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ステフ②

 俺はガシガシと頭をかいてからステフを見た。


「あのさ、従者が欲しいならそれこそほかにもいるだろ? 魔力を鼻にかけている貴族のバカ息子とか、名を上げたい無鉄砲な騎士見習いとか、世間知らずの聖女とかも定番だし、偉そうな賢者気取りのインテリ眼鏡とか、あとは、魔法学園主席のいけすかない魔女とか……」


 俺が「えっと、それから」と言うと、アルが「あのさ」と俺を止める。


「なに?」


「『なに?』じゃないよ。なんなの、そのラインナップ。僕だってそんな人たちとは旅なんかしたくないよ」


「そう?」


「そう!」


 アルがツッコミを入れてくるので、俺は「そうかなぁ」と首をかしげた。


 だってラノベの勇者パーティなんてだいたいそんな感じだよね? それで追放したやつにザマァされるんでしょ?


 いやいや、ザマァされたらダメなのか?


 うーん、だけどさ。


「どっちにしてもさ、ゴブリンを連れた勇者なんて王国的に大丈夫なの?」


「えっ?」


「王国的になしなんじゃない?」


「そうかなぁ?」


「そうだよ」


 だってさ、ある意味で鬼を連れた鬼◯隊みたいな感じでしょ? アレはさ、兄妹愛と健気な目的があるからいいのであって、血のつながらないゴブリンを意味もなく連れて歩いているのは全然違うんだよ。


 きっと裁判にかけられたら派手に殺されるって。親方様だって止めてくれないよ。


 死刑! って変な格好で指さされるって。


「国民の支持は得られないんじゃない?」


「国民の支持?」


「うん、たとえ強くてもさ。やっぱり勇者は王国民に愛されていないとダメだと思うよ。嫌われ者のゴブリンなんて連れていたらまずいでしょ?」


 俺がそう聞くと、アルが「ポチはさ」と呟いて、タマが「アニキ」と悲しそうな声を出した。


「どうしたの? 2人とも」


「自分で言ってて悲しくないの?」


「そうっすよ」


「うん? もちろん悲しいよ。だけど、それが現実でしょ?」


 俺が首をかしげると、ステフが「嫌われてもいい」と言った。


「おい! よく考えろよ。支持を得られない勇者なんてダメだろ? まぁ、いないことはないけどさ。ワンパンの人とか、ウィル的なスミ◯さんがそんな役やってたけどさ、ダメだよ。ダメ、ダメ」


「ポチがいいんだもん」


 ステフがそう言ってギュッと自分の服の裾を握る。


 おいおい、そんな言いかたはよせって勘違いするよ。完全にちょずいているやつなら『あぁ、こいつ俺に惚れてやがるな』って勘違いするって。


 まぁ、相手は幼女だからないけどな。


「うーん、わかった。友達にはなるから従者は考え直せ」


「いいの?」


「いいよ。だけど、手合わせはしないからな。遊ぶにしてもほかの遊びをする、いいな?」


 俺が聞くとステフが「うん」とうれしそうにうなずく。だが、アルが渋い顔をした。


「どうした? アル?」


「うん、2人が友達になれたのはうれしいんだけどさ、たぶん従者にならないってのは無理だと思うよ」


「はぁ?」


「だって、ステフについていける人がいないから」


「おいおい、マジで言ってんのか? だったら今から育てろよ。俺たちだって訓練始めてからまだ1年だよ」


「「えっ?」」


「いやいや、なに驚いてんだ? 俺なんて生まれて1年ちょいだし、ステフだって、年的に考えても訓練したのはせいぜい3年ぐらいだろ?」


 俺が聞くと、ステフが「うん」とうなずくので、俺も「そうだよな」とうなずき返す。すると、ランスが頭を抱えた。


「嘘だよな」


「嘘なわけないだろ?」


「嘘じゃないよ」


 俺とステフがランスを見ると、ランスがその場で崩れ落ちて地面に手をついた。


 おいおい、殿下の護衛がそんなことをしてて大丈夫か?


