くすぐりごっこ
書籍化おめでとうコメありがとうございます!
夕食が終わり、洗い物をしたら後は風呂に入って寝るだけである。太陽なんかはまだFEOに入るんだろうけど……。今日はいろいろあったので、もう寝てしまおうかなー。
そんなことを考えながら、リビングのソファーでテレビをボーっと眺めていた。テレビを流れるのはニュース番組。
今週の天気が知りたいのだが、時間を間違えたせいでどーでもいい情報ばかりが流れてくる。政治家関係のニュースって名前が変わるだけで内容ってほとんど同じだよな。
うーん、天気はスマホで調べりゃいいか。そう思い、スマホをポチポチ……嘘だろ明後日から雨なのかよ。うーん、今年は晴れが続くから困らなかったんだけどなぁ。洗濯物減らさなくちゃ。乾燥機があるからそこまででもないけど。
「流にぃ、隣、いい?」
「ん? 別に構わんぞ」
「ん。ありがと」
声をかけてきたのは、夕食を食べ終わった後、部屋に戻っていたはずの蒼。普段ならさっさと部屋に戻ってゲームに没頭するか小説に没頭するかしてるのに。
断ってから俺の隣に腰を下ろした蒼。それは良いんだけど……なんか、近くないか? ほとんど密着するような距離なんだけど? 夜とは言え今は八月。真夏の熱帯夜というほどでもないけど、網戸にしてある窓から入ってくる風が汗ばんだ肌に心地いいってくらいの暑さだ。
「……♪」
なのにも関わらず、蒼はぴっとりと張り付くようにして俺の左側に座っている。それも、ひどく上機嫌に。今日起きてきたときとはまるで真反対な様子に、少し面食らってしまう。暑くないのだろうか? というか、俺が若干暑いんですよ。
それに、いくら相手が蒼だと言えども、こう、年頃の男女が密着するのは……ね? 誰もいないとはいえ、はしたないんじゃないかなーと思いまして……。べ、別に照れてるわけじゃないぞ?
「流にぃ、わたしは流にぃの『妹』だからセーフ」
「そう言うもんか? ……って、なんで考えてること分かったんだよ」
「わたしだから。あと、流にぃのことだから」
「うん、全然分かんねぇわ」
いつの間にか蒼は俺限定の読心術を身に着けていたらしい。恐ろしい限りだ。
そんな恐ろしい幼馴染兼妹様は、俺の肩にもたれかかるようにして、頭を預けてきた。さらり、と結ばれたサイドテールが揺れると、それに合わせて柑橘系のいい香りが蒼の方から漂ってくる。……すこし、鼓動が早くなった気がした。
「なんか、すり寄ってくる猫を相手にしている気分だ」
「むぅ、なんか複雑。でも、猫みたいで可愛いという意味?」
「……まぁ、そうとも言う、な」
「ん。ならよし。わたしは流にぃの可愛い子猫。にゃーん?」
ちょこん、とこちらを向きながら小首をかしげ、顔の近くに持ってきた手を軽く握り、猫の手を作りながらそう言う蒼。
……悔しいが、普通に可愛かった。
その悔しさを誤魔化すように、蒼の頭をぐじぐじと撫でる。「うにゃー」といいながらされるがままになる。
「むぅ、流にぃ、乱暴」
「はっはっは、何とでも言うがいいさ。というか、どうかしたのか? なんだか、やたら甘えてきてる感じがするんだが?」
ふと、思ったことを口にしてみる。
確かに蒼はよくふざけてべたべたと引っ付いてくるが……なんか今日は、いつものふざけた感じがしなかった。
何か落ち込んだことがあったりすると、この甘えモードに入るのだが……。機嫌が悪いこと、まだ引きずってるのだろうか? そんな感じではないんだが……うん、よくわからん。
俺の問いかけに、蒼はさらにぎゅっと俺に体を寄せてきた。そして、口元に小さな笑みを浮かべ、目を細める。
「……ん。ちょっと、流にぃに甘えたくなった。ダメ?」
「駄目じゃないが、随分とはっきり言うんだな?」
まだ幼かったころを思い出させるような蒼の姿に苦笑しながらそう返すと、蒼は浮かべていた笑みに少しだけ寂しそうな色を混ぜた。
「ん。だって……今日まで、だから」
「……何のことだ?」
何が今日までなのか。聞いてみても蒼は何も答えず、微笑んでみせた。しかし、俺にもたれかかっている身体は、僅かにこわばっていた。
「……まぁ、いいか」
少し気になったが、今は蒼の要望をきちんと聞いてやろう。ナナホシのことでいろいろ頑張ってくれたお礼その二ってことで。
蒼の頭に手をのせ、優しくなでる。艶やかな髪の感触を指先で楽しみながら、梳くように手を動かす。たったそれだけで、顔を綻ばせふにゃりと弛緩する蒼。
蒼はそのまま、ずるずると倒れこむようにして俺の太ももに頭をのせて来た。所謂膝枕の状態である。徹底的に甘えるつもりだな、コイツ……。
俺の太ももに乗った蒼の顔を上から見ていると、髪の隙間から蒼の耳が覗いていた。それを見た俺の心の中に、ふと悪戯心が湧き上がって来た。
頭を撫でる手を動かし、自然に蒼の耳の近くに移動。そのまま何食わぬ顔で指をうごめかせ、蒼の耳の輪郭を人差し指の腹でなでた。
サワリ。
「ひゃっ!?」
蒼の口から、可愛らしい悲鳴が漏れた。面白くなって、もう一度同じ軌道でなぞってみる。ただし、今度は触れるか触れないかくらいのソフトタッチを意識して。
サワサワ。
「ひ、ひゃぁあああああ……」
「く……くくく、ひゃぁああああ、だって。……くくく」
蒼のいじりがいのある反応を楽しんでいると、蒼はむっとした視線を向けてきた。変な声を出したのが恥ずかしかったのか、その頬は少し赤い。
「……むぅ、流にぃ、いじわる」
「はっはっは、自分からその場所に収まったんだろ?」
にやり、と笑ってやると、蒼は分かりやすく頬を膨らませた。
「……ならば、反撃。えいっ」
「ひゃんっ! お、おまっ、脇腹はやめろ!?」
「…………ひゃんって……。流にぃ、可愛い」
「可愛い言うな……ひゃぁ!? だ、だからやめ……!」
「えいっ、えいっ」
「ひゃ、や、やめっ、にゃぁ!?」
「今度は、流にぃが猫みたい。えいえいっ」
なんとも蒼の魔の手を避けようとしたが、膝枕状態では蒼から逃れることができない。
結局思う存分脇腹をつつかれることになり、終わった後には息も絶え絶えになるのだった。
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終焉世界の英雄譚の方も更新しました。




