第4話 ギルドライセンスゲット!
大きめの町に行く。
春風が草原を駆け抜ける、町を出て数十分。
ヴィヴィベル達は道の真ん中で止まる馬車を見つけ近寄る。
「どうしたんですか?」
「ん? あぁ車輪が外れちまってな立ち往生ってやつだ」
そう言い男はため息をつく、その間ヴィヴィベルは車輪の様子を見ると直せそうなことに気づく。
「あの〜本で読んだ故障例と同じです。車軸が緩んでいるだけだと思います。あと幸い歪みや破損は無さそうです」
「本当かい? どうせ、このままじゃ廃車だから頼むよ、お嬢ちゃん!」
やはり彼は初対面では性別を間違われるのが運命なのだろうか。
だが慣れっこな彼はもうカッコつけるのは諦めてユニセックスな服ばかり着ている。
「僕は男です! じゃあ、ソラリス! その車輪を持ち上げて!」
「え、私がやるの」
「ソラリスしか持ち上げられないよ!」
「そうだった」
唐突な指名に少し驚くソラリス。
そして怪力の彼女に指示をしてテキパキと進む。
「車軸を少し浮かせて……」
「で、次はどこを……」
「本で読んだ通りなら……」
「そう、そのまま! 僕が……」
そうして馬車はたったの10分くらいで直る。
「おお! 助かるよ! 礼と言っちゃなんだが乗って行くかい? どこに行くんだ?」
「この道をまっすぐ行ったところにある大きな町です」
「おお、俺も行き先がそこだぜ。乗ってきな!」
「ありがとうございます! では、お言葉に甘えて!」
彼はニヤリと笑う、礼に乗せてもらう事は計算済みであった。だが目的地まで同じなのはラッキーである。
「流石、抜け目が無いわね」
「まあね♪」
ウィンウィンだからOK!
でもまあソラリスがいなかったら無理だったから助かった。
本当になんでか彼女が着いてきてくれて嬉しい。
それに僕としても離れるのは何だか胸が苦しかったしね。
そうして、ゆっくりと走る馬車に揺られながら景色を見る2人。
青々とした平原、風に揺られる花畑に遠方には雪被る山々。
花の香りが鼻腔をくすぐり吹く風は心地良い物だった。
馬車の中でまずは彼のギルド登録と宿決めをする事を決めた2人は揺られる事、数十分。
町に入ると馬車の男に礼を言い降りる。
「あまり地元から出ないから新鮮だな〜!」
「あっ! この町の建物、建築図鑑で読んだ地方様式そのままだ……!」
「あれは……!」
それに呆れ気味のソラリス。
「浮かれるな、行くよ」
そう手を掴みギルドに引っ張って行く、まるで姉妹だ。
ギルドの門を潜ると2人に視線が集まる。そこにいた冒険者達はざわつく。
「あれ……?」
「不敗のソラリスじゃないか?」
「モノホンじゃねぇか!」
それにヴィヴィベルは首を傾げつつも笑う。
「んー? ソラリスって有名だったんだね!」
そう言いながらギルドの受付嬢の前まで来た。
「いや、そうでもない」
それに即答する受付嬢。
「いえ、かなり有名ですよ……この辺りの冒険者なら知ってます……」
「そうなの? じゃあ、そうらしい」
無自覚の強者。本人には有名人という意識がまるでない。
正直、知らぬ他人の評価よりヴィヴィの褒める言葉一つ一つの方が響いていた。
そしてヴィヴィベルはまた笑ってしまう。
「そこは否定しないのね」
「事実らしいからね、それより彼の新規ギルド登録を……」
「あら! 男性でしたか」
また間違われて悲しい顔をするヴィヴィベル。
そして手続きを大体終えたところで質問をされた。
「魔導士!? 申し訳ないのですが、魔術師の上の魔導士を名乗るには簡単なテストが必要でして……」
「そうなのか、張り切れヴィヴィ」
アレほどの雷撃から考えるに余裕でパスするだろう。私は昔から根性は評価していたんだ、だから実力も今はそれに追いついているはず。
「えっ、何するんですか……?」
「この水晶に手を置いてください、そして全力で得意分野の攻撃魔法をぶつけてください」
そう言われて一呼吸すると戦闘モードになり魔法陣と顔と手の甲に模様が現れる。
「【詠唱破棄】」
無言のまま片手のみで電撃を放つと水晶に吸い込まれていく。
パキッ! ピシピシ……ドォン!!
爆発四散する。ギルド中は静まり返る。
「おい、壊しちまったぞ」
と誰かが口にしたのを皮切りに人々は唖然とする。
「おいおい、ソラリスの連れも強いのかよ」
「ここまで来ると笑えるな」
そう爆笑する中で、受付嬢は大声で驚愕する。
「無詠唱な上に壊れたーッ!? 規格外の相棒も規格外ですか……」
「えっ、壊しちゃった……」
「やったわね」
「怒られちゃうかな」
「彼女の様子からして大丈夫そうよ」
「ま、まあ極稀にありますので、これがギルドライセンスです!」
15、6歳でこの威力……しかも無詠唱? 一応ギルド上層部へ報告しておこうかしら。
怪しまれている事を露知らず幼なげに歓喜するヴィヴィベル。
「ようこそ、冒険者ギルドへ! 貴方を歓迎します!」
「やったー!」
ライセンスを受け取りジャンプからのガッツポーズ。
「ほら、次はメインの仕事よ」
大きな掲示板の前に立つ。
「すごい……! 全部読みたい! 依頼書って地域ごとに書式が違うんだ……面白い! 紙質も少し違うかな?」
なにこれ! なにこれ! これが冒険者なの!
今の僕なら討伐だって出来るんじゃないかな! だってもう昔の弱いヴィヴィベルじゃないもん!
ヴィヴィベルの目は輝き、手配書から仕事の依頼の紙を眺める。本はもちろん、文字そのものが好きだった。
「時間の無駄よ」
「えぇ〜!」
討伐、捕獲、護衛、採取など。
本でしか知らなかった冒険者の仕事が目の前に並んでいる。興奮するのも無理はない
冒険者の日常はヴィヴィベルの特別な非日常。
「これにしようよ!」
彼はゴブリンの討伐に指を刺す。その手を雑にペシっと払って1枚の依頼の紙を引きちぎる。
「これよ」
それは水中の水底にある特別な石の回収だった。
難易度ランクは最底辺のF。
だが誰も受けないのか依頼金額が何度か書き直され数倍に増加していた。
「え? 水の中?」
「簡単よ」
「水底だよ?」
「問題無しよ」
「あー。まあ……ソラリスだけはね……」
そうして受付嬢に伝えて受注し依頼主の元に向かい。説明を受けて湖に到着したのであった。
次は依頼。




