リバイヴ・オブ・ディスピア 断罪
感想いっぱいありがとう! いろいろと参考にさせてもらいましたし、いくつかは本編で採用したのもあります! 中には私と同じことを考えてくださっている方もいて、思わず「分かるww」とPCの前で一人笑っていました。
それでは、本編どうぞッ!
「へいへーい、ピッチャービビってるー?」
直接的な煽りを入れる双剣使いの男、ヤマト。
「あーあ、お前さんも馬鹿なことしちまったなァ。こいつらを敵に回すなんてよぉ」
同情的な視線をアザミナに向ける赤髪の魔法使い、ヴァーミリオン
「はーっはっはっはっはッ! 愚かな愚民よ! さぁ、我が漆黒の邪炎に焼かれる覚悟は済んだかッ!」
厨二的ハイテンションな漆黒ローブに眼帯を付けた少女、黒炎。
「ああ、神よ。この哀れな子羊に、できれば厳しい神罰を与えたまえ」
天に向かって祈りを捧げ、なんかとんでもないことを願っている司祭の男、カトリック。
「ねぇ、ブン屋。どうして私が悪役令嬢風の高笑いをしなければいけなかったのかしら? 納得いく説明を求めるわ」
アザミナそっちのけでアウラに文句を言っている金髪碧眼の少女、ネロ。
「いやぁ、命知らずにも程があるよなぁ!」
「全くだぜ! あの神官に喧嘩売るとか、どんな自殺志望者だよ!」
「ある意味勇敢ってことじゃないっスか? というわけで、そんな勇者なアザミナさんに拍手っスー」
「「ぱちぱちー」」
ふざけたやり取りをするノリのいい三人、ヒビキ、マキノ、サンジョウ。
「あ、アンタたち……掲示板のッ!」
「またもやいぐざくとりー! 大正解だよアザミナ。ここにいるメンバーは、みーんなリュー君の掲示板の住人さ!」
アザミナの言葉に、バッと両手を大きく広げたアウラが、楽しそうに言う。だが、アザミナは気づいていしまった。見る限りいつも通りのふざけたような笑みを浮かべているアウラだが、アザミナを見る瞬間の瞳は、まるで崖の上から奈落の底を覗き込んでいるかのような、深淵の闇を彷彿とさせる暗さが宿っていた。
怒っている。アウラは、アザミナがやったことに対して決して表に出さないが、冷たく暗い怒りを抱いてるのだ。そのことに気づいてしまったアザミナは、「ヒィ!?」と短く悲鳴を漏らした。
「で、あの神官ヤローに対するお前の仕打ちを見かねて、集まったってわけだ。俺らのもてなしは楽しんでもらえたか?」
「ブン屋発案の嫌がらせ。『迫りくる笑い声』だ。……想像しただけで恐ろしい嫌がらせだが、お前の場合は自業自得だな。ブン屋の怒りを買うとか、普通はしねぇだろ」
「ふん、それが分からぬからこ奴は愚民なのだよ。さぁ、疾く断罪を始めるのだ。今宵の黒炎は血に飢えておるぞ」
「まだ昼間だけどね。というか、黒炎さんって女の子だったんだ。知らなかったなぁ。……あと、マジで中二病だったんだ」
「カトリックが神官職だったのも意外だけどね。というか、リューの掲示板に神官職のプレイヤーがいるのが不思議でしょうがないわ」
「そこは、ほら。自分が普通の神官職だからこそ、リューのプレイが面白く見えるというか……」
「どうでもいいが、コイツどうすんの? 集められて追っかけさせられただけで、その後の計画をなんにも聞いてないんだけど?」
「デストロイなの? デストロっちゃうの? 俺は一向に構わんがな」
「いやぁ、デストロっちゃうのはあれっスから……トーチャるっスか?」
「トーチャる? ……どういう意味?」
「Tortureっスよ」
「「わぁお、おっかねぇ」」
口々に好き勝手言いながら、ヤマト達はゆっくりと包囲を狭めてくる。アザミナはへたり込んだまま逃げようとするが、完璧に囲まれてしまっているので、それもかなわない。
そんなアザミナにできることは、ほとんど残っていなかった。この場ですべての罪を認めて謝るか、それとも……。
「ふ……ふざけないで!」
アザミナの選択した行動は、反抗だった。
「アンタたちには関係ないことでしょう!? これは私を散々虚仮にしやがったリューへの復讐なの! あの悪魔に目にものを見せてやるのよッ! 何の権利があってアンタたちはこの件に介入してくるのよ! そうよ、私の復讐は正当な権利なのよ! それを邪魔しようたって……ッ」
怒りをぶつける様に、己の思い通りにいかない事への不満を喚き散らすアザミナ。まるで子供の癇癪のような彼女の言い分に、銀色が動いた。
