表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
86/97

地下闘技場③

 オークの王と戦った4日後、俺はまた闘技場に連れてこられた。


 おいおい、プロ野球ピッチャーでも中3日はヘビーローテーションじゃないのか? アイウォンチューなんじゃないの?


「まぁ、俺たちの場合、ガンガンなるのはミュージックじゃなくて、頭を殴られてだろうけどね」


 うん、うまいこと言った。おい、山◯君、ポチ君に一枚あげて。


「って、◯田君も来ないやないかぁい!」


 俺がそうツッコミを入れると、ゴブリンの言葉がわかっていない観客たちから「オォォォォォォ」と声が上がる。そして、向かい側のコボルトが「ワウォォォォォォ」と声をあげた。


 いやいや、遠吠え? それってば、遠吠え?


 俺は呆れたが、コボルトはかなりやる気みたいで「グルゥ」と言ってから、鉄格子をつかんで、ガシガシと噛み始めた。


「おいおい、大丈夫か? そんなことしていると歯を痛めるよ? エナメル質はね、一度削れちゃうと元に戻らないって誰かが言ってたよ。そんなことをしてて、キィーンってなっても知らないからね、キィーンってなっても」


 俺がそう教えてあげても、コボルトは血走った目で俺を見つめながら、まだガシガシと鉄格子を噛んでいる。


 俺はそれを見ながら「はぁ」と息を吐いて「おいおい」と苦笑いを浮かべた。


「本日の第一試合は、大穴狙いの皆さんおまちかね、ゴブリンの王シーカリウスの登場です。前回のオーク王、ディスヴィン戦で鮮烈なデビューを飾ったニューヒーロー、今回もその力を発揮することができるのか? 対するは、スピードスター、コボルト王のニグリトゥス。凶暴な闘争本能とスピードで相手を追い詰める狩人。そのスピードでニューヒーローをどのように料理するのか、今から楽しみです」


 司会がそう言うと観客たちから「オォォォォォォ」と歓声が上がって「ニグリトゥス、やっちまえ」とか「引きちぎれ」とか「いや、噛みちぎれ」とか聞こえる。


 いやいや、なんか物騒なことを言ってるね。


 俺が呆れながら観客たちがいるであろうコボルトの後ろの穴を見ていたら、俺の後ろの穴から次々に声がかかった。


「シーカリウス。お前にまた俺の全財産かけた。頼む」


「そうだぜ、あんな狼野郎。軽くのしてやれ」


「てめぇ! 負けやがったらな、負けやがったらな、俺が死ぬからな。頼むよ、マジで」


「シーちゃん、大丈夫よ。私は信じてるわ」


 また好き勝手言っているので、俺は振り返っていい笑顔をする。


「またお前らか? だからさ、俺に賭けるなって言ったよな? この豚どもが」


 俺がそう言っても、やっぱりゴブリンの言葉はわからないみたいで「がんばれよ」とか「お前ならやれる」とか言っている。


「一発逆転狙いのギャンブラーに応援されても、ちっともうれしくないってわかんないのかなぁ、お前らは?」


「シーちゃん、がんばって」


「うせぇわ」


 一切合切凡庸なお前たちじゃわからないだろうけどな、こっちだって必死だっての!


 そこでカランカランとベルが鳴らされて、俺たちのまえの鉄格子がゆっくりと上がっていく。


 するとまた「オォォォォォォ」と地鳴りのような歓声が上がった。


「では本日の第一試合、ゴブリンの王シーカリウス対コボルトの王ニグリトゥス、存分にお楽しみください!」


 司会がそう言うと、コボルトが今度は「ワォォォォォォン」と雄叫びをあげた。


 マジか? それはマジなやつの遠吠えか?


 鉄格子が上がりきるまえに、コボルトは下をくぐって飛び出してきた。


 襲いくる連撃。


 だけど、俺は全て避ける。


 1つ1つは確かに速いけど、避けられないスピードではないし、左右の連携もフェイントもない。


 だから……。


 俺が全て避けて、最後に左手でコボルトの視界を遮ってやると、コボルトはそれを嫌がって俺の左手を大きく避ける。


 コボルトに隙ができたので、俺はダガーを振るった。


 ブシュ!


 斬られた右手を庇いながらコボルトが大きく後ろに飛ぶので、俺はついて行く。


 そして、再び視界を遮ると、コボルトが嫌がって避けるので、俺はまたダガーを振る。


 動きが単調だっての。


 ズシャ!


「ギャァァァァァァ」


 今度は左足を斬られて、コボルトが悲鳴をあげたので、俺はダガーを突きつける。


「勝負はついただろ? 降参しろよ」


 俺が言うと、観客たちが「殺せ」「ころせ」とコールしながら、ドンドン、バン。ドンドン、バン。と手拍子と足踏みを始めた。


 おいおい、マジかよ。本当に狂ってんな。


 俺は呆れたが、コボルトは「ワォォォォォォン」と声をあげる。


「おまっ、なにやる気出してんだ?! もうって、くそ」


 俺がその場を飛び退くと、コボルトは片足で跳びながら襲ってくる。


「馬鹿なのか? 馬鹿なんだな、お前も」


 俺はそのぎこちない攻撃を全て避けて、そして「グゥ」と歯を食いしばりながらその首を切った。


 ズサッ。


 前のめりのままでコボルトが倒れると、観客たちが「ウォォォォォォ」と声をあげる。


 俺たち闘士は死ぬときは前のめりってわけか? それって『巨◯の星』? それとも『龍◯がゆく』? ふざけんなよ。


「勝者シーカリウス!」


 司会がそう言うと観客たちが「シーカリウス!」「シーカリウス!」とコールを始めた。


「くっそ、うれしくねぇっての。お前らも馬鹿なのか? いや、俺も馬鹿だな。もうこの世は馬鹿と馬鹿と馬鹿の馬鹿騒ぎってことか? まったく」


 俺は少し肩をすくめて、頭をかいてから来たほうに戻る。


 もちろんまたあのギャンブラーたちが「ありがとう」とか言ってくるけど、聞きたくなかった。


「うるせぇっての、黙れよ」


 俺がそう言っても、ゴブリンの言葉がわからないからまだ「ありがとな」とか「おつかれ」とか、言っている。


「お前ら、マジでふざけろよ。こっちは殺し合いしてんだ。そんなこと言われてもよろこべるか、ボケ」


 俺はそう言って闘技場を後にした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