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翼のない悪魔  作者: 内田


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最上位の悪魔

 僕は急いで走る。楓を救う為に。医療塔へ着くと教員が察したのか急いで治療魔術を使い、楓を治療し始めた。僕は安堵していた。


「少し遊びすぎたな…」


 力を試していたら楓が瀕死だったのだ。いくら強くなったとはいえど死んだ人間は生き返らせることはできない。そんな事をできるのは最上位の悪魔くらいだろう。


「雨琉雪くん。」


 背後に誰かが立っていた。その人はこの学園で誰もが知っている人だった。そう、1級魔術師第1位。朝霧朧だ。


「理事長室まで来てくれ。」


 おそらく今回の件だろう。僕が楓を襲ったと思われている世かもしれないが、僕の力では楓は倒せないと思われるのが普通だが、そこは違うらしい。


「どうやら、悪魔がこの学園に忍び込んだらしい。」


 悪魔。もしかすると楓を襲ったのがその悪魔だったのかもしれない。と僕は考えた。


「君の考えている通り、楓くんを襲ったのは悪魔だ。しかも強さは5級魔術師に匹敵するほどのね。」


 しかし僕が目覚めた時には悪魔なんていなかった。だとしたら逃げたのだろうか。だがなぜ逃げたのだろうか。


「君のなかに感じるんだよ。悪魔の力を。」


───は?


 僕は思わずそう呟いた。確かに言われてみればおかしな話だった。いきなり強くなって、生身の人間が魔術を使わずに魔術師を倒した。


「しかも君の力は最上位悪魔の力だ。教科書にも載っている6柱の1人、死の悪魔だ。」


 死の悪魔。今から100年ほど前に魔術師達によって討伐された悪魔。死の悪魔は魂があるものを殺すと強くなるという悪魔だ。


「丁度100年、悪魔が復活するにはいい時期だ。」


 僕は混乱していた。人間だと思っていた僕が、実は悪魔だったという事実に。そして悪魔は討伐されるべき対象。つまり僕は今ここで殺される。


「待ってください。僕の両親は人間です。魔術を使えます。嘘じゃありません!」


 僕は必死に抗議する。殺されたくないと思うのは当然だった。魔術を学び、悪魔と戦うはずの者が悪魔として殺されるなんてあってはならない事だからだ。


「安心してくれ。殺そうなんて考えてない。でもね、殺さないかわりに手伝ってほしいことがあるんだ。」


 理事長は笑みを浮かべながら僕にそう呟く。そしてそのお手伝いはとんでもないもので…


「君に6柱の悪魔を殺してほしい。」


 その言葉を聞いた瞬間、僕の頭の中は真っ白になった。6柱の悪魔。最上位の悪魔。1級魔術師達が結託してようやく1柱に勝てるような存在。そんな奴らに僕が戦って勝てと言っているのだ。


「死の悪魔に対してお願い、つまり契約と…?」


 理事長はそっと立ち上がり、僕の肩を叩いた。そして耳元でこう呟いた。


「君は死の悪魔が憑依した人間、だから君を殺すのは最後だ。そして、君がもし協力しなかったら凛城楓を殺す。」


 契約ではなかった。強制的な命令。この人は僕の弱点を熟知していた。そして同時にいつでも殺せるという警告でもあった。


「わかりました。協力します。」


 断れるはずがなかった。自身の命よりも大切な人を殺すと言われたのだ。断るなんて事は出来なかった。


「決まりだね。じゃあ情報が入ったら連絡するからそれまではいつも通りの生活を送ってくれ。」


 理事長、朝霧朧。なんと恐ろしい人なんだろう。相手の弱みを確実に握り、行動を強制する。正直今殺せる力があるなら殺してやりたかった。でもできない。おそらく攻撃を仕掛けた瞬間首が飛ぶ。


 今日わかったことがいくつかあった。僕の魂に死の悪魔が憑依していること、そして僕が5級魔術師レベルの悪魔を殺したことだ。この考えなら僕の力にも納得が行く。


 しかし僕も6柱の1人、いずれ殺される。ならば、朝霧朧を逆に殺せる力を手に入れる必要がある。もっと、強くならなくては。魂を喰らって。

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