ザンッ! という鋭い斬撃音。横薙ぎの斬閃はアザミナの顔すれすれをかすめるような軌道で放たれた。薄皮一枚をぎりぎり切るか切らないかの位置で放たれたそれに、アザミナは顔を青くし、パクパクと音にならない言葉を吐き出す。
「クスクスクス、いやぁ、本当に―――――――そろそろ黙れよ、三下」
斬撃を放った張本人―――ナナホシは、朗らかで優し気な笑みを消し、冷徹な無表情を浮かべ、アザミナを視線で射抜いた。
「お前のような人間が、リューさんを……ボクの尊敬する人を貶すな。あの人の足元にも……いや、影を見ることすらできないようなお前が。大体、あの人を悪魔だと? その程度と一緒にするな。リューさんなら、悪魔なんて笑顔で粉砕して、そのまま従えてしまうに決まってる」
「「「「「それな」」」」」
ナナホシの言葉に、一斉に賛成の声が異口同音に上がった。安心と安定の信頼率である。リューが聞いたら遠い目をするに違いない。
だが、その言葉は、アザミナの怒りを再燃させてしまう。
「……わ、私に向かって、三下ですって……! リューの影も見ることすらできない……!? お前も私を馬鹿にするのか……! あいつらみたいに……! ふざけ……ッ!!?」
ズドンッ! 今度は棘付きの球体がアザミナの近くの地面にめり込んだ。鉄球の半分以上が地面に埋まっていることから、どれほどの威力が込められていたのかがよく分かる。アザミナの顔色が、今度は蒼白になる。
「うふふ~、喋らないでください~。アザミナさん、貴女の発言はぁ~…………とっても、不愉快です~」
モーニングスターの柄を振り下ろした状態でも、変わらぬほわぁ~っとした笑みを浮かべるイスカ。だが、その身から放たれる怒りによる威圧感は、『精神感覚』の機能を存分に発揮し、アザミナの精神を蝕んでいく。
「それに~、ナナ君は貴女を馬鹿にしているわけではないですよ~。ただ~、事実を言っているだけです~」
イスカの辛辣な言葉に何か言い返そうとするアザミナ。だが、イスカの威圧がそれを許さない。言葉も、身動きも、今のアザミナに出来る事など何もなかった。
「さっ、アザミナも今の自分の立場がよぉく分かったみたいだね」
武器を構える二人の間から、アウラがアザミナに歩み寄る。その歩調は酷くゆっくりで、草を踏みしめるざっ、ざっ、という音がやけに耳に響いた。
そして、へたり込むアザミナの前に膝をついたアウラは、アザミナの頭を掴み、ぐいっと上を向かせた。
アザミナとアウラの視線がぶつかる。恐怖に染まった瞳に移る、光彩の消えた単色の瞳。アザミナの口から「ぁ……」という声が漏れた。
「これで二度目だね、アザミナ?」
「あぅ……あ……」
「ボクがさ、お気に入りの子に手を出されるのが死ぬほど嫌いなこと、君は知ってるよね?」
「う……あぁ……」
「それなのにも関わらず、君はリューくんに手を出した。一度目は、あのくらいで許してあげようと思ったよ? あれでやめて置けばよかったのにねぇ……ほんと、バカなことをしたねぇ?」
「…………」
「仏の顔も三度、って言うけどさ。ボクは仏様じゃないからねー。だから……」
アウラの視線が、スッと細めら、アザミナとの顔の距離がぎりぎりまで狭まった。
「――――――――許さない」
それは、酷く平坦な声で告げられた。
「絶対に許さない。何があっても許さない。謝ろうと、命乞いしようと、泣きわめこうと、お前のことは許さない。ああ、本当に怒れるね。お前如きが何リューくんの手を煩わせてるんだよ。愚か? そんなレベルじゃないよ、お前。ゴミ扱いするのがゴミに失礼なレベルだ。………ここがゲームの中でよかったね。もし現実なら……ボク、殺っちゃってたかもしれないから」
「あ、あぁ……いやぁ……」
淡々とした口調。だが、最後の一言には、凍え死にそうなほど冷たい殺意が込められていた。
アザミナは、狂気すら感じられるアウラの怒りに、完全におびえ切っていた。アウラに掴まれて動かせない顔をいやいやするように横にふろうとする。
「さぁて、ここからは君の処罰を決めようか。皆、何が良いと思う?」
アウラの言葉に、ヤマト達が待ってましたとでも言うように笑みを深めた。
「おっし! じゃあ俺からだな! 取り合えず、ここにいる全員でフルボッコってどうよ?」
「それじゃただのリンチだろうが……。そうだな、ここに怪しげな薬屋で買った怪しげな薬があってな。名前を[滅毛の魔薬]って言うんだが……」
「こ奴また髪の話しておるな。というか、処罰など我一人で十分であろう? わが漆黒の炎でその罪ごと焼き滅ぼしてくれよう! 火あぶりの刑だなッ!」
