表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ソロ神官のVRMMO冒険記 ~どこから見ても狂戦士です本当にありがとうございました~  作者: 原初
三章 蒼の嫉妬と長い一日編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

155/250

ただ一つ、欲しいモノがある

お待たせして申し訳ございません! 更新でございます!


こんだけ更新が遅れたのは、テストが長く続いたせいです。本当に申し訳ない。

というわけで、もういっそ『蒼編』みたいな感じでひとまとめにした方がいいんじゃないかってくらい続いている話の最新話です。どうぞ。


あっ、それと。あとがきで少しご報告がありますので、ぜひとも最後までお読みください。

「じゃ、あと三十分くらいで夕飯だからな? 遅れるなよ」


「ん。わかった」



 扉越しの流にぃの声に、そう返事をしてから、わたしはたたまれた布団にもたれかかるようにして、床に座った。流にぃが二日に一回は干してくれている布団は、とってもふかふかで、おひさまの匂いがした。


 閉じたカーテンの隙間から差し込んでくる夕日が、薄暗い部屋の中を照らす。オレンジ色の光の筋をぼんやりと眺めながら、わたしは今日のことを思い返していた。


 朝から不機嫌になって、流にぃを困らせた。FEOの中でも、よく確かめもせずに流にぃをせめてしまった。そのあとは、流にぃとナナホシの訓練を見ているだけだった。珍しくゲームで一緒にいられたのに……。ちくせう。

 

 ナナホシ。流にぃに弟子入りした、中々見る目のある女……に、見える男。リアル男の娘キタコレ。……じゃなくて。

 前衛なのに、モンスターと戦うのが怖いとかいう、よく分からないヤツ。あと、掲示板で流にぃを知りファンになったとか。……そう言えば、流にぃとアッシュのデート画像を見つけた掲示板にそんなやつがいた気がする。


 ナナホシは、流にぃの『戦いが怖い? なら怖くなくなるまで戦おうか』というのうき……こほん、あたまおかし……げほん、き、厳しい訓練にもなんだかんだでついていき、たった一日で自らの弱さを克服してしまった。

 最初は、モンスターを前にして生まれたての小鹿みたいにフルフル震えてるだけだったのに、最終的にボスモンスターに向かっていけるくらいになっていた。

 

たった一日で性格すら若干変えてしまう流にぃの訓練もすごいけど、何度打ちのめされても流にぃに向かっていったナナホシも凄かった。


 今日、ナナホシは間違いなく、『成長』していた。自らの意志で、自らの殻を破って見せた。ギガントに向かっていく背中が、それを物語っていた。


 最後に、ギガントに立ち向かうナナホシの背中を見る流にぃの目は、とっても優しくて、嬉しそうで……。

 まるで、初めて立ち上がった我が子を見るような。大げさだけど、そんなイメージが浮かんでくるような視線だった。


 その視線は、ナナホシの成長に対して向けられたものだと、すぐに分かった。そして、その視線は、わたしには向けてくれたことがないモノだということも、すぐにわかった。


 ……眩しかった。成長したナナホシが。うらやましかった。流にぃに、あんな視線を向けてもらえるナナホシが。

 


 悔しかった。何も変わっていない、わたしが。




「何をやっている……、わたし……」



 不意なことから始まったこの居候生活。流にぃとの関係を変える絶好の機会……の、はずだった。


 でも、何が変わった? わたしと流にぃとの間にある感情のすれ違いは、少しでも軌道修正できているか? 


 ……全然だ。できていない。何一つ変わらず、流にぃはわたしのことを妹としか見ていない。


 今までと同じで、わたしの恋は流にぃに届いていない。


 ……どうすればいいのだろう。どうすれば、わたしは変わることができるのだろうか?


 考える。瞳を閉じて、真剣に。今まで向き合っていたようで、ただ逃げていただけの問題に、自分なりの答えを出せるように。

 

 わたしは、流にぃの特別な人になりたい。流にぃの、一番になりたい。


 けど、今のわたしはあくまで流にぃの『妹』でしかない。


 『妹』から『恋人』に。『親愛』の対象から『恋愛』の対象へ、流にぃの意識を変えるには?


