レギナアピス
「あんたたち、どういうつもりよ。私のかわいい子ちゃんたちになにしてくれてんの?」
「えっ?」
「もう、私のかわいいSMA◯もTO◯IOもV◯も、N◯WSも関◯ャニ♾もKAT-T◯Nも、みんな倒されているじゃない!」
レギナアピスがそう怒鳴ると、ステフが「ポチ、レギナアピスはなに言ってんの?」と聞いてくる。
「うーん、ジャ◯ーズファンが激おこプンプン丸」
「はぁ?」
「たぶんネットで炎上する事案だな。俺が消される。いろんな意味で」
「うん?」
ステフが首をかしげたが、俺は「まずいって、そこだけはシャレでも踏み込んではいけない禁忌だから」と言うと、レギナアピスは「もう、私のKinKi ◯idsまでやられているじゃない」と言った。
いやいや、そのキンキじゃないよ。
「ねぇ、転生者だろ? 君のかわい子ちゃんたちを倒したことは謝るよ。だからさ、仲間になってくれない?」
「ゴブリン? あんたも転生者なの?」
「うん、俺も転生者なんだ」
レギナアピスは「えっ?」と小さく言ったあとで「ほかにもいるの?」と聞いてきた。
「うん、いっぱいいるみたい。俺はコボルトとエルフの転生者にあったよ」
「エルフ? なにその勝ち組。そいつ、ふざけてるわね」
「本当だよな。こっちは嫌われ者のゴブリンだっての! ちなみにこの子の親なんだけどね」
俺がステフを紹介すると、レギナアピスは「あぁ、かわいい娘までいるとか、マジもんの勝ち組かよ」と言ってステフが「なんだって?」と言う。
「うん、ジーンさんは勝ち組すぎてふざけてるってさ」
「そう、じゃあ『私とうちの母さんをほっといて旅ばかりしているふざけた親だ』って言ってくれる?」
「わかったよ」
俺はうなずいて、それをレギナアピスに伝えると、レギナアピスは「どこの世界にもそういうやつはいるのね」と笑った。
そして、俺に向かって首をかしげる。
「それで仲間って言ったけど、あんたは私になにをしてほしいの?」
「うん、このさき帝国領から魔王がくると思うんだけど、そいつらと一緒に戦ってくれない?」
「それは人族のためにってこと?」
「半分はそうだね」
俺がうなずくと、目を見開いたレギナアピスは「なんで?」と聞いた。
「あんたはゴブリンなんでしょ? なんで人族のために魔王たちと戦うのよ」
「俺の主人は人族なんだけどね。その子とその家族に死んでほしくないんだ」
俺が首にはまった従属の首輪をさすると、レギナアピスは眉間にシワを寄せた。
「それで縛られて逆らえないとかじゃなくて?」
「うん、違うよ」
俺はそう答えて小さく笑う。
「まあ、確かにこの首輪はラノベや漫画に出てくるような奴隷につける首輪なんだけどね」
「ほら見なさい。やっぱりそれで従わせられているだけなんでしょ?」
レギナアピスがそう聞くので、俺は首を横に振った。
「普通はそうなんだけどね。俺の主人は少女だからさ、言うことをきかせるとか、従わないと殺すとか、そんなのはないんだよ。きっと俺のことをペットだと思っているんだ」
俺がそういうとステフが「違うでしょ、アビーはポチのこと家族だと思っているのよ」と笑う。するとレギナアピスはステフを見ながら「そんなわけないじゃない」と言った。
「家族にそんな首輪をつけると思ってんの?」
「悪いけど君が話しかけても無理だよ。魔物の言葉は人族やエルフにはわからないんだ」
「そうだったわね。あんたが普通に話しているから、忘れてたわ」
レギナアピスは苦笑いを浮かべた。
「あんたは騙されているのよ。家族にそんなものつけるわけないわ」
「いや、これは付けてるほうが楽だから付けているんだ。これがあれば人族とも会話ができるからね」
「うそ、じゃあ、私も付けたら話せるの?」
「話せるよ」
「そう」
レギナアピスは小さくうなずくと「それで?」と続けた。
「私が協力したらあなたはなにをしてくれるの?」
「そうだね、まずはそこの松◯君たち5人をSランクにする手伝いをするよ。そしたら話し相手になってくれるかもしれないだろ?」
「えっ?」
「かわい子ちゃんたちには自我がないんだよね?」
