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ソロ神官のVRMMO冒険記 ~どこから見ても狂戦士です本当にありがとうございました~  作者: 原初
四章 初イベントと夏休みの終わり編

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リバイヴ・オブ・ディスピア 追跡

さぁ、お前の罪を数えろ……!

「はぁ……はぁ……、ま、まだ追ってきてるの!?」



 息を切らせ、彼女は森の中を走る。今は姿の見えぬ追跡者たちの手から逃れるために、全速力で視界も足場も悪い森の中を駆けていく。


 その女は、全身を隠すようなローブを羽織っており、フードを深くかぶっているので顔を確認することができないだろう。はた目には相当怪しい。まるで、顔を見られることを嫌がっているかのようだ。


 森の中は薄暗く、女が走る音以外にも、ガサガサという何かが動く音、バサバサッ、と鳥が飛び立つ音、キーキーという何かの鳴き声など、様々な音が聞こえてくる。女の耳に届くそれらは、彼女の焦りを加速させ、恐怖心を掻き立てる。時折木々の隙間から覗く影は、まるで女を狙っているようで、彼女にそれを錯覚させる。


 だが、彼女がもっとも恐怖を感じているモノに、そのどれもが当てはまらない。女の恐怖心や怯えの原因となっているモノ。それは……。



「アハハッ! アハハハハハハハハハハッ!」


「うふふふふ~」


「クスクスクスクス」



 女の耳に、三種の笑い声が届く。それは、笑っているにも関わらず、聞いているだけで怖気が走り、背筋を冷たいモノが流れていくような声。



「ヒィ!? き、来たの!?」



 それに反応する女。だが、どこを見ても姿はない。しかし、先程から断続的に聞こえてくるこの笑い声の主は、次第に女との距離を詰めているのか、どんどん大きく聞こえるようになってきている。

 

 姿は見えず、されど確実に接近してくる『ナニカ』。女は笑い声が聞こえるたびに肩を跳ねさせ、おびえたように視線を周囲に巡らせる。必死になって声の主を探そうとするが、何度やっても見つからない。



「ふぅーっはっはっはっはっはっはっは!」


「ギャハハハハハハハハッ!」


「あはっ、あはははははははははっ!」


「おーっほっほっほっほっほっほっほ!」


「wwwwwwwwwwwww」



 そうしているうちに、笑い声が増えていく。心底楽しそうな笑い、どこか無理矢理な笑い、狂気を滲ませた哄笑、ヤケクソ感のある高笑い、もう何が何だかよく分からないが馬鹿にされていることだけは分かる笑い声(?)。



「ヒィイイ!? な、何なのよ何なのよ! 何がどうなっているのよぉおおおおおおお!!?」


 

 笑い声は、走る女を包囲するかのようにありとあらゆる方向から聞こえてくる。鼓膜を全方位から虐め抜かれ、脳髄を侵されるような感触は、首筋を虫が這いずり回る時のそれによく似ていた。


 女は走る。疲労で休めたくなる足を酷使して。


 女は逃げる。迫りくる恐怖からうずくまりたくなるのを我慢して。


 女は叫ぶ。この悪夢のような状態が早く終わってくれと。


 しかし、彼女にとっての本当の地獄は、ここからだった。


 森の中を走り続けていた女は、やがて木々が無くなり広場のようになっている場所にたどり着く。視界が開けたここなら、周りから迫ってくる相手がすぐに分かると、広場の中央に立ちあたりを警戒する。笑い声は、もうかなり近くまで来ていた。


 声だけが聞こえ、姿は見えず。いつ、どこから現れるか分からない。その『未知』は強い恐怖となって女を襲う。重ね重ねの恐怖に、女はとうとうこらえきれなくなったのか、恐れを怒りに転換しまき散らすようにして叫んだ。


 

「……ッ! 何なのあなた達ッ! か、隠れてないで出てきなさいよ!」 



 そして、その叫びが森に響き渡った瞬間―――――ぴたり、と笑い声がやんだ。


 訪れるのは静寂。不自然なほどの静寂。気が付けば、自然が経てる音や動物の鳴き声までが消えている。まるで、この広場の中だけ音の届く手段が消えてしまったかのようだった。


 いきなり音のない空間に放り出されてしまった女は、その異常な事態に精神を追いつめられる。もう彼女の心は度重なる恐怖苦痛でボロボロだった。膝はがくがくと笑っており、身体はいつまでも震えている。静寂の中で、彼女が歯をカチカチと嚙合わせる音だけが鮮明に響く。


