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相談②

 応接間では奥様による容疑者2名の取り調べが行われた。


 どうやら、旦那様がテイマーの名門である伯爵を怒らせて、さらにギルが王子に『面白いゴブリン』を自慢したせいで、俺は伯爵領の森に巣食っているアンデッド討伐に駆り出されることになったらしい。


「えっと、それは絶対に行かないとダメなんだよね?」


「あぁ、王命だからな」


「あはは、嘘だよね? 2人とも人が悪いなぁ、その冗談はあんまり面白くないよ」


「「嘘じゃない」」


「マジか」


 俺が頭を抱えると奥様も隣で「あなたたちは馬鹿なの?」と頭を抱えた。


「あなた、私はあれほど『八並べは、ほどほどに負けなさい。勝ちすぎてはダメよ』って言ったわよね?」


「はい」


「ギル様にも『絶対にポチの自慢はしないでください』ってお願いしましたよね?」


「すまない。アルがあんまりにもしつこく聞いてくるので話してしまった」


 旦那様とギルがうなだれると、奥様は「はぁ」とため息を吐いた。


「でもこれは考えようによってはチャンスね」


 奥様がニヤリと笑って俺を見るので、俺は「えっと、奥様?」と聞く。


「伯爵家が手を焼いているアンデッドたちをポチが討伐すれば、テイマーの名門を鼻にかけているフォレスト家に一泡吹かせられるわね」


「本気ですか?」


「本気よ。それに王命だもの。行かないとか無理よ」


 奥様がそう言うので、俺は「いやいやいや」と言う。


「無理ですよ、アンデッド? なんですか、その怖そうな奴ら? それにテイマーの名門が手を焼いているんですよね? そんな奴らの相手をただのゴブリンにつとまると思いますか?」


「あなたはただのゴブリンじゃないでしょ?」


「無理、無理、無理ですって! そもそもアンデッドの相手なんて神聖魔法とかいるんじゃないですか? それか聖水? 十字架? それともニンニクかな?」


「大丈夫よ。ゾンビには火が効くし、タマに『ファイヤーボール』を教えているから」


「えっ?」


 なんだって!?


「ふぁ、ふぁ、『ファイヤーボール』ってなんですか?」


「魔法よ」


「魔法!? キタァァァァァァ!」


 俺が叫ぶと、ギルが「なにを興奮しているんだ?」と聞く。


「あのさ、だって魔法だよ? そんなものテンション上がるに決まってんじゃん」


「いやいや『ファイヤーボール』なんて初級だろ?」


「いやいやいや、初級とか関係ないから使える時点ですごいから」


 俺がそう言うとギルは「そうなのか?」と奥様に聞く。


「そうね。この辺りの魔物は使えないし、ポチはゴブリンだから」


「あぁ、そうだったな」


 ギルがうなずくので、俺が「忘れてたんか?」と聞くとギルは「忘れてた」と笑う。


「おいおい、王子にそのゴブリンを自慢したのは誰だっけ?」


「あはは、俺だ」


「『あはは』じゃねぇ!」


 俺がツッコミを入れると奥様が「でも」と笑う。


「ポチは魔法による補助はできるのよね?」


「はい、なんとなくだけど」


 俺がうなずくとギルが「マジか?」と聞く。


「うん、マジ」


「それで? なにができる?」


「えっと、加速っていうやつなのかな? 体とか、矢とか石とかに魔力を使うと速くなる」


「えっ?」


 ギルはそう言って目を見開いて「さすがにそれは嘘だよな?」と聞く。


「嘘じゃないよ」


「あはは、お前はやっぱり最高だよ。マジで」


 ギルがそう言うと旦那様が「珍しいのですか?」と聞く。


「あぁ、ゴブリンはどうだか知らないが、騎士の中でも加速を使える者は少ないはずだ」


「「えっ?!」」


 マジか?! だからタマやゴブゾウたちに教えてもみんなできなかったんだね。


 すると旦那が「でもそれってまずいんじゃないですか?」と聞いた。


「そうだな。下手をするとアルが欲しがるかもしれない」


 おいおい、アルって王子のことだよな?『まずいんじゃないですか?』ではなくて、間違いなく、まずいよ、それは……。


「あのぉ、お腹が痛くなってきたので、今回の遠征は……」


「馬鹿やろう、だからそれは無理だって」


「ギル? どっちが馬鹿やろうなんだ?」


 ギルが「うっ」と言い淀むと、奥様が「はぁ」とため息を吐いた。


「もうフォレスト家に一泡吹かすとか考えなくていいわ。とりあえず討伐に参加してポチは端の方で大人しくしていなさい。いいわね?」


 俺が「わかりました」と真面目な顔をすると、奥様が「心配だわ」と言う。


「えっ?」


「ポチのことだから、絶対にやらかすわよね?」


「いやいや、やらかしませんって端で大人しくしてますから」


 俺が笑うと、奥様はもう一度「はぁ」とため息をついた。


「あとはアルフレッド様がどれほど興味を持ったのかによるわね」


「アルフレッド様は珍しいものが好きだからな」


「あぁ、積み木もかなり気に入っていた」


 奥様に旦那様とギルがそう続いてから俺を見た。


「まあ、最悪の場合はポチをアルに献上して、ブラックドッグ家をさらに陞爵してもらうしか……」


「おい!」


「だって、仕方ないだろ? 相手は王族だ」


「その王族が興味を持ったのは、誰のせいだ! 誰の?!」


「あぁ、俺だな」


「『俺だな』じゃねぇ! マジか? お前はマジもんのアレか?」


 俺がそう言うとギルは「まあ、そう言うな」と笑う。


「だから慌てて謝りに来ただろ? それに俺だって母さんにコッテリ怒られたんだ」


 ギルが頭をかくと、奥様が「公爵夫人はなんて言ってたの?」と聞く。


「『とりあえず乗り切れ、ゴブリンを王子に奪われたらあんたを殺す』ってさ」


 ギルが苦笑いを浮かべると、奥様は再び頭を抱える。


「ポチ、行くまえにもう1つぐらいお茶会の娯楽を考えて」


「いやいやいや、奥様、諦めたらそこで試合終了ですよ」


 俺がそう言うと、奥様は「試合というものは始まるまえに終わっているものなのよ」と笑う。


「詰んだ。こんどこそ、詰んだ」


 俺が頭を抱えるとギルが「アルのところも意外と楽しいかもしれないぞ」と言う。


「そんなわけあるか?! ボケ!」


「まぁ、そうだな」


 ギルがうなずくと、全員で「はぁ」とため息をついた。

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