 わたしからの好意は、いくらでも示している。ベッドにもぐりこんだりしたのもその一環。……まぁ、普通に怒られたけど……。

 流にぃが求めてくれるなら、何だってしてあげたいとも思っている。たぶん、裸を見られても『恥ずかしい』という感情より先に、『嬉しい』と思うはずだ。


 流にぃと、手をつなぎたい。抱きしめあいたい。ちゅーだってしたいし、それ以上のことだって……。


 自分から、そう言うことをすればいいのだろうか? ……けど、なんか違う。そうなんだけど、そうじゃない気がする。どこが、引っかかってるんだろう……?


 考える。考える。考える。


 わたしが『こうなりたい』っていう理想を、頭の中に思い浮かべる。想像して、妄想して。


 流にぃと手をつないでいるわたしの姿を。流にぃと並んで歩いている姿を。流にぃとキスをしている姿を。

 今頭の中をのぞかれたら確実に死ねると思えるような映像が次々に思いうかぶ。けど……何かが、何かが足りない。そんな風に思ってしまう。それが何なのかを、さらに考える。考える、考えて……。

 


 …………自分の中にあった、『違和感』の正体に気づいた。



 考えてみれば、簡単だった。

 今のわたしと流にぃの関係を変えたいと思っている。けど、想像の中でさえ、わたしは流にぃに『甘えて』ばかりだったのだ。

 流にぃに甘えたいという欲求。けど、その欲求は、『妹』のままでも叶ってしまう。『妹』のままでもできてしまう。

 流にぃに甘えて、それを流にぃが「しょうがないな」という顔をしながらも、甘えさせてくれる。それは、今と何も変わらない。……それじゃあ、駄目。

 それで満足してしまったら、わたしはきっと「今のままでいい」と思ってしまう。


 ゆっくりと、閉じていた瞼を持ち上げる。気が付けば、夕食の時間がもう少しまで迫っていた。時間も忘れて思考に没頭していたらしい。

 カーテンの隙間から差し込む光も、紫色が混ざり始めていた。

 窓に近づき、カーテンを開け、外の景色を見る。夕日のオレンジと夜の藍色が混ざり合う街並みがそこには広がっていた。複雑に混ざり合った二つの色は、あと少しで藍色だけになってしまうだろう。


 その光景を瞳に写しながら、わたしはようやく形をもった自らの望み。それは、



「流にぃを、支えてあげたい」



 いつも、流にぃは誰かを支えてばかりだから。



「流にぃを、助けてあげたい」



 いつも、流にぃは誰かの助けになってばかりだから。



「流にぃに、頼って貰いたい」



 いつも、頼ってばかりいるわたしだから。



「流にぃに、甘えてもらいたい」



 いつも、甘えてばかりいるわたしだから。


 

「流にぃを、守ってあげたい」



 いつも、何があっても、わたしたちを守ってくれた流にぃだから。



 わたしはたくさんのものを、流にぃからもらっている。けど、わたしから返したことは、ほとんどなかった。

 一方的に甘えるだけの感情を『恋愛』と呼ぶのはやめよう。それは違うのだと、気付けたのだから。



 ……だから、流にぃに甘えるのは、もう終わりにしよう。


 今日、ナナホシがしてみせたように。この染まっていく街並みのように、わたしも、変わっていこう。


 

 流にぃに、甘えるのは今日で終わりにしよう。そう思うと寂しいし、哀しいけど……成長、するんだ。



「けど……どうすれば、いいの?」



 ……成長、成長か。うん、何をすればいいのか、さっぱり分からない。今までやらなかったこととか、できなかったことをすればいいのかな……?


