魔法①
笑っているスケルトンに俺が「それは教えてくれるってこと?」と聞く。するとスケルトンは「あぁ、教えよう」と答えた。
「だが、その代わりにあとで俺の願いも聞いてほしい」
「願い?」
「あぁ、そうだ」
スケルトンがうなずくので、俺は「いやいや『そうだ』じゃないだろ?」と聞く。
「どんな願いか聞かないと答えようがないよ」
「それはあとで話す。お前たちが俺の願いを叶えられるほどに強くなれたらな」
俺が「マジか?」と聞くと、ジローが「フガフガ」と鼻を鳴らした。
「うん?」
「俺たちなら大丈夫」
ジローがそう言うと、タマは「そうっすね」と同意して、2人がニヤニヤと笑って俺を見るので、俺は「わかったよ」とうなずいた。
「よし、決まったみたいだな。じゃあ、手を貸してみろ」
「うん? 手?」
俺がスケルトンに手を差し出すと、俺の手を取ったスケルトンが俺の手のひらから体の中に魔力を流した。
「俺の魔力が入ったことはわかるよな?」
「うん」
「争ってみろ?」
「えっと、押し出せばいいの?」
「そうだ」
俺は体の中に魔力を満たしていって、スケルトンが俺に流した魔力をフンヌと追い出した。そして、スケルトンを見る。
「できたよ」
「そうか、ではその状態を維持しろ」
「はぁ?」
俺が首をかしげると、スケルトンは続ける。
「いま、お前の体の隅々に魔力が満たされた状態だ」
「うん、それはわかる」
「それに慣れろ、その状態が当たり前になるまで常に体の中に魔力を満たし続けるんだ」
えっと?
「あのさ『常に』ってのは、ずっとってことだよね?」
「そうだ」
「マジか?」
俺が聞くとスケルトンは「マジだ」と言って、ジローとタマにも同じことをやらせた。
「これが魔法をスムーズに使うための第一段階『魔力循環』だ」
「そうか、あらかじめ魔力を体に満たしておけば使いたいときにすぐに魔法に変換できるってことか?」
「半分はそうだ」
「半分?」
俺が聞くとスケルトンは『ファイヤーボール』を出した。
「手で弾いてみろ」
「えっ?」
ボワァと飛んできた『ファイヤーボール』を俺が手で横に弾じくと『ファイヤーボール』が掻き消えた。
「嘘だろ?」
「どうだ?」
「魔法を受け付けなくなったのか?」
「いや、抵抗力が上がっただけだ。魔法は補助だ。例えば『ファイヤーボール』も空気に含まれる物質に働きかけて燃焼させているに過ぎない」
「なにもないところから生み出しているわけではないってことか?」
スケルトンは「ほぉ」と言ってから「そうだ」とうなずく。
「『魔力循環』は体を魔力で満たして、体のあらゆる力を魔力に補助させているわけだ。身体能力、運動能力、抵抗力」
「なるほど」
俺が手を見ると、スケルトンは「それで」と続ける。
「いまの状態で『部分開放』してみろ?」
「『部分開放』?」
「そうだ、お前の言っていた。サポートだな」
「わかった」
俺はそううなずいてギュッと足に力を入れた。
嘘だろ?
ガシャン!
俺は加速についていけずに、アイアンスケルトンの山にそのまま突っ込んだ。
「イタタタ」
俺が山から出ると、スケルトンは「どうだ?」と笑う。
「半端ないね、コレ?」
「そうか、それがゴブリンの奥の手『鬼門開放』の『部分開放』だと思う」
「えっと? 『思う』なのか?」
「あぁ、なにせ使っているゴブリンを初めて見たからな」
「おいおい」
俺が呆れ顔になって、スケルトンが俺を見ながらケラケラ笑うとタマが「それで?」と聞く。
「アニキが使える魔法ってのはこれっすか?」
「いや、これはあくまでも『部分開放』だ。ゴブリンが使えるとっておきの『鬼門開放』はこんなものではないはずだぞ」
スケルトンはそこで一度ためて、続ける。
「全ての能力を爆発的にあげる魔法らしいからな」
それってさ、もしかして界◯拳じゃないですか? ねぇ、10倍とかになっちゃうアレでしょ? ワクワクしちゃうアレだよね?
Gのかかる部屋で腕立てとかしなくていいの?
「うん? だけどさ『部分開放』をほかのゴブリンたちに教えてもできなかったよ」
「お前はすべての人族が魔法を使えると思うのか?」
「そっか……そうだよね」
人族だって魔法が使える者と使えない者がいる。つまりゴブゾウたちは魔法が使えないのか。
「だが、体を魔力で満たす『魔力循環』はできるはずだぞ」
「本当?」
「あぁ、だから教えてやるといい『魔力循環』ができる、できないでかなり違うはずだからな」
「そうだね。ありがとう」
俺はそう頭を下げて、それから『あれ?』と思った。
「この『鬼門開放』ってさ、ゴブリンのとっておきなんだよね? だけど、コボルトも同じことができたけど?」
「本当か?」
「うん、石をものすごい勢いで投げてきたし、すごい速さで動いたよ」
俺がそう言うとスケルトンは「なるほど」と笑う。
「そのコボルトは風の加護持ちなんだろうな。だからそいつは風を使って同じようなことをしてたんだ」
「なるほど、そういうことか」
フォックスの中には火の、コボルトの中には風の、ボアの中には土の加護持ちがいるわけだね。
「あのさ、ゴブリンはなんの加護を持った子がいるの?」
「あぁ、それな」
「うん?」
スケルトンは頭蓋骨をポリポリとかいた。
「ゴブリンに加護はない」
「おい! マジかよ。ふざけているのか? 神ってやつは?!」
俺が怒ると、スケルトンが「怒るなよ」とケラケラ笑う。
「だからお前たちには『鬼門開放』があるんだろ? 一時的とはいえ、全ての能力を爆発的にあげるなんてすごい魔法だと思うぞ」
スケルトンはそこまで言うと「どちらにしても」と続けた。
「まずは『魔力循環』に慣れて、循環できる魔力を増やせ、下地ができていなければどんなすごい魔法も意味がないぞ」
「そうだよな」
俺がうなずいて、俺とタマとジローの3人は明日から『魔力循環』に慣れながら循環できる魔力を増やしていき、この森からあふれてきたCランクとDランクのアンデッドの魔石を食べてBランクになることにした。
「ねぇ、名前を聞いてもいい?」
「そうだったな、俺はリチャードだ。リッチーでいい」
えっ? リッチって、マジか?
「俺はポチ、こっちがタマで、ジローだ。よろしく」
「あぁ、よろしくな」
俺たちがガッチリと握手をする。
でもさ、骨が食い込んで何気に痛いよ。




