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14 決意を


「無月!」


「春海……」


美術室に行くと、祈るように手を合わせながら座っている無月がいた。私に気づいた無月は、飛びつくように私を抱きしめた。


「春海、ひどいよ。ばいばいなんて言って、嘘までついて。何かあったんでしょ。あったんなら、私に言ってよ……全部言ってよ」


喋る言葉がどんどん震えた涙声に変わっていく。無月はどこまでも優しいなと思う。


「ごめんね、無月。勝手に一人で抱え込んで突き放してしまって。ごめんね……」


そう言って、抱きしめる手に力を込める。無月の体温を感じながら優しく背を叩いて、泣きじゃくる声をしばらく聞いていた。落ち着いてから、大事な話があると切り出して、二人で椅子に腰掛けた。


「大事な話って何……?」

「うん……無月、ループしてるって本当?」


言った途端、無月は目を真ん丸にして黙り込む。唐突すぎたかと思ったが、その表情はなんでそれを知っているんだという驚き由来のものに見えた。長い沈黙の後、無月が口を開く。


「……そうだよ」


「やっぱりそうなんだ……今までの事、教えてほしいな」


あからさまに緊張しながら、無月は言葉を選ぶように話し出した。


「私、ここに転校してすぐ、いじめられるようになったの。それを春海が救ってくれた。春海は包帯を巻いていて傷だらけで、輝いて見えた。それから春海は私の太陽になった」


「春海はいろんな事を私に教えてくれた。夜空に包まれても決して孤独ではないこと。学校をさぼって行く海はもっときらめきを放つこと。咲き誇る大輪の花々よりも、愛しい人の横顔がより眩しく美しいこと」


「でも、そんな太陽みたいな春海は卒業式の日、屋上から飛び降りて死んでしまった」


「その時、柚綺っていう女の子から、時を戻す呪文を教えてもらったの。冗談だと思って唱えたら本当に時が戻って、私は海にいた」


「ループすると、4月1日に絶対戻るようになってる。だから私はまた3年生をやり直す事になった。そうして同じようにまたここに転校した時、包帯を巻いていない春海がいた」


「春海が傷だらけだった最初の世界では私がいじめられていた。なのに、繰り返す世界では何故か必ず春海がいじめられて、結果死んでしまう。いろんなやり方を試したけど、どうしてもそうなってしまう」


「繰り返すうちに、あの時の春海みたいに傷だらけになっていった。時が戻ると、必ずどこかしら傷を負ってしまうみたいなの。だから、もしかしたらあの包帯ばかりの春海は、私みたいに繰り返していたのかもしれない」


これが全容らしい。信じられなかったというか信じることを拒んでいたけれど、無月本人に言われると受け入れられた。


「なんで……なんで春海がループの事を知ってるの……?」

「隣のクラスの氷雨天っていう人に聞いたの。無月が話してくれたって……」

「……誰?そんな人知らないし、私はこの事を誰にも言ってない」

「え……?」


じゃあなんで氷雨さんはこの事を知っていたのか。私達は氷雨さんの事を知らなかったのに、氷雨さんは私達を知っていた。なんで……


「……今度、聞きに行ってみる。とりあえず、春海が生きていてくれてよかった。今日は遅いから、もう帰ろう」


無月が席から立ち上がり、私に手を差し出す。無月の為にも生きようと決意して、その日は無月と手を繋いで帰った。


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