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帰還

 俺たちがリッチーを倒したあとで森の中にあった魔法陣は無効化されて、周囲の森に残っていたアンデッドたちも竜族倒しちゃうよクエストよろしくただの死屍となった。


 そして、クレーターの中に残った大量のCランクはオーティス商会の従業員たちと一緒に解体した。


 もちろんオーティス商会のみんなは大量のCランクに泣いて喜んだが、あんまりにもバラバラに散らばっていたので倒しかたについてクレームが入った。


 おいおい、贅沢言わないでよ。まったく。


 まぁ、確かにスケルトンはともかく、ゾンビはね、なんかごめんね。


 しかも岩が落下した爆心地に近い場所にいた魔物たちは魔石も素材も言うまでもなく壊れていた『砲撃』はかなり楽だけど、使いどころを考えないといけないね。


 なにせ、もったいない。


 これで元フォレスト領のアンデッドはすべていなくなったわけだが、一緒に人族も魔物もいなくなってしまった。


 だけど、ここから先は王国の仕事なので、旦那様と俺たちはブラックドッグ家に帰ることになった。


 元フォレスト家の屋敷のまえで、アルが「ポチ」と声をかけてきた。


「大丈夫?」


「うん? なにが?」


「『なにが?』じゃないよ」


「まぁ、大丈夫じゃないけど、大丈夫。アルもだろ?」


 俺が笑うと、アルは「そうだね」とうなずく。


「元気でね、ポチ」


「うん、アルもね」


「今度遊びに行ってもいい?」


「うん、いいよ。ってか、これは俺が答えることじゃないか?」


 俺が旦那様を見ると、旦那様は「アル様、なにもないところではございますが、是非お越しください」と笑う。


「ありがとう、フレディ」


 アルがほほえんで、隣に立っていたランスが俺をキッとにらんだ。


「次こそは貴様を倒す」


「ふん、やれるものならやってみろ。せいぜい次会うまでに腕を磨いておけよ」


 俺がそう答えて「仕方がないから私がまた胸をかしてやろうではないか、ファーファファ」と反り返りながら笑うとランスが「ぐぬぬ」と悔しがって柄に手をかけた。


「おいおい『オセロ』で勝てないからって暴力で解決しようなんて、大人気ないよ」


 慌てた俺がそう言うと、ギルが「お前だろうが!」と笑う。


「『オセロ』で勝てない相手を必要以上にあおっているお前のほうが大人気ないわ!」


「そう?」


「そうだろうが!」


 ギルがツッコミを入れてくるので、俺は「まあ、確かにそうだね」と首肯した。


「ランス、ごめんね」


 俺がそう言って手を差し出すと、ランスは「グゥ」と悔しそうな顔をして俺の手を握る。


「次こそは必ず勝つからな」


 そう言ったランスが手に力を入れた。


「イタタタ」


 俺が手を痛がると、ギルが「自業自得だろ」と苦笑いを浮かべる。


「ポチ、またね」


 ランスに並んでいるステフがそう言うので、俺は「うん」とうなずく。


「だけどさ、従者は考え直そうか?」


「無理」


「いやいや『無理』じゃないだろ?」


「無理」


 ステフがニコリと笑うので、俺は「はぁ」と息を吐いた。するとランスが「お前が渋れば」と言う。


「渋れば?」


「陛下からの召喚状を受け取ることになるだけだ」


「うっ」


「結果は一緒なのだ、陛下のお手を煩わせるな」


「うん」


 俺がうなだれながらうなずくとステフが「またね」と言うので、俺は「またな」と答える。


 そんなこんなでアルたちに見送られて、ブラックドッグ家の馬車が出発した。俺たちもオーティス商会の荷馬車に乗せてもらう。


「ってかさ、ギルはなんでここに乗ってるの?」


「見張ってないと、お前がまた楽しいことを始めるかもしれないからな」


「だからさ、何度も言うけど、そんなひょいひょい出てこないって、それに自分の家に帰らなくていいの?」


「うん? まだ大丈夫なんじゃないか? ダメなら母さんから使いが来るだろ?」


「いやいやいや、普通は来るまえに帰るんじゃないの? ギルはさ、もしかして怒られたい人? そういう趣味の人?」


「違うわ!」


「じゃあ、なに?」


 俺が聞くとギルは「あれだ」とうなずく。


「俺は期限が迫って本当にやばくならないと本気出せないタイプなんだよ」


「おいおい、お前は日曜夜のご長寿アニメのお隣さんの伊◯坂先生か? 期限なんか迫ってから慌ててやってたらよい作品なんか書けないよ。あらかじめ余裕を持って執筆を進めて、なんども読み返して推敲して、ときには血の涙を流しながらバッサリと書いたものを捨てる英断ができる余裕がないと……」


「お前はなんの話をしているんだ?」


「うん?」


「『うん?』じゃねぇ! お前はいつも例えがわからな過ぎる」


 ギルが眉間にシワを寄せるので、俺が「そう?」とタマを見ると、タマは苦笑いを浮かべて「ギル様、気にしたら負けっすよ」と言った。


「そうなのか?」


「はい、アニキはこういう人だと思ってくださいっす」


 タマがうなずくと、ギルは「なるほどな」と笑う。


「おい! タマさん? なんかそれだと諦められているみたいで嫌なんだけど?」


「諦めてないっすよ。認めているっす。アニキはアニキっすよね?」


「そうだな」


 タマの言葉にギルがうなずくので、俺が「グゥ」と言葉を詰まらせると、ジローが楽しげに「フガフガ」と笑う。


「お前もか、ジロー」


 俺がブルー◯スに裏切られたローマのあの人みたいにそう言うと、タマもジローもギルもさらに笑った。


「それで話は変わるが、俺のせいでお前たちに辛い思いをさせて悪かったな」


「うん? ギルのせいじゃないだろ?」


「いや、俺のせいだ。お前とアルを会わせるために『八並べ』でフォレストにボロ勝ちするようにフレディに頼んだんだよ」


「なるほど、そうだったのか。あの優しい旦那様がそんなことをするなんておかしいと思ったんだよ」


「本当にすまん」


 ギルが頭を下げるので、俺は「謝らなくて大丈夫だよ」と笑う。


「正直言って悔しい思いはあるけど、それはどれも俺ではどうにもならなかった話だし、その代わりに得たものも大きかった」


「それは進化と魔法のことか?」


「そうだね。確かにそれも大きいけど、やっぱり強いだけでは誰も守れないことがわかったことと、タマとジローと俺、3人の絆が深まったし、アルやステフとも友達になれたからね」


「そうか、ありがとな」


 ギルがそう言って「辛い話だったな」と苦笑いを浮かべた。


「うん、だけど、最後はリッチーも『ありがとな』って言ってたからこれでよかったんだよ」


「そうだな」


 ギルがまだしょっぱい顔をしているので、俺は笑った。


 確かに悔しさはある。できなかったことを数えれば、もっとなにかやれたのではないかと思ってしまう。


 それでもやっぱり俺たちができることなんて限られているんだ。


 俺はタマとジローを見た。


 いつか来るその日までに俺は、俺たちはもっと強くなる。どのような困難がきたとしても乗り越えて行けるように。


「お前、なんか雰囲気だしているみたいだけど、大丈夫なのか?」


「うん?」


「帰ったら絶対マギーに怒られるだろ?」


「グゥ」


 どっ、どのような困難が来ても乗り越えられるように。

2章はこちらで終了となります。最後までお付き合いくださりありがとうございます。引き続き3章を投稿する予定でおりますので、よろしくお願いします。

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