「そうですねぇ……。ああ、回復魔法で延々と傷を治しながらの拷問という手がありますね」
「…………ムチ打ち、とかかしら? 蝋燭責め?」
「消えないインクで顔に『私は神官に喧嘩を売った命知らずです』って書こうぜ! ついでに額に肉って書いてやんよ」
「……ここは無難に、コイツが今までやってきたことを詳しくまとめて、掲示板に大放出でいいんじゃないか? 大炎上するぞ、きっと」
「よし、ここは手っ取り早く、神官と模擬戦させるっス。肉体と精神、両方から虐め抜かれるといいっスよ」
「いえ、リューさんの手を煩わせるわけにはいきません。その役目、ボクが引き受けます! 細切れにしてやりますよ!」
「うふふ~…………部位破壊って、どのくらいまで潰せるのか、気になってたんですよね~。…………ミンチくらいなら、できるんでしょうか?」
彼らが楽しそうに話す内容を聞いたアザミナは、もう限界だった。ボロボロと涙を流し、小さく「ごめんなさい……ごめんなさい……」と呟いている。
しかし、アウラは発言を撤回する気などまるでなかった。アザミナが改心しようと、そんなことは関係ない。ただ、アウラ自身が許せないから、許す気が無いから、これを行っているのだ。
アザミナへの処罰を決める会議は、どんどん白熱していく。アザミナは、恐れでどうにかなりそうだった。怖いのは、処罰の内容ではなく、それを相談している彼らが皆笑顔だということ。まるで、どこぞの神官が戦いを楽しんでいるときのように、楽し気な笑みを浮かべ、残酷な会議は続いていく。
やがて、処罰の内容が決まったのか、ヤマトが「よーし!」と声を上げた。アザミナの肩がビクッ、と跳ねる。
「やっと決まったぜ。じゃあ、コイツの処罰は……」
「ちょっと待って」
喜々として会議の決定を言おうとしたヤマトの言葉を、遮る者がいた。この場では初めて聞こえてきたその声に、全員がそちらを振り向いた。
そこにいたのは、ここにいなかった『四大リュー狂い』最後の一人――――――サファイア。
予想外の人物の登場に、その場に少なくない動揺が走る。その視線を一身に受け、それでも堂々と佇むその姿は、彼女がトッププレイヤーの一員であることを自然と納得させるだけの貫禄に満ちていた。
「え……? サファイアちゃん? どうしてここに……?」
アウラが呆然とした表情で問いかける。このアザミナを断罪する場は、サファイアには伝えずに来たのだ。トップギルドであり、何かと忙しいだろうサファイアを気遣ったのだが……。
「アウラ、水臭い。リュー君を陥れようとしたそいつを許せないのはわたしも一緒。……そして、リュー君に関することでわたしに隠し事ができると思わないほうがいい。『リュー君せんさー』の感度は今日も良好」
「くっ……! さすがは幼馴染。ボクよりも何歩も先にいるね……!」
「ん。当たり前」
悔しそうに呻くアウラに、えっへんと胸を張るサファイア。いきなり始まったやり取りに、周りはついていけていない。
なんとか話を再開しようと、ヤマトが遠慮がちにサファイアに声をかける。
「……えっと、『魔導蒼姫』サン? ちょっと待ったって、何のことだ?」
「ん、勿論処罰のこと。確かにソレがしたことは許せない。許すつもりもない。……けど、それでそいつをぼこぼこにしたり、酷い目に遭わせて、もしそれがリュー君に知られたら……きっと、リュー君は嫌がる」
その言葉に、アウラも、ヤマト達もハッとした表情を浮かべた。
「わたしは、リュー君が嫌がることはしたくない。だから、止めに来た」
アウラは、サファイアの言ったことを聞き、すぐにそれが正しいことを悟った。顔を伏せてぐっと押し黙り……数秒後、顔を上げサファイアを見た。
「…………確かに、リューくんが嫌がることをしたら、本末転倒だね。幼馴染のサファイアちゃんが言うんだし、間違いないんだろうけど……けど、じゃあコイツはどうするの? このまま無罪放免…………という訳じゃないんだ」
アウラは、聞かずともサファイアの瞳の奥に宿った静かな怒りの炎を感じ取って、言葉を止めた。それにうなずいたサファイアは、悪戯っぽい笑みを浮かべて、人差し指をピンッと立てた。
「さて、問題です」
その場にいる全員が、きょとんとした顔になった。それを気にせず、サファイアは言葉を続ける。
「そこのアザミナが今回、リュー君に酷いことをしたのは、何故でしょう?」
