10.天邪鬼の主張
連載当初からお付き合いいただいている方、新しく興味を持っていただいている方、本当にありがとうございます。
一つだけ、言わせてほしい。
この世には、男性の心をつかむにはまず胃袋から!という言葉があるが、断じて私はそんな事を狙って彼に、おかずを分け与えた訳ではない。
本当に珍獣を手懐けている気分なので、未だに彼にかまわれている事は不測の事態なのだと主張したい。最初は本当に、つい興味本位で野良猫に餌を与えてしまったくらいの気持ちだったのだ。
もし皆さんがこの立場をうらやましがるのなら、ぜひ変わって差し上げたいし、私をいちいち睨んでいくお姉さま方に、片っ端から事情を説明して歩きたい位だ。
けれど、明らかに彼と吊りあってない私たちの関係は、周りから見たら『若さだけを武器に彼に迫っている勘違い女と、心優しい男性』というものになってしまう。
彼に気のある女性から言われるならまだしも、何も知らない男性社員からもうまく取り入っている女だと言われているのには正直堪えた。
いつ、私がそんなものを欲しがったというのだろう。
私はただ、目立たず穏やかに生活したかっただけなのに、それはそんなにいけなかったのだろうか。安定や安穏を望む事が、罪なの?
それとも、碌な学歴も実力もない人間は、お偉いエリート様に近づくことすら罪だというのだろうか。
自分の思考が卑屈だという事を、私は知っていた。
だから、最上暁という男性に声をかけられる事も、女性として喜ばしく感じるよりも、面倒だという気持ちが先立つ。
彼に気遣われることで、余分な敵が10人は軽く出来ている。
そのことは「なるべく波風立てず、目立ちたくないと」考えている私にとってみたら、煩わしさしかないのだ。
いくら女として間違っていると言われようと、その考えを変える気はなかった。
これ以上、敵を増やしたくはないから、せめて彼の優しさに甘える事のない様にと、いつも心がけていた。
結局、私は自分の身が可愛いのだ。こんなとろい癖に変なところで強かになる女に好かれても、彼にとっても迷惑なだけだろう。だから、少し距離を置いている知り合い程度の今の関係が一番よいのだと考えていた。
―――それなのに、目のまえで倒れられたかつきが倒れたのを境に、私は自分の心と向き合わざるおえなくなってしまった。




