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狩り④

 タマの怪我が治り、俺たちは追い込み猟という新たなスタイルを確立した。


「ワウォォォォォォ」


 よし!


 俺が弓を構えると、視界の先にディアを捕らえた。


「来たか」


 ディアは真っ直ぐにこちらに向かって走ってくる。そして、木の根を軽やかに飛び越えた。


 俺はそのタイミングで矢を放つ。


 シュー!


 飛んで行った矢がストンとディアの頭をとらえると、ビクッとなったディアがそのままの勢いで地面に転がった。


 俺はそれに駆け寄って確認してから血を抜いて、走ってきたタマを見た。


「ありがとう、タマ、ご苦労様」


「とんでもないっす」


「それにしてもこの追い込み猟ってやつ、タマのおかで楽にディアを狩れるな」


 俺がそう言いながらディアを見下ろすと、タマが「アニキがすごいっす」と笑った。2人してそれを並んで食べて「次に行くか?」と言ったとき、そいつらの声が聞こえた。


「タマ、こっちだ」


「はいっす」


 俺とタマが草むらに隠れると、そいつらは歩いてきた。


「本当に聞こえたのかよ」


「あぁ、間違いない。フォックスの声だった」


「あの2人をやったメスって言いたいのか?」


「わからないが、もうこの辺りには捕まえていないフォックスはいないはずだろ?」


 その言葉に、タマがギュッと歯を食いしばる音がきこえた。


「まあ、だけどよ、あいつらは傑作だな。あんな必死になって働いてレッサーゴブリンどもをすべて捕まえたら自分たちは解放されるって信じていやがる」


 コボルトが「クククッ」と笑った。


「レッサーゴブリンの養殖場ができたらやつらはお払い箱で俺たちに食われるのによぉ」


 あたりを探っていたコボルトが「シッ」と仲間が笑うのを止めて、俺たちが隠れている草むらを見て、鼻をクンクンさせた。


 その眉間に矢が刺さる。


「なっ? なんだ?」


 草むらから飛び出したタマが驚いたもう1人を取り押さえると、俺はそいつに矢を突きつけた。


「その面白そうな話、詳しく聞かせてもらおうか?」


「なっ、なんだ?! てめぇ!」


「おい、立場がわかってないのか?」


「なんだと……」


 俺は目を見開いたコボルトをぶん殴って気絶させた。


 気絶したコボルトをぐるぐるに縛り上げて木の枝から逆さまに吊るす。そして「起きろ!」とその頬を引っ叩いた。


「なっ、てめぇ、このやろう!」


 そう言うコボルトの目の前にダガーを突きつける。


「まだ、わかってないのか? アホなのか? コボルトってのは?」


「なっ、なんだと、お前、こんなことして、タダで済むと思ってんのか? こっちには仲間がたくさんいるんだぞ」


「だから? お前さ、態度を改めないと痛い思いをするよ」


 俺がダガーで少し切りつけると「わかった、わかりました」と言った。


「それで? レッサーゴブリンを捕まえて養殖場を作るってなに?」


「あの……なんの話でしょうか?」


「おい」


「はい」


「お前、耳がいらないんだな」


「ちょっ、ちょっと待って! 話します。話します」


 コボルトが慌てるので、俺は「はぁ」とため息を吐いた。


「あのさ、もう一度だけ言うからよく聞いておけよ。お前が素直に話せば痛い思いはしなくて済む。だけど、はぐらかしたり、誤魔化したりするたびに痛い思いをする。わかったか?」


「……わかりました」


「よし、じゃあ、話せ」


「レッサーゴブリンを捕まえてきて繁殖させて、ホーンラビットを食べさせてゴブリンに進化させてから……その、しっ、絞めて、魔石を食べます」


 俺はグゥと歯を食いしばる。


「それは自分たちが1つ上に進化するためか?」


「はい、グラディアトルに進化するためです」


「なるほど、ボアは手強いし、ディアは逃げる、だからフォックスを使えば簡単に捕まえられるレッサーゴブリンを捕まえて養殖しようってことか? あぁ?!」


 俺がそう聞くと「はい」とコボルトが怯えた。


 ジェムの話だと魔物の強さをアルファベットで表すとしたら、レッサーゴブリンとホーンラビットがFランク、そして、ゴブリンとコボルト、フォックス、ボア、ディア、ウルフがEランク、オークがDランクだそうだ。


 そして、魔物は同族を食べられない。


 共食いとか嫌だからその点に関してはこの世界の神様は素晴らしいと思うが、その代わりに魔物は他の種族を食べないと進化できないから、そのあたりはゲスやろうだとも思う。


 だから、ホーンラビットを食べさせてレッサーゴブリンを自分たちと同ランクに上げてから食べる。ゲスいやりかたではあるが、この世界では理にはかなっている気がする。


 同ランクやランクが上の魔物を食べた方が進化が早いのは俺があっさりとゴブリンに上がったことからも推測できる。


「でも、なんでゴブリンなんだ? フォックスを使えば、ディアだって簡単に狩れるんじゃないのか?」


「それは……」


「なんだ?」


「魔石だよ」


「魔石?」


「本当に知らないのか?」


 コボルトが目を見開くので、俺はコツンと殴った。


「痛ぁ、俺たち人型の魔物にある魔石は魔力の塊だ。だから同ランクの獣型の魔物の肉を食べるより進化が早いし、魔力も上がりやすいんだぁ」


「ほほぉ」


 俺がうなずくとコボルトは「ひぃ」と悲鳴を上げた。


 なるほど、なるほど、つまりは魔石を食べまくれば、俺にも魔法が使えるってことか?


「キタァァァァァァ!」


「なっ、なんだ? なんだ?」


「ふむふむ、君はいい働きをしてくれた。いや『君たちは』と言うべきか」


「なんだよ、急に」


「うんうん、君のもたらしてくれた情報は良い情報だったよ。ありがとう」


 俺はそう言いながら少し離れる。


「なっ、そうか、じゃあ、早いとこ解放してくれよ。頼むよ」


「うん?」


 俺はそう言いながら振り返ると首をかしげた。そして、弓を構える。


「なっ、なんだよ、話が違うじゃねぇか、素直に話せば痛い思いはしないって! 騙しやがったな!」


「いや、痛い思いはしない。一瞬だ」


 俺は矢を放つ。シューと飛んでいった矢がストンと刺さるとコボルトは動かなくなった。


「タマ」


「なに? アニキ」


「コボルトたちを狩るぞ。魔石を食いまくって魔法をゲットだぜ!」


「うん」


 タマがうなずくので、俺はもう一度「ゲットだぜ!」と言ってみた。するとタマは首をかしげてから「うん、アニキ」とうなずく。


 仕方ないよな、だってタマは帽子をかぶった男の子も黄色いネズミも知らないもんな。


 そこからタマと2人で他のコボルトを探して、弓によるヘッドショットで倒して魔石を食べて、頃合いを見てディアを狩ってから帰る。


 コボルトはかなりの数いるらしいから、タマと2人でみんなおいしく頂いてやろうか?

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