まるで教師が生徒に向かって問いかけるかのような聞き方に皆が困惑する中、真っ先に動いたのは、リアル学生であるナナホシだった。「はいっ!」という元気のよい返事と共に手をピンッと上げると、サファイアは「ナナホシ君」とこれまた教師のように指名した。
「それは、コイツがリューさんのことを嫌いで、憎んでいるからです!」
「Exactly、大正解です」
妙にネイティブな発音でナナホシの言葉を肯定したサファイアは、もう一度「問題です」と人差し指を立てる。
「では、どうすれば今回の事件は起きなかったでしょう」
その問いに手を上げたのは、イスカだった。「は~い」という間延びした返事と共に、スッと挙手する。
「はい、ではイスカ君」
「はい~、アザミナが、神官さんを嫌いじゃなかったら、起きなかったと思います~」
「正解です。…………要するに、アザミナがリュー君を嫌いなままだと、どれだけ処罰をしてもまた今回のようなことをしでかすかもしれない」
「……じゃあ、どうするんだい?」
少しもったいぶったような言い方をするサファイアに、結論をせかすアウラ。
「どうすればいいか。それは簡単なこと。――――――――――アザミナを、リュー君の信者に改造する」
「「「「「……………………え?」」」」」
「わけがわからないよ」という顔をするアウラたちを無視して、サファイアは言葉をつづけた。
「リュー君が嫌いだからこんなことを起こしたなら、その認識をぶち殺せばいい。多少無理矢理でも、やったもん勝ち。たとえば…………リュー君の動画、ノンストップ10時間耐久、とか?」
「「「「「……………………なるほど!」」」」」
なんとなく、考えてみたら、いい案なのかもしれない。サファイアのあまりに堂々とした言葉に、そんな感じのことを思ってしまったアウラたち。アザミナが涙目で首を振っているが、誰も見ていない。
「その手があったね……! 罰を与えることしか考えてなかったけど……サファイアちゃんの案は、最高かもしれない!」
「ええ、これ以上リューさんに害を与えないことを考えれば、最善策と言っても過言じゃありませんよ!」
「あらあら~、神官さんのファンが増えるのは良いことですね~」
「……わたしは、ギルドの仕事とかがあって時間があまりない。アウラ、お願いできる?」
「うん! まっかせてよ! ちゃんと責任もって、ボクがアザミナをリューくん信者にして見せる!」
「ん、期待してる」
そう言うと、サファイアが踵を返して森の奥に消えていった。
その場に残った全員は、グリン、とアザミナに視線を向けると、口元に三日月のような笑みを浮かべた。
「さぁ、アザミナ? ……覚悟してね?」
「クスクスクス、すぐに貴女も分かりますよ、リューさんのすばらしさがね」
「うふふ~、楽しみですね~」
「なーんか、ソッチの方がおもしろそうじゃね? やったろうぜ!」
「くっくっく……コイツは傑作だなぁ、オイ」
「なんだ、我の炎の出番はなしか? ……だが、まぁ、魅力的な話ではあるなぁ」
「おお……これも神のお導きなのでしょうか……?」
「まって。ねぇ待って! なんかおかしくないかしら!?」
「ヒャッハー! 楽しい楽しい洗脳の時間だァー!」
「リュー一色に染めてやんぜー!」
「……まっ、これが年貢の納め時ってやつっスかね?」
アウラ、ナナホシ、イスカ、ヤマト、ヴァーミリオン、黒炎、カトリック、ネロ、ヒビキ、マキノ、サンジョウ。
リューの掲示板に生息する十一人は、アザミナを取り囲む。アザミナの顔が引き攣り、フルフルと小刻みに顔を横に振り、後ずさりしようとする。すぐにアウラから放たれたロープで縛られ、身動きが取れなくなるが。
十一人は、そろってニヤニヤと笑いながら、アザミナとの距離をじわじわと詰めていった。
「あっ……いや……やめっ………………………………い、イヤァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!???」
森の中に、アザミナの悲鳴が響き渡った。
その後、彼女がどんな目に遭い、どんな仕打ちを受けたのかは、分からないし、あまり分かりたいとも思わない。
彼女がどうなったのか。詳しいことを明記することは避けるが、ただ一つだけ情報を開示しよう。
―――――『四大リュー狂い』は、その時から『五大リュー狂い』になった。
感想、評価、ブックマを付けてくださった方々、本当にありがとうございました!
そういえば、閑話入れてこれで二百話かぁ……なんかしましょうかね? なんだろう、キャラ人気投票とか?