 ふと、頭に浮かんだのは、流にぃともわたしとも仲がいい、白髪の少女のすがた。


 一応ライバルではあるけど、憎むなんて到底できないいい子な彼女のことが思い返され……ふと、あることを思いついた。

 そのアイデアを反芻してみて……うん、悪くないかも。これなら、わかりやすい形で成長を示せると思う。

 

 そのあと、流にぃが夕飯だと呼びに来るまで、わたしは成長するためにやるべきことをいろいろと考えた。まぁ、今まで自分がしてこなかったことを考えるだけなんだけど……。


 考えれば考えるほど、自分がどれだけ流にぃに甘えていたのかが分かってしまい、ふかふかの布団に顔をうずめて、「う~う~」って唸ることになるのだった。








「蒼ー、飯の用意できたぞー。降りてこーい!」


「ん!」



 流にぃの呼び掛けに返事をして、部屋から出て、階段を降り、途中ですれ違った太陽が、「のわッ!? ……あれ? 般若モードじゃ、ない……?」とか言って驚くのに鳩尾エルボーを決めて沈めたら食卓へ。



「お、来たか……って、太陽はなんで廊下に転がってるんだ?」


「ん。愚か者の末路」


「………………タ、タスケテ……」


「……死にそうなんだが?」


「大丈夫。手加減はした」


「……それならいいか。おーい、太陽。復活したらちゃんと来いよ?」


「ふ、二人とも……酷い……ガクッ」



 悪は滅びた。

 


「「いただきます」」

 


 今日も今日とて美味な流にぃの夕食(今夜はカレーでした)に舌鼓を打つ。

 スプーンを動かしながら、向かい側に座る流にぃの顔を盗み見る。……気づかれて、微笑み返された。うん、心臓がヤバい。思いっきり胸に飛び込んで甘えたくなる。でも、我慢。我慢……がまん……がま……。



「あ、蒼? なんかすごいプルプルしてるけど、大丈夫か? もしかして、カレー辛かった?」


「……何でもない。ちょっと己の欲望と戦ってただけ。あと、カレーはいつも通り美味しい」


「そうか? ならいいんだ」



 そう言って、嬉しそうな笑みを浮かべる流にぃ。……かはっ(内心吐血)。うう、その眩しい笑顔は反則……。は、話を逸らさなきゃ……。



「そ、そう言えば、今日はどうしてカレーなの?」



 ……じ、自分でも苦しい話のそらし方……。けど、これ以上決意を揺るがすわけには……。



「ああ、今日はナナホシとの訓練にお前を付き合せちまっただろ? その間ほったらかしだったから、お礼とお詫びを兼ねて、お前の好きなメニューにしてやろうと思ったんだ。喜んでもらえて良かったよ」


「……ん。うれしい」



 そう、動揺せずに言うのが精一杯だった。ここで気を抜いたら、確実に顔がにやける。間違いない。まったく、流にぃはわたしをよろこばせるのがうますぎる。せっかくの決意が無駄になりそうだ。


 ……うん、だから。仕方ないよね。『甘えるのは今日まで』って決めたのはわたしなんだ。明日からは甘えないってことにしたんだし……。



 今日、最後に、滅茶苦茶甘えても許されるはず……!

感想、評価、ブックマを付けてくれた方々、本当にありがとうございます。





というわけで、ご報告。


この度、『ソロ神官のVRMMO冒険記 ~どこから見ても狂戦士です本当にありがとうございました~』が書籍化することが決定いたしました。

出版社やレーベル、発売日などの詳しい情報はまだ明かすことはできません。

書籍化作業もございますが、更新の方はできる限り遅らせないようにしたいと思っております。

皆様の応援のおかげです。本当にありがとうございます。



……さて、真面目モードはこのくらいでいいか。



書籍化だぜいやっほぅううううううううううううううううううう!!!(ガッツポーズ)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 保育されてるのから、幼馴染みに進化するのは無理じゃ無いかな……………
[一言] 良き!
[一言] エポックメイキング、やっとそこに気が付いてくれましたか、彼女は。 ここから蒼嬢の青春が始まるのですね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