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帰り道③

 元フォレスト領を出ると、俺は先行して街道沿いの森の中の魔物を狩ることにした。相棒のシミターを振るとなんだか本当に戻って来たのだと思う。


 だけどさ……。


「なんなの? このビーの数は?」


 空を埋めつくす黒い塊を見ていると、ステフが苦笑いしながら続く。


「しかもキラービーが混ざっているし、分隊単位でキラービーが指揮もしているみたいだね」


「キラービー?」


「ポチ?」


「うん?」


 俺が首をかしげると、ステフは呆れ顔になる。


「あのさ、ちゃんと人の話を聞いているの?」


「聞いていると思うよ」


 俺が答えると、ステフは「はぁ」と息を吐いてから「元フォレスト領で休憩しているときにオーティス商会の従業員から教わってたよね?」と言う。


「そうだっけ?」


「まぁ、いいけど、キラービーはビーのCランク、体が赤いやつだよ」


「えっと、赤なのにCランクなの?」


「そうだよ」


 ステフがそう言ってうなずくと、俺は「まぁいいか」と頭をかく。


 どちらにしても弱いからね。いくら大群でも、風をまとって「キィーン」と言いながら走って行くステフにバタバタと倒されていく。


「これは俺いらないな」


 とりあえず集団を倒し終えて解体しながら呟くと、近くで解体していたステフが「いらなくない!」と言うので、俺は「本当に?」と聞く。


 すると立ち上がったステフが俺のところまで来て、俺の背中をベシッと叩いた。


「ぶっ、ぶったね!」


「母さんにもぶたれたことないのに」


「いやいや、それは俺に言わせてよ」


「次に『俺はいらない』とか言ったら怒るよ」


 涙目のステフがそう言うので、俺は「ごめんね」と謝る。


「私の従者になってくれるんでしょ?」


「うん」


「いらなくなんて絶対ならないから」


「そうか、ありがとう」


 ということでそこからもステフと2人で無双して、解体してというサイクルが続く。


 すると、遅れてきたオーティス商会の従業員たちが「あぁーっ!」と叫んだ。


「うん?」


「ポチ様とステフ様はなんてことをしてくれてんですか?」


「うん?」


「解体は私たちに任せてください」


「いや、だって来るの遅いし」


「いやいや、だったら先に行けばいいでしょうが」


「なにその北の◯からの五◯さんチックな話しかた? だとしたらそこは『子供がまだ食べてるでしょうが』でしょ?」


「「うん?」」


 オーティス商会の従業員たちがみんな首をかしげるので、俺は「それにステフがほとんど倒すから解体しないと俺がサボってるみたいになるんだもん」と言う。


「いいんですよ、ポチ様は端っこでボーッとしていてください」


「嫌だよ、そんなの。ステフだけ働かせて俺がサボってたら、できる同僚に仕事を全部丸投げしてネットでエロサイト見ている昼行灯みたいじゃん」


 俺がそう言うと、オーティス商会の従業員たちは「よくわからないけど、ポチ様はそれでいいんです」と言う。


「いやいやいや、よくないって。本人はみんなにバレてないと思っているけど、女子社員もみんな知ってるからね。陰でエロ眼鏡とか、エロガッパとか、エロオークとか、残念なあだ名つけられているからね」


