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20.永遠の片想い~晋川先輩side~

一端こちらで、儚を苦しめた晋川先輩の過去、心情などを挟ませていただきます。彼女にもいろいろあったんだなーっと、流し読みしていただけたら幸いです。



―――何時からか、可愛い後輩であった彼女が、憎くて憎くてたまらなかった。




最上暁もがみあかつきくんと会ったのは、大学生のころだった。

同じ大学に通っており、ムードメーカーだった彼は何かと注目されていた。始めは誰とでも気兼ねなく話すし仲良くなれるのに、ふとした拍子にみせる冷たい眼差しが、気になって仕方がなくなった。

私は周囲から真面目で取っつきにくいと言われる存在で、彼のようなタイプは苦手だと感じていた。でも彼の不思議な雰囲気の謎を掴みたかった私は、気が付いたらいつも彼のことを探していた。


―――誰の懐にも入れそうなのに、自分の懐には入れさせない。

そんな一線引いた接し方が傍目で見ていて、気になってしょうがなかったのだ。

1年くらいたった頃には、私は彼を好きなのだと自覚した。




それからは、彼と同じサークルに入ったり、同じ授業をとろうと必死になった。

少しでも接点が欲しかったのだ。した事のない化粧も覚えたし、地味だった服装も雑誌を買いあさって研究した。



今まで自分から動いたことはないし、好きになった事もなかった。これまで付き合ってきた人たちは、告白されて嫌じゃなかったら付き合うというもので、誰一人として『恋をしている』という感覚を味わえるものではなかった。

けれど、最上くんに対する思いは、今まで感じた想いとは比べようもない程、強く厄介なものだった。



何とか彼に友人と呼ばれるほど近づき、虎視眈々とその機会をうかがっていた。

彼から少し優しくされれば有頂天になるし、新しい彼女が出来たと聞いたときは、嫉妬でどうにかなりそうだった。それでもずっと想い続けていたのは、最上くんが誰に対しても本気ではないと、分かったからだ。

彼女の話を振ってもそれ程くいついてこないし、別段照れた様子もない。きっと彼は、心の底から彼女たちを愛していないのだろうと、女の勘が働いた。



もちろん、彼女がいるときに浮気したなどの話は聞かなかったし、フリーのときに少し女遊びが激しくなると聞いたぐらいだった。けれどそれさえも、あれだけ格好いいのだから頷けるというものだ。その上、最上くんは優しくて明るい。

まるで私の太陽のような存在だった。


日向に咲いている名もない花のような私にも、満遍なくぬくもりと元気をくれる…絶対的な存在。それは誰の物にもならないと知らしめられているようで苦しかったけれど、「もしかしたら…私なら彼の気持ちを分かってあげられるかも知れないと」いう感情が抑えきれなかった。


現に、彼のふとした表情に気づいたのは私だけなのだ。だから、一度でもチャンスをくれれば、彼は私と言う存在に気が付いてくれるはず。そんな空しい期待だけが高まった。




ある日、親しくなった彼の友人から噂を聞かされた。

『最上は、友達に手を出そうとはしない』というのだ。過去に友達と関係を持ったことで揉めた事があるらしく、それっきり友人とはそういう関係にならないと決めているらしかった。


その言葉に、私は一人納得した。そうか。彼に近くなりすぎたから、私は女として今は見られていないのだ。少し目線が変われば、私の事も女として扱ってもらえるはず。もし私自身を見てもらえさえすれば、好きになってもらえる自身がある。

その為の努力を惜しんだ事はないし、彼が嫌うタイプも熟知している。



大学での四年間では失敗してしまったが、社会に出れば視点が変わるだろうと期待をしていた。残念なことに、同じ会社に就職することはできなかったが、目と鼻の先の会社に勤める事は出来た。


彼ほど有名な会社ではないが、必死に働いて認められようとした。もちろん、女を磨くことも忘れはしなかった。

彼が今まで付き合ってきたのは、みんなあっさりした性格で、すらっとした体格の女性だったので、少しでもそれに近づこうと頑張った。エステにだって毎週行ったし、ネイルから髪まで手を抜いたことはない。



努力すれば、努力するだけ彼に近づき、認められると思っていたのだ。

―――でも、彼がわたしを見てくれる事はなかった。


一度だけ、あまりのつらさに耐えきれなくなり、彼を押し倒した事がある。

恋人と別れたばかりで、どうしても人恋しいのだと泣きおとして、一度だけ抱いてもらった。夢のような瞬間だったにもかかわらず、私は以前より貪欲になり、それから数度彼に誘いをかけた。一番最上くんが嫌うことをしてしまったと気付いた時には、もう遅かった。


…彼が私と会ってくれる事は二度となく、連絡もとれなくなってしまった。

もとより、彼の家は誰も知らず、踏み込めないというのが友人たちの間では暗黙の了解だった。彼と関係を持った時も、せめて思い出を刻みこもうと私の家で抱いてもらった。彼の形跡を残そうと必死だったのだし、好きな人を自分の領域に招けることが嬉しかった。―――けれど、彼はそんな事慣れっこだったのだろう。

今さっきまでここに彼がいたというのに、最上くんが部屋を出て行った後は…ぬくもりすら残っていなかった。







長くなったので、二話に分けます。

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