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8.親切ごかし

きりのよさ重視で区切ってしまいましたので、今回短く次回長くなります。




「君、さっきからそうしているけどお弁当はやく食べないと、そろそろ時間じゃないか、大丈夫?」


ボケっとしていた私に、明らかに年上の男性が話しかけてきた。

それがかつきだった。


彼の声に反応し時計を見てみると、残り15分近くなっていた。

ここからならすぐ会社に戻れるが、10分前に席につきたい私には、ぎりぎりの時間だった。…しょうがない、お昼は諦めよう。

まだ半分も食べていなかったが、遅れないことのほうが重要だ。そう思って、少し溜め息を吐きつつ片付けようとするがかつきに止められてしまった。


「そんなに残っているのに、食べないと体持たないぞ。

 それに家に帰る頃には、悪くなって食べらなくなるだろうしもったいないよ」


―――それは正論だが、こちらにはこちらの事情があるのだ。

天涯孤独の身の私を雇ってくれたのは、ここだけだったし。学歴も資格もない私を今更雇ってくれるまともな会社などないであろう。それに入社して一年目の私に、皆さん優しくしてくれている。


特に、私の指導をしてくれている先輩は、細かい部分まで説明してくれて分かりやすい。

女性でも立派に仕事をしていて、男の人たちに負けていない。私の憧れの先輩だ。

そんな先輩に認められたいという気持ちもあり、少しでも仕事を頑張りたい。


「…もう時間ですので」


つい仕事口調で返し、なぜか隣に座ってしまった人と目を合わせないように、立ち去ろうとしたのにかつきはしつこかった。


「君、その制服だと〇〇商事の子だろ?だったら、まだ時間はあるじゃないか。

 ギリギリの所まででいいから、食べなさい」


「…分かりました」


さすがに、会社まで知られていると断りにくい。

確かに残したらもったいないし、もう少しだけでも頑張ろう。もそもそ食べ始めた私を横目に、どこか満足そうにかつきはパンを開けて食べ始めた。……人に説教をしているくせに、自分はパンなんですね。少し恨めしくなり、ジトっとした目線を送る。そんな私に気付いているのかいないのか、彼は美味しそうに菓子パンをほおばっていた。


なんだか変な人に捕まったな…。

私がかつきに出逢った時の感想はそれだった。




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