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20 二人きりの告別式


卒業後の教室、離任式。

空っぽの机は規則正しく並べられ、黒板は別れの文字で飽和している。

これでもう終わりのその光景を感慨深く眺める。


「これでもう本当に最後だね」

「うん」


包帯を身に纏わない無月が隣で伸びをする。いい思い出なんてないまま卒業するのだと思っていたけど、3年生になってから、無月と出会ってからは楽しい事だらけだった。つらい事もいい思い出として美化されてしまうくらいに、無月の存在は偉大だ。伸びを終えた無月がおもむろに私に聞く。


「出会った時のこと、覚えてる?」

「うん、告別式のらくがきを一緒に消してくれた」

「ふふ。今日こそ告別式なのにね」

「誰の?」

「今までの私達の。春海も私も、これから新しい自分になれるから」


そうか。絶望ばかりだった私達にも、新しい日々がやってくる。これからは、新しい環境で生きていく事ができる。


「春は季節の始まり。海は生命の始まり。新月は満ち欠けの始まり。私達は始まりそのものなんだよ」


そう言いながら、無月は微笑む。春海。無月。私達はいつだって、どこでだって、始めることができる。無月は窓枠に手をかけて、窓の向こうを見つめて言う。


「ねえ、こんな世界だけど、生きていたいと思わない?」


振り返った無月は満面の笑みを浮かべていた。


「うん、思う。生きていこうね」


そう言って、無月に手を差し出す。優しく手を取られて、二人で教室の外へと駆け出した。


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