俺が聞くと、レギナアピスは「なんでそう思うの?」と言った。
「うん、ずっと黙っているし、なんとなく動きも規則的だからね。防衛本能か、防衛するように出されている指示に従っているだけなんじゃないかと思って」
「そうよ、この子たちには自我がない。Aランクに進化してもそれは変わらなかったわ。だからひさしぶりにあなたと話せてうれしいわ」
「そっか、じゃあ、友達になろうよ」
「なに言ってんの? 私は蜂よ」
「だからどうしたのさ、俺はゴブリンだよ」
「そうだったわね」
レギナアピスは「フフッ」と笑う。
「私もその女の子の従者になればいいの?」
「うん」
「その子は蜂の私を家族にしてくれるかしら?」
「気にしないと思うよ。ゴブリンだろうが、フォックスだろうが、ボアだろうが、アビーにとっては家族なんだ」
「そう」
レギナアピスは小さく笑って、山になっているビーたちを見た。
「どちらにしても私たちではあなたたちには敵わないわね。ここで殺されるくらいならあなたの主人の従者になってあなたのお友達になるのも悪くない……」
レギナアピスは「それが賢い判断だって私にだってわかっているのよ。だけどね」と眉間にシワを寄せた。
「はい、そうですか? とはいかないの」
「どうしてさ」
「私がこの子たちの親だからよ。自我がなくても、私の大切なかわい子ちゃんたち」
レギナアピスはギッと俺をにらむ。
「それをあなたたちが殺した。私はその復讐をしてあげなければならない。だって、私がそれをしなければこの子たちの死は無駄になる。そうでしょ?」
「そうかなぁ、ここで無駄死にすることのほうが無駄だと思うけど」
「あんたになにがわかるのよ!」
レギナアピスが言うので、俺は「わからないよ」と答える。すると、レギナアピスは「あなたのそういうところ、前世の知り合いにそっくりだわ」と笑った。
「基本的には優しいくせに、相手の心には踏み込まないで、結局は突き放すみたいなことを言うのね」
すると、レギナアピスが「そういうとこが好きだけど嫌いだったのよ」と言って、周りにいたシエルたちが襲いかかってきた。
シエルの攻撃を避けながらステフが「どうするの?」と聞いてきたので、俺は眉をギュッと寄せて「やるしかないね」と答える。
「倒そうか?」
「いいの?」
「うん、彼女がそれを望んでいるからね」
俺が言うと、ステフが「そんなことないでしょ?」と言った。
「言葉はわからないけど、彼女が本音を言っているとは思えないよ」
「わかってるよ。だけど、こういう輩は殴ってわからせるしかないのだよ」
「殴ってわからせるってことは?」
「殺すなよ。ステフはちょっと本気で殴ったら殺しちゃうだろうからね」
「うん」
ステフがうれしそうにうなずいて、シエルの攻撃をかわして笑って殴る。
あのさ、側から見るとソレ、怖いよ。
シエルとレギナアピスを殴り倒して、地面に倒れたレギナアピスを見下ろした。
「気はすんだ?」
「なんなのよ、そのわけのわからない強さは?」
「『魔力循環』を覚えれば、君ももっと強くなれるよ」
「そう」
レギナアピスは小さくうなずくと、俺から視線を外した。
「あのさ」
「なに?」
「私の◯宮君たち、Sランクになったら自我を持つかなぁ」
「持つよ、きっと」
俺がそう答えると「本当にそう思う? 慰めじゃなくて?」とボソボソと言った。
「本当にそう思うよ。だってSランクは人型なんだろ?」
「うん」
「でもさ、自我を持ったら言うこと聞かなくなるかもよ」
「えっ?」
「女王様ではいられないかもね」
「なっ?」
「超わがままな子たちだったりして」
俺が言うと、レギナアピスは冷めた目で俺を見た。
「わかったからもうやめて」
「大丈夫だって、真面目と、元ギャル男と、ゲーム好きと、天真爛漫と、マイペースになるさ」
俺がそう言いながら手を差し出すと、俺の手をつかんだレギナアピスは「どんな子たちでもイケメンになるはずだし、愛せるわ」と言った。
「あっ、そう」
「私を仲間にしてくれる?」
「あぁ、よろしく頼むよ」
「仕方ないわね」
「おいおい」
俺が笑うと、レギナアピスも笑った。




