける場面を。
普通なら喜ぶはずなのに、私はなぜか寂しく思っていた。雪が強くなることに抵抗があった。




