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殲滅撲滅だいばくはつー

殺して、殺して、殺して、殺して、また殺す。隠蔽と感知スキルをフル稼働しながら。見せしめのため、できるだけ派手な死体を残す。

貧国とはいえ流石は一国の王、俺より俺の「使い方」が分かってる。ムカつく。


国中を移動するために初めて移動チートを使った。うん、俺の性格どおり苦手な部類だ。一度に移動できる距離は数キロが限度か。発動制限もクールタイムも無いから連発すれば数十秒で国の端から端まで往復できる。ただ、クールタイムなしなんだから全力出せば数秒、或いはもっと早くてもいけるはずなんだけど、気持ち的に間隔が必要でちょっと時間がかかるし、連発しすぎると精神的に疲れる。移動なんてしとうない!


それでも移動チートのおかげで国中を殺し回れる。といっても拠点にしてる町が一番栄えていて、他の町や村は正直しょぼい。ダンジョンを有する地域は他に数か所あるんだけど、どこもしょっぱくてあんまり栄えてない。その分人さらいも少ないから殺し回る身としては助かる。


元山賊のおばさん兄弟(おばさん兄弟って何だよ、でも気に入った、うん、彼等の事は今後おばさん兄弟と呼ぼう)はクソ真面目に「商品」の後始末を頑張っている。山賊経験が活きているのか、脅しと泣き落としのバランスが良いのかな。次々と受け入れ先を見つけていく。俺にはとても出来ない事だ。素直に敬意を抱く。手伝わせといてなんだが四人じゃどうあがいても回らないだろと思ってた。でも、どこでどう集めたのか人手もわんさか増えてそれをおばさん兄弟が指揮し、国中をカバーしていく。交通費は渡してるけど、カネがあろうが移動チートも無いのに馬車馬の如く、というか本当に馬車で国中駆け回って、これじゃ完全に慈善団体おばさん兄弟だ。


人身売買の撲滅など可能なのか。これが例えば「全体としては裕福だけど格差のヤベーでかい国」とかだったら俺の手には負えない。頭脳プレーが必須っぽいし、本気で根絶したけりゃ偉い人達に善政を布いて貰う他ない。だが、この国が貧しいからこそ、ごく単純な方法が効果的になる。元々貧しい国で人さらいをやるのはローリスクローリターンの商売だ。バカみたいな方法で良いからとにかくリスクさえ上げてしまえば、直ぐに「割に合わないビジネス」になる。


そこで俺の出番だ。人殺しに抵抗が無く「倉庫」で「商品」を見ても一々動じない。

でも人さらいを殺すのは別に楽しくないし気分も良くない。王子を殺した時は清々しかった。俺が殺したい奴を殺したい時に殺したい分だけ殺した。今は違う。なんで殺し回ってるんだ?むしろ人身売買が横行してた方が美少女奴隷とか買えるチャンスがあるかもしれないぞ。

そういう風に考えてると段々もう全部どうでもいいやって気がしてきた。国王殺してさっさとこの国を去るか。


「わ、私はあんたを尊敬してますよ。すでに人さらいは大分減ってる。特によそから来てた連中はさっさと居なくなってます。この国が貧しいって言ってもさ、いや、貧しい国だから余計に、人身売買を無くすなんて普通はできっこない。あんたは、凄い御方ですよ」


あからさまなおべっかだが、年の功かこのおばさん特有のスキルか、嫌な感じはない。もうちょいだけ木に登ってやってもいいと思わせてくる。おべっか言うだけでなく、おせっかいにも「つい最近貧しいこの国に突然現れた熟練冒険者」が人さらい殺しと結び付けられないように動いてくれていた。目敏い奴には逆効果だし目敏い奴なら俺の仕業と分かっても藪から蛇を出そうとはしない、といって止めさせたけど。

王子殺し(事故死として公表されたが)の件もあるから疑われるのはむしろ当然も当然。やっぱ貧しい国だからぎりぎり何とかできる仕事だよなー。豊かな国でこんな暴れてたら色んな関係者がごちゃごちゃして凄腕の刺客とかも出て来て面倒どころの騒ぎじゃなくなると思う。


よしなしごとを考えつつ殺しに殺し続けてたら、直に計算のできる奴等は皆廃業した。面白かったのが「受け入れ先」に転身した奴。

それでも、中々根絶とまではいかない。


BtoC、BtoB、いずれも買い手はもう殆どいないのに押し売りしてまでビジネスを続けたがる奴が少なからず残った。「在庫」が積みあがっても諦めるどころか、それを「守る」ために厳重警戒、警備を固める。高価な魔道具まで導入している奴も少なからず。大赤字だろアホか。どうせ俺相手には全く無意味なのに。何故そこまでするのか?俺が憎いとか人さらいのプライドなら分かる、場合によっちゃ見逃しても構わないと、あえて何度か姿を見せ聞いてみたが、その度に後悔した。答えはいつも予想通りだった。