「これが天才なのか?」


「うん?」


「俺はずっと血の滲むような努力をしてきた。それなのに1年と3年? 意味がわからない」


「あぁ、それはランスのランクがステフより低いからだよ」


「「えっ?」」


 俺とステフ以外のみんなが驚くので、俺とステフは「なに驚いてんの?」と聞く。


「『魔力循環』すればわかるじゃん」


「はぁ?」


「ランスは『魔力循環』すると目が赤くなるからたぶんBランク、それでステフは金色になるからSランクなんじゃないかと思うよ」


 俺がそう言うと、ステフが「そうだよ」とうなずく。


「ちなみにAランクは銀色だよ」


「嘘だろ?」


「いやいや、だから嘘ついてどうすんの?」


「嘘ついてないよ」


「だが、どうすれば3年でSランクなんかになれるのだ?」


「そりゃあ、魔物の肉だけじゃなくて魔石を食べているんだろ? 魔石の方が効率がいいし」


 俺が聞くとステフが「うん」とうなずいて、ランスが「馬鹿な」と目を見開いた。


「やはり勇者は選ばれし者なのだな」


「「うん?」」


 俺とステフが並んで首をかしげると、アルも「そうだね」とうなずく。


「ポチ、普通の人族はね。魔石を食べたら魔物落ちするんだ」


「「えっ?」」


 アルがそう言うので、驚いた俺とステフがランスを見るとランスが「そうだ」とうなずく。


「でもさ、そんな簡単に魔物落ちしたら普通の人たちも魔物落ちするんじゃないの?」


「いやいや、普通の人族はあんな硬いものを食べられないよ」


「えっ? だけどさ、あの騎士たちは……」


 フォレストはあの方にもらった薬って言ってたけど。


「もしかして、魔石を溶かしたものを飲まされたの?」


「あぁ、そうだろうな。しかもどのような方法かわからないが、かなりの量を飲んでいるはずだ」


「マジか?」


 俺が目を見開くと、ランスは「マジだ」とうなずく。


「じゃあ、ステフは?」


 俺がステフを見ると、ステフも自分の体を確かめた。


「私も魔物なの?」


「おいおい、それは違うだろ?」


 俺が苦笑うと、アルが「ステフは違うよ」と言った。


「ステフはね、ハーフエルフだから」


「ハーフエルフ?」


 来たのか? ファンタジーの定番が来たのか? まぁ、確かにステフは白に近い金髪で肌も透けるほどに白いし、見るからに可愛らしいが、おいおい、ステフがハーフエルフってことは……。


「ステフの父さんはエルフなのか?」


「うん」


「おいおい、エルフで勇者とかチートかよ」


 俺はそう呟いてじっと手を見る。


 ◯王知ってたし、たぶんステフの父親は転生者だよな? エルフで、勇者ってなにその高待遇……。


 ふざけんなよ。こっちはゴブリンだっての! 


 ちくしょう、絶対ステフの父親より幸せになってやるからな。


 俺がそう決意すると、アルが「わかった?」と聞いてきた。


「なにが?」


「ステフについていける人族はいないって」


「あっ?!」


「はい、ポチ、がんばって!」


「軽っ! ふざけんな。無理だって、ゴブリンが勇者の従者とか意味わかんないって!」


「大丈夫だよ、それまでにバラの刺繍を入れた白い革鎧と籠手とブーツを用意しとくから」


「いやいや、そんなの着てもダメなものはダメだろ?」


 俺が聞いたが、アルもランスも、ほかの騎士たちも首を横に振った。


「死にたくなかったらそれまでにがんばってSランクになることだな」


「おい、ランス! お前ががんばれ! 吐くほど強い魔物の肉を喰らえ!」


「無理だ、私には殿下の護衛という立派な仕事があるからな」


 マジかよ……。


 俺がそう思ってステフを見ると、ステフがいい笑顔で俺を見返してくる。


 ダメだよ、ダメ、ダメ。


「アニキ」


「なに? タマ」


「詰んでいるっす」


「うん、わかってる。そんな気がしてた」


 俺はタマにうなずくと、タマもうなだれて、ジローが「フガフガ」と鼻を鳴らす。


「俺、がんばる」


「うん、そうだな。ジロー」


 俺はそう答えてジローをなでる。


 だけどさ、こんな話、アビーになんて話したらいいんだ? 西に旅とかってどのぐらいかかるんだろう? 泣くな、絶対に。

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