魔法③
子爵の取り調べが行われた次の日、俺たちはあっさりBランクになった。
このところ毎日CランクとDランクの魔石を大量に食べているのだからならないほうがおかしい。
だけど、昨日のことがあるからあんまり喜べないよね。
それにこれから戦うであろう門番はかなりやばいはずだ。リッチーは『せめてBランクに進化しろ、それでも足りないかもしれんがな』と言っていた。
あれから『魔力循環』を続けているので、それで強くなっていることに期待するしかない。
まぁ、そんなことを心配したところで、やることをやったらあとはなるようにしかならないんだけどね。
俺は褐色の肌に赤眼で赤髪のルペルペタスになった。
人族が『レッドキャップ』と呼び恐れるゴブリンらしいのだが、残念ながら顔はベビーフェイスのままだし、身長も変わらない。
しかもかなり力強くなっているのに肉付きがレッサーゴブリンからあんまり変わらないのがファンタジー過ぎる。もちろんムキムキのマッチョマンにはなりたくないが、できたら細マッチョにして欲しかった。
理由? それはもちろん、強く……ごめんね、嘘。それはもちろんモテたいからだ! どこいった? 俺の異世界ハーレム?!
まぁ、俺にはタマとジローがいるから異世界ハーレムとか、そういう浮ついたものはいらないけどね。
本当にいらないんだからね!
さてと、噂のタマは白い毛並みに赤い模様が入った。首元には勾玉があしらわれて、足先と尻尾の先も赤い。そして特に特徴的なのは尻尾が……おいおい。
「九尾の狐かよ」
「九尾の狐って、アニキ。フォックスのBランクはキュウビっすよ」
「すごいね」
「そうっすか?」
「うん。だってあの有名な九尾の狐だよ。下手するとラスボスですよ、あなた。槍男と虎みたいな妖怪がみたらビックリですよ、マジで!」
それにきっと猫だって世紀末的な技を繰り出すし、そりゃあ、ビックリして語尾も変わるってばよ、なんちゃって。
と俺が思っていると「どうっすか?」と笑ったタマがその場でクルリと回るので、俺はもちろん「いいよ、すごくいい」とうなずく。
「うれしい」
ガバッとタマが抱きついてきたので、それを受け止めると、ジローが「フガフガ」と鼻を鳴らす。
「また鮮やかな色だね。ジロー」
「フガフガ」
ジローは根元が赤くて毛先に向かってオレンジ、黄色とだんだん色が薄くなるので、まるで燃えているみたいだ。
「さすがはBランクのカリュド、怒りのボアだね」
めちゃくちゃ強そうだっていうか、強いんだよね。もはやその辺に転がっている魔物ではジローに敵わないだろ。たぶん魔法を知らないと傷つけることすら難しい気がする。
まさにチート猪だ。
「Bランクは基本的には赤なのかなぁ? オークも赤髪だったって言ってたし」
「そうみたいっすね」
そう言ったタマがほほえんだので、俺は「じゃあ、恒例の確認をしようか?」と言う。
ということで、俺たちはフォレスト家の中庭にきた。フゥーと息を吐いて、まずは3人で体に常時循環させている魔力の量を増やしてみた。
「おいおい、タマさんや」
「なんっすか?」
「いやいや『なんっすか?』じゃないよ、火まとってんじゃん」
「えっ?」
驚いたタマが自分の前足を見て「嘘」と呟いた。そして、ジローを見るとバチバチと毛先がスパークしている。
「ジロー、お前はマジか?」
「フガ?」
「『フガ?』じゃねぇ! それって、雷まとってんじゃねぇか?!」
チートか? やっぱりチートなのか? お前たちは?
そして、俺はじっと手を見る。
進化しても、進化しても、ゴブリンだからチートが来ない、じっと手を見る。って、おい!
「嘘だよな……」
あぁ、雨にも負けた、風にも負けた、ゴブリンだからしょうがない。
2万の兵が戦争を吹っかけてくれば、行って皆殺しにし、ゲス野郎に狙われた避難民あれば、転移魔法で避難させ、最弱種なのに魔王と呼ばれ、巨乳秘書と姫様と妖精と竜皇女と……えっと、もろもろにチヤホヤされる。
そういうチートに、私もなりたい。
あぁ、雨にも負けた、風にも負けた、ゴブリンだからしょうがない。
そんな感じで俺がガックリと肩を落とすと、ジローが「アニキも湯気出てる」と言った。
「うん?」
「そうっすね。なんか体から湯気が出てるっすよ?」
「湯気?」
確かに少し手の周りがユラユラしているし、湯気も出ているような気がする。
そして、試しに手を振ってみた。
「「速っ?!」」
タマとジローが目を見開く。
「うん?」
「アニキ、めちゃくちゃ速いっす」
「フガフガ」
「えっ?」
もしかして目に見えないだけで、俺もチートの仲間入りをしているのか? メテオ降らして竜族を全滅させたりできちゃう系なのか? それとも超アイテムをクリエイトしちゃう系なのか? もしくは、チーレムライフが唐突にやってくるのか?
いやいや、落ち着きたまえ、ゴブリンにそれは無理ゲーすぎるよ。うん。
俺はもう一度、自分の体を確認してからその場で軽く跳躍してみる。なんか体が軽いね。
「ちょっと跳んでみるね」
「わかったっす」
俺は2人に見守られながらその場でグッとしゃがみ込んで跳び上がった。
「嘘でしょ?」
城壁を軽く飛び越えるぐらい跳べた。
「えっと?」
「アニキ『部分開放』はしてないんっすよね?」
「うん、してないよ」
俺はうなずいて「試しに開放してみるか?」と笑ってギュッとしゃがみ込んで、今度は魔力でサポートしながら跳び上がる。
「うわぁぁぁぁぁぁ、高っ!」
たぶん城壁の3倍は飛んでると思う。
いやいやいや、おかしいよ。おかしいでしょ?
そして、俺がドスンと中庭に着地すると、屋敷からワラワラと人が出てきた。
まずいね。