 もうへたり込んでしまいたい。目と耳をふさぎ、うずくまってすべてを拒絶してしまいたい。女がそのような湧きあがる欲求に負けそうになった、その時だった。



「きゃっ!?」



 ゴウッ! と何の予兆もなしに烈風が吹き荒れる。その場の全てを吹き飛ばしてしまいそうな風に、女は目を開けていることができなかった。風は女の来ていたローブを激しくはためかせ、彼女の顔を隠していたフードをはぎ取った。


 フードの下から出てきたのは……鈍色の髪と、漆黒の瞳に、美人と称しても構わない顔立ちをした女。


 彼女の名前は、アザミナ。前にリューに強引な取引を持ち掛け、それが原因ですべてを失った元【クラフト】の防具職人。


 そして、リューに挑もうとしていた【ライトイーター】を焚き付け、[悪魔の封魔薬]を渡した張本人でもあった。


 しばらくして吹き荒れていた風がやみ、アザミナが閉じていた目を開く……と、同時に「ひっ」と短く悲鳴を漏らした。


 恐怖に揺れるアザミナの視界には、いつの間にかつい先ほどまではいなかったモノが映りこんでいた。


 それは、アザミナを取り囲むようにして立つ者たち。性別も装備もまちまちなプレイヤーたちだ。一見、何の接点もないかのように思われる彼らだが、一つだけ全員に共通していることがあった。


 それは、彼らの表情。彼らは一人残らず笑みを浮かべていた。可笑しそうに笑う者、あきれたように笑う者、どこか作ったような笑みを浮かべる者、表情は動かさずに笑い声だけを上げている者。違いはあれど全員が笑っていた。


 アザミナは直感的に悟った。彼らが自分を笑いながら追いかけてきた者だと。それに気が付いたアザミナはもともと鋭い目つきをさらに凶悪なモノにして、彼らを睨み突ける。



「な、何なのよアンタたちッ! 私に何をしようっていうのッ!?」



 そう叫ぶアザミナだが、彼らは答えない。ただ、いつまでも笑っているだけだ。



「な……何なのよ……アンタら……」


「クスクスクス、随分と参ってるみたいですね?」



 不気味なモノを見る視線を自分を囲む者たちに向けるアザミナに、後方から声が掛けられる。慌ててそちらに振り向いたアザミナに、にっこりとした笑みを向けるのは、銀髪ポニーテールの少女……のように見える少年。抜身の剣を持ち、可愛らしく小首をかしげる。



「あ、アンタは確か……」


「うふふふ~。ナナ君、抜け駆けはダメですよ~?」



 また、アザミナの視線から外れた場所から声が聞こえた。弾かれたようにそちらに向き直るアザミナに、穏やかな笑みを向けるのは、起伏にとんだ肢体をマーメイドドレスに包んだ、紫髪の女性。優しそうな雰囲気を漂わせているが、その手に持っているのは、金属の持ち手の先から鎖が伸び、その鎖に棘の付いた金属球が取り付けられている殴打武器……モーニングスター。



「ッ! ナナホシにイスカ……やっぱり、アンタたちは……!」


「アハハハハハッ! いぐざくとりーいぐざくとりー! その通りだよ、アザミナ」



 最後に聞こえた声は、アザミナに聞き覚えのある声だった。それは、一度は彼女の終わりを告げた声であり、彼女が二番目に忌々しく思っている声でもあった。


 ゆっくりとアザミナが声の方へ振り返る。それと同時にシャッター音が着られ、フラッシュがアザミナの目を焼いた。



「眩しッ……!」


「アハハッ、いい表情をするね。アザミナ?」



 閃光にくらんだアザミナの視界が回復し、真っ先に目に入り込んできたのは、カメラを構えた一人の少女。漆黒の髪をショートカットにし、赤の瞳はニヤニヤと細められている。ノースリーブのシャツにショートパンツ、二―ソックスという服装は前と変わらないが、今は頭にベレー帽をかぶっていた。


 彼女――――アウラの姿を視認したアザミナは、表情を憤怒に変えて、叫んだ。



「……ブン屋ぁ!」


「さぁ、断罪の時間だよ。アザミナ?」

さて、アザミナさんへのペナルティは何にしようかなぁー。ちなみに皆さんはどんなのがええと思います?



感想、評価、ブックマを付けてくださった方々、本当にありがとうございます!

 

そして、評価者数&感想数が1000を超えました。やったー! 評価も45000越えと、嬉しい限りでございます。


皆さま、今後ともソロ神官をよろしくお願いいたします。

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