「なんですか? ソレは?」


 オーティス商会の従業員たちが再びみんな首をかしげる。


 すると俺の背後からベシッとツッコミが入って、俺が「うん?」と振り返ったら、ステフが腰に手をあてて胸をそらして、見事な仁王立ちしていた。


 うん、幼女の仁王立ちはある意味で迫力があるね。


「ポチ」


「はい」


「わかっているよね?」


「はい……すみません」


 俺が頭を下げると、ステフは「わかればよろしい」とうなずく。


 そこからは俺とステフの無双を追いかける勢いで、目を血走らせたオーティス商会の従業員たちの解体が続く。


「兄さんたちにいいお土産ができるね」


 俺が呟くと、ステフが「そだね」と笑う。


「でも、どうせならBランクのエクセルやAランクのシエルあたりが出てほしいよ」


「えっ、嫌だよ。刺されたらどうするの?」


「なに言ってんの?」


 ステフが首をかしげるので、俺が「だって毒あるんでしょ?」と聞くと、ステフが「本気?」と聞き返してくる。


「ポチたちゴブリンは毒に耐性があるから刺されたとしても効かないよ」


「うそ」


「うそじゃないよ。試しに刺されてみたら?」


「いやだよ、そんなの」


 だって仮に毒が効かなくても、こんなのにわざわざ刺されたくないよね?


 そして、やっぱり来た。


「ステフが余計なことを言うからだよ」


「来たね」


「なんでうれしそうなのさ」


「だって、この数ならブラックドッグのゴブリンのみんながAランクになれるよ」


「まあ、そうだね」


 俺はそううなずいて、空を埋め尽くす銀色のビーを見上げる。


「あれが全部エクセルかよ」


「そだね」


「『そだね』じゃねぇ! 雑魚がいくら来ようとかまわないけどさ、ちょっと多すぎない?」


「大丈夫だよ」


 ステフが笑うので、俺は腰に下げていたナイフを渡す。


「なにこれ?」


「うん、模様からして風の属性のナイフだと思う。使ってみて」


「うん、ありがとう」


 うなずいたステフはナイフに魔力を込める。そして、ナイフが風をまとうとステフはエクセルたちに向かってナイフを振るった。


 ザザ、ザザザ、ザザザザァァァァァァァ!


 黒い空を切り裂いて、青空が見えた。


 おいおい、ひと振りでそれかよ。それにしても、これは……。


「ハッハッ、見ろ! エクセルがゴミのようだ! ハッハッハッハッ!」


 俺がムス◯みたいにそう言ったのだが、もちろんステフがツッコミを入れてくれることはない。それどころかナイフをなんども振りながら「おもしろい」と笑う。


 うん、危険な香りがするね。ステフに与えてはいけないものを与えてしまったような気がする。


 少しそう思ったが、今さら考えても仕方ないので、俺は近くまできたエクセルをシミターで斬って、遠くにいるやつらはステフが風の刃に任せることにした。


 そんな感じでばんばん倒していたら、銀色の山が出来た。


「これって全部解体できるの?」


「1日じゃ無理じゃない?」


「ここで泊まりかよ」


 そして、小山を見ながらそんなことを言っていたら低く響く羽音と共にそいつらが来た。


「よし! これで俺もSランク!」


「だね。それにこの数ならタマとジローもいけるんじゃない?」


「おぉ」


 飛んできた金色のビーを見上げて俺が笑うと、ステフがまたナイフを振るった。


 ビュン! 


 飛んでいった風の斬撃がシエルたちを容赦なく真っ二つにして、倒されたシエルたちが落ちていく。


「密集しているから避けられないんじゃないの? こっちは助かるけどさ」


「そだね。やっぱり高ランクは頭がいいと言われているけど、たぶん学習能力が高いだけで覚えたことには対応できるけど初めてのことは無理なんじゃない?」


「なるほどね」


 そして、エクセルとほとんど変わらずに、近づいて来たやつは俺がシミターで倒して、遠くにいるやつらはステフが倒す。


 やっぱりエクセルよりは少しだけ手強かったけど、こちらにはSランクの化け物がいるし、楽勝だね。


 それにしてもAランクなのに楽勝って、虫型はやっぱり少し弱い気がする。


「終わりだな」


 俺がそう言いながら、地面でジタバタしていたシエルにシミターを突き刺すと、再びブーンと聞こえてきた羽音と共に、背中に羽根の生えた人型の魔物が姿を現した。


 周りにはシエルを数匹従えている。


「レギナアピス」


 そう呟いたステフが真剣な顔でその魔物をにらみつけた。

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