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告白

「わかった。わかったから落ち着け、ちゃんと話すから」


 俺がそう言いながらキムに視線を移すと、察したジェムが殺気を抑えるので俺は「信じられないと思うぞ」と言う。


「わかったから、さっさと話せ」


「俺には前世の記憶があるんだ。そして、前世は人だった」


「「はぁ?」」


 2人はポカンと口をあけた。


「なっ、なに言ってんだ? そんなこと……」


「俺だってよくわからないし、意味もわからないんだ。死んで起きたらいきなりゴブリンの子供になっているし、1ヶ月で巣立ちとか言われて森に放り出されるし……」


「1ヶ月……それで、お嬢様がウルフに襲われていたから助けに入ったのか? お前じゃ敵わないだろ?」


「まあ、そうだろうけど、アビーは超絶かわいいし、放っておけないだろ?」


 俺がそう言うとジェムは「あはっ」と笑う。


「うん?」


「お前は馬鹿だな」


「なんでだよ」


「そんな話をして大丈夫だと思っているのか?」


「えっ?」


 俺が聞くとジェムは「ありえないな」と言った。


「まず、お前の中身が人族なら面白がった貴族が欲しがる。もしくは、王都に連れて行かれて研究者にいじられるぞ」


「嘘だろ、マジか?」


「マジだ、なにせお前の存在は前代未聞だからな。奥様に知られてみろ、高い金で買ってくれる貴族に売られるぞ」


「いやいや、やばい、それはやばい気がするぞ」


「気じゃない。間違いなくやばいだろうな」


 ジェムがそう言うので愕然となった。確かに落ち着いて考えたらそうなるね。


 転生者とか、転移者とかよく聞くから麻痺してたけど、日本にエルフとかゴブリンが転移してきたら研究者にいろんなことをされそうだし、魔法の知識を持ったやつが転生したら絶対に監禁されて研究に付き合わされるだろうね。


「それから、教会がお前の存在を認めると思うのか?」


「あっ!」


「神の子たる人族がゴブリンに転生……間違いなく殺されるぞ」


 ジェムがそう言って顔を歪めて、キムが「大丈夫、ジェム」と気づかった。


「あぁ、すまない。大丈夫だ」


「でも、ポチは面白いと思ったら人族だったんだね」


「キム?」


「だって、中身は人族なんでしょ?」


「あぁ、そうだな」


 ジェムはそううなずいて、頭をガシガシとかいた。


「今ここで聞いた話は聞かなかったことにする」


「はぁ?」


「キムも俺もなにも聞かなかった。いいな?」


「いやいや、それは無理があるんじゃないか?」


 俺がツッコミを入れるとキムは「いいよ」と答えた。


「いいの?」


「うん」


「だってさ、見た目はゴブリンだけど、中身は人なんだよ。気持ち悪くない?」


 俺が聞くとキムは「フフッ」と笑う。


「面白い」


「はぁ?」

 

「だって、ゴブリンって気持ち悪いけど、ポチは面白いんだもん」


「いやいや、キムは落ち着こうか?! 一度落ち着こうよ。これは『面白い』では済まされないだろ?」


「なんで?」


「『なんで?』『なんで?』ってお前、マジか?」


 俺が聞くとキムは「うん」と笑う。なので、俺はジェムを見た。


「おいおい、いいのか? これで?」


「いいんじゃないか? キムがそれでいいなら」


「ってか、他人事だな。お前はそれでいいのかよ」


 俺が言うとジェムは「かまわないさ」と笑う。


「俺もお前は面白いと思うし、お嬢様じゃないが、からかう友達ができてうれしい」


「はぁ? 正気か?」


「正気だ」


 ジェムがそう言うと一度キムを見て、それからコホンと咳払いした。


「ここだけの話だが、ブラックドッグ家はかたむいている。メイドはキム1人だし、従者も俺だけだ。だから、お前と一緒に3人で立て直す」


「立て直す?」


 俺が聞くとジェムは「そうだ」とうなずいて、キムが「楽しそうね」と笑う。


「まずはお前は狩りを頑張れ、進化してゴブリン、さらにはゴブリンの上位種ベラトールになってもらう」


「ベラトール……」


「そうだ。そして、お嬢様にはウルフの上位種であるエクィテスをテイムしてもらう。これはお嬢様が学園に入るために絶対条件だ」


「でもさ、なんでそこまで学園にこだわるんだ。武力が必要な学園なんてアビーには向かないだろ?」


「ご友人を作ってもらうためだ。この先、ブラックドッグ家を立て直すためにはどうしても『上位貴族とご学友』というアドバンテージがほしい」


「なるほどな、それは奥様も同じ考えなんだな」


「そうだ」


「でも、奥様がお茶会とか行って友達作ればいいんじゃねぇのか?」


「お前なぁ、アホか?」


 俺が「うん?」と聞くと、ジェムが「よく考えろよ」と言う。


「ブラックドッグ家はかたむいているんだ、そんな家の奥様を誰がお茶会に呼ぶ?」


「あぁ、そうか」


「しかも仮に呼んでもらっても、奥様には着飾る最新のドレスがない。しかも、お土産もお土産話もない。その点お嬢様はそんなことを心配する必要はない」


「そうか、学園は制服なのか」


「そうだ。しかもお土産もお土産話もいらない」


 確かにそう考えると、友達を作るなら学園が簡単な気もする。


「だけど、そんな簡単にいくのか? 学生っていろいろあるだろ? アビーがいじめられないか心配だよ」


「そのためのモフモフだろ?」


「えっ?」


 俺が驚くとジェムは「なにを驚いてんだ」と鼻で笑う。


「学園は剣士や魔法使いばかりでテイマーはあまりいない。いてもテイムしているのは小型の竜族とか、蛇族とか、そんなのばかりだ」


「だからってモフモフで友達ができるのか?」


「できる!」


「いやいや、どっから来るんだ、その自信は?」


 俺が聞くとジェムは「モフモフこそ正義だ!」と俺に指を突きつけた。


「どこの言葉だよ、それを言うなら『かわいい』だろ?」


「ふん、お嬢様はかわいい、そこにモフモフが合わされば怖いものなどない」


「いや、俺はお前のその根拠のない自信が怖いよ」


 俺がそう言ってキムを見ると、キムは「うんうん」とうなずいている。


「あのさ、キムはどっちにうなずいてんだ?」


「うん? 面白そうな方」


「あのな、大丈夫か? いろいろと」


「大丈夫だよ」


 ケロッとした顔でキムが言うので、余計に不安になって、俺は頭を抱えた。


「大丈夫だ。大船に乗ったつもりで俺にまかせろ」


「どう考えても泥舟だよな? お前は見通しが甘すぎるし、キムは基本的に面白ければなんでもいいし、破滅する未来しかみえん」


「だが、お前には拒否権はないぞ」


 ジェムがそう言うとキムも「そうだよ」と笑う。


「俺たちが誰かにしゃべった時点でお前は破滅だ」


「おい!」


 俺は身を乗り出して「しゃべったりしないよな?」と聞く。


「ふん、お前次第だな」


「いやいや、俺たちはさ、友達じゃないか」


「そうか、じゃあ、友達の計画に乗れ!」


「おどしか?」


「いや、お願いだ」


「いやいや、おどしだよな?」


「いやいやいや、お願いだろ?」


 不敵に笑うジェムに俺は「わかった」と肩を落とす。


「面白くなりそうだな」


「そうだね」


 2人の悪魔の呟きを聞きながら「なぜこうなった」と俺は頭を抱えた。

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