13 君の秘密のロンドを
「よかった。間に合って。とりあえずこっちにおいで」
そう言って微笑む。美しい。まるで人間ではないかのように。気をつけてと言われながら柵を越え、促されるままその場に二人で座った。彼女は同じ制服を身に纏っているのに、私はその姿を学校で見たことがないような気がした。
「あの、あなたは……?」
「私は氷雨 天。あなたの隣のクラスにいるよ。それより春海ちゃん、今死のうとしてたでしょ」
図星だ。けれど屋上の柵を越えて立っている時点で、そう思われるのは当然だった。黙って頷くと、氷雨さんはゆっくり話し出す。
「春海ちゃん、死なない方がいいよ。何故かというと、」
私の痛みも知らず、無責任に生きることを強要されるのかと半ば腹を立てながら、耳を傾けていた。しかし、一呼吸おいて発された言葉達に私は驚愕した。
「無月ちゃんが、春海ちゃんが死なない未来の為に何度もこの世界をループしてるから」
「無月が……ループしてる……?」
「そう。春海ちゃんがこうやって自分から死を選ぶ度に、無月ちゃんは過去に戻ってすべてを春からやり直している」
意味が分からない。けれど、何故かそれを世迷い言だと一蹴できない私も居た。否定できないのだ。まるで、脳が理解を拒んでいるかのようで。
「急に言われたから脳に情報が定着しないのも無理はないよ。でもこれが真実なんだ。どうか受け入れてほしい」
信じられない。無月が今まで、私の為に何度もループしているなんて。地面を見つめたまま、動けなくなった私に氷雨さんは優しく声をかける。
「無月ちゃん、包帯まみれでしょ。あれは時間遡行の代償で、時を遡る度に傷を負ってるからなんだ。会って聞いてみるといい。きっとすべて教えてくれるよ」
何故だろう。何故だかそれを、前から知っていた気がする。でも一番不思議なのは、氷雨さんが何故この事を知っているかだ。
「……氷雨さん、は……なんでそんな事を知ってるんですか」
「天ちゃんでいいよ。そうだね……無月ちゃんが、こっそり教えてくれたからかな」
「無月が……」
「うん。それより早く行きな。無月ちゃんがきっと、美術室で待ってるよ」
手を引かれ立ち上がる。そうだ、無月に冷たくあたってしまった事を謝らなければ。そして本当のことを聞かなければ。天ちゃんにありがとうと告げて、急いで屋内に戻る。天ちゃんは、優しい笑顔で手を振っていた。




