蠱毒②
お姉さんからのスカウトを断った日、いつものバトルロイヤルの相手は……。
おいおい、マジかよ。
「全員ウェアタイガーとウェアウルフって、食事のはずなのに倒しても食えねぇじゃねぇか!」
くそぉ、くそぉ、くそぉ。
怒りに任せて全てを倒したあとで、俺は地面に膝をついて『ショーシャ◯クの空に』のティ◯さんか『ザ・ロッ◯』のニコ◯スさんみたいに両腕を広げて天を仰いでありったけの力で声のかぎり「クソガァァァァァァァ」と叫んだ。
うんうん、このポーズ好きだよねぇ。ハリ◯ッド。
いやいやいや、だからって、クソとか汚い言葉使っちゃぁ、ダメ、ダメ。怒られるよ。
まぁさ、神は祈っても救ってはくれないし、願っても届きはしないし、奇跡なんて幻想なわけだし。うんうん『生きてるだけで丸儲け』だよね。
わかってる、わかってる、わかってるって。お前らに期待なんかしないさ。
本当に神ってやつらはこういうの好きだよねぇ。
「まぁ、1日ぐらい食わなくても死にやしないか?」
俺はそう言って立ち上がる。そして、倒した魔物たちを見た。薬で魔物化させているんだろうけど、これ食ったら多分俺も理性を失うってことなんだろうね。
ってことはさ……。
翌日のディナーももちろん。
「やっぱりか! 嫌な予感って本当に当たるよねぇ」
お前らなぁ、ふざけんなよ。やっぱり意図的に俺たちの理性を失わせようとしているとしか思えないね。
俺はウェアウルフとウェアボアを倒し始めた。
それにしてもさ、よくこれだけの人族を魔物化したな。正気か? 本当に正気なのか?
死刑囚とかなんだと思いたいけど、うーん、ないわ。あの王、本当にないわぁ。
すべて倒してから俺は魔物を見た。
「それにしても腹減ったなぁ、少しぐらいなら食っても大丈夫か?」
いやいやいや、ダメだろ? それは絶対にアウトのやつだろ?
「それに途中で止まれる自信がない」
俺は「はぁ」と息を吐き出した。
問題はこれがいつまで続いて、俺がいつまで耐えられるのか、だな。
もちろん、翌日も、その翌日も、ウェア祭りは続いた。わっしょーい。
そして、闘技場に連れてこられた。
「助けてト◯ー、お腹がすいて力が出ないよぉ。そんなときは、ケロッ◯コーンフロ◯ティ! グゥゥゥゥゥゥレイト!!」
俺がそう言うと観客たちが「ウォォォォォォ」と盛り上がった。
「ウィィィィィィ!」
仕方ないので、俺は体をそらして両腕を上げて人差し指で天を指差す。
うん、こんなことやる余裕があるならまだ大丈夫だね。
そして、今回の俺の対戦相手は……。
うん? 餌がいる。
「本日の第一試合は、大穴狙いの皆さんおまちかね、ゴブリンの王シーカリウスの登場です。前々回のオーク王、ディスヴィン戦、そして、前回のコボルト王、ニグリトゥス戦でその実力はおわかりいただけたでしょう。まさにシーカリウスはニューヒーロー、今回も番狂わせを演じてくれるのか! 対するは、破壊と殺戮を好む森の暴君。ベアーの王、テュランヌス。シーカリウスを仕留めるのは一撃必殺の爪か? それとも食らいついたら離さない牙か? 圧倒的なパワーで種族としての格の違いを見せつけるか!」
司会がそう言うと観客たちから「オォォォォォォ」と歓声が上がって「シーカリウス!」「シーカリウス!」と声が上がる。
うん?
「お前たちはどうした? そこはテュランヌス! テュランヌス! だろ?」
俺が首をかしげても、コールは鳴り止まない。そして、俺の後ろの穴から次々に声がかかった。
「シーカリウス。俺、お前が勝ったら家買ってあの子と結婚する」
「俺もお前が勝ったら、飲み屋のあの子に告白するぜ」
「てめぇ、夢見させやがって、今回もてめぇが勝ったらなぁ、俺の借金完済する」
「シーちゃん、諦めなさい。死にたくなかったら私のものになるのよ」
また好き勝手言っているので、俺は振り返っていい笑顔をする。
「またお前らか? 勝手にフラグ立てやがって、ふざけんなよ。お前らは黙ってそこで見てろ! 結婚も告白も、完済もさせてやる! それからお前は黙れ! 俺はお前のものにはならん!」
俺がそう言うと、ゴブリンの言葉がわからないくせに「頼んだぞ」とか言っている。
「頼まれてやるよ、このやろう!」
そこでカランカランとベルが鳴らされて、俺たちのまえの鉄格子がゆっくりと上がっていく。
するとまた「オォォォォォォ」と地鳴りのような歓声が上がった。
「では本日の第一試合、ゴブリンの王シーカリウス対ベアーの王、テュランヌス、お楽しみください」
司会がそう言うと、ベアーが体を低くした。
そして、飛び出して来たが、遅い!
俺は避けながらダガーで斬り、ベアーが嫌がったところで懐に入って腹を切り裂いた。
「ギァァァァァァ」
断末魔をあげながらベアーは暴れたが、俺は全て避けて首を落とした。
早くしてよ。もう。
ベアーがドスンと倒れたので、そのまま解体しながら食べる。
うん、うまいね。
「しっ、勝者シーカリウス!」
司会はそうコールしたが、場内には歓声ではなく悲鳴が響き渡った。だけど、俺は気にせずにモリモリ食べる。
お腹すいているもんね。
「マジかよ、どんどん食ってるぞ」
「いやいや、それよりも倒すのが早すぎだろ?」
「なんなんだよ、本当にゴブリンなのか?」
観客たちがそんな声をあげると、兵士たちがきた。
うん?
「シーカリウス、終わりだ。下がれ」
「嫌だ」
俺はそう答えてから『北の◯から '84 夏』の◯郎さんを真似して「子供がまだ食ってる途中でしょうが!」と怒鳴った。そして、続きを食べる。
ジリジリと兵士たちは近づいてきて、ひとりの兵士が「奴隷の足枷がついてんだ」と言う。
「そうだな」
うなずいた兵士が飛びかかって来たが、俺は食べながらそれを避ける。そして、次々に襲いかかってくる兵士を全て避けた。
アリさんとアリさんみたいに頭をごっつんこして転がったり、勝手にこけた兵士を見下ろしながらモリモリ食べていたら、明らかに違う雰囲気の男が来た。
「調子に乗るなよ、シーカリウス」
「騎士かな?」
俺は首をかしげて、鎧の胸に刻まれた紋様を見た。レイっていう近衛騎士が入れていた紋様と違うね。
「もう少しで食べ終わるから少し待ってよ」
「なにを言っているのか、わからんぞ」
「ず、ごし、がと」
俺が指を差しながら言うと、騎士は頭をかいた。
「明日から食事を戻してもらえるように言ってやるから戻れ」
「ぼんど?」
「あぁ」
男がうなずくので、俺もうなずいてベアーの魔石をバリバリと食べながら入ってきた場所に戻った。
いつものメンバーが「ありがとう」と言ってくるので、俺は手をあげる。
「無理だろうけど、お前らはこれを機にギャンブルなんてやめろ」
俺はそう言って闘技場を出た。