「乞食は嫌いか?」


ビジネス、カネ稼ぎ、それは手段に過ぎないはずだが、いつの間にか目的と取り違える奴がいる。プライドとは違う。口ではプライドと言うが、奴らの言うプライドとはカネ稼ぎを神聖視するための道具でしかない。カネではなく、カネを稼ぐという儀式が根幹。傲慢であるためにカネが欲しいのではなく、カネを求める、いや、カネを崇め続けるために薄っぺらい傲慢さを纏う奴等。


そういう奴がいる、いや、そういう奴等だらけだった前世があっても、俺には微塵も理解できない。理解できないが居るものは居るんだから仕方ない。この世界にも居る。人さらいなんてビジネスをやってる連中にさえ、居る。だから全員殺す。親のすねより見た意味の分からない醜悪な生き物達の蠢きを全て止めていく。この世界では、俺は殺せる。そう思えば、凄く嬉しい気持ちにはなれないが、多少の慰めにはなる。


殺した分だけ後始末も大仕事になっていった。俺としては正直どうでもいい。ただ、元山賊おばさん兄弟は死に物狂いで「元商品」達の行き場を見つけようと駆け回り続けている。こいつらの事も俺には全く理解できないけど、見ていて嫌な気分には、ならない。


そこで一つ試してみた。多分、転生以来一番やべーチート魔法を。設置から発動まで全て完璧に隠蔽される罠魔法。条件を踏んだ者を全員静かに即座に殺す。範囲はこの国の受け入れ場所全て、とオマケでオバキョダのねぐら、それぞれの周囲数百メートル位。発動条件は「元商品」或いは「新商品」ついでにオバキョダを狙う意志を持って範囲内へ侵入する事。フィーリングでしかないんだけど、今の俺に出来るギリギリっぽい感じがある。疲労は感じないが、このチート魔法を発動し続ける限り他のリソース?には限りありますよって感じ。色々注文が多いから仕方ない。ギリギリでも出来たから良し。多分、転生直後の俺にはできなかった。

ダンジョンにも一応潜ってるけど……殺人でも、殺人の方が「経験値」が稼げるって事だろうなー。


リソース制限があっても人さらい殺しには支障ない。魔道具はヤバいかもと思ったが、どうも、上手く扱えてないみたい。試しに鑑定してみた。用途は分かる。構造と使い方は……うん、俺も使いこなせない自信しかない。俺のチートと似ていて、簡単便利多機能にしようとするほど大量のマナや精緻な加工が必要になり、そういう高級品には流石に手が出せなかったのだろう。売り手も大概だな、絶対使いこなせない客だって分かってたはず。まあ死の商人の撲滅までは頼まれてない。一応目に付いた魔道具だけは「消して」おくけど。


そんなわけでようやく全員殺した。


仕事は終わった。勿論一時的なものだ。何年、或いは何か月保つのか。それに「商品」が「人間」に戻って心から喜べるのは余裕のある国だけ。急に増えた食い扶持が軋轢を生んで、人さらいが居た頃より凄惨な事が起きる。可能性は十分だ。

知った事か。約束は果たした。


この国に居続ける気持ちは無くなっていた。ここまで計算の上なら、やっぱり権力者には敵わんな。マジでムカつく。やっぱり殺して行くか、という気持ちをぐっと堪える。いや、堪えなくても良いか?でもなー。良いように使われた身で言うのは凄く負け惜しみっぽいが、あの国王が賢君、名君とは全く思わない。でも、あれよりマシなリーダーをこの国が見出だせるのかといえば、それも無理だろう。国王を殺すのは簡単だけど、それでこの国を余計傾ける結果になるのは気に喰わない。何故って、何故だろう。


お宿の看板娘はともかく、おばさん兄弟の顔が浮かんで、アホみたいな気分が怒りを押し退けた。

もういい。今日受けたクエストの報酬を受け取ったら、この国を出ようと決めた。


冒険者ギルドに国王が来ていた。来賓室(この建物にそんなんあったんだ)で対面する。


「あなたに会いに来た」

「何用で」

「まずは感謝を。あなたのおかげで人身売買は一掃された。ありがとうございます」

「……いえ」

「報酬金を受け取っては頂けないか」

「要りません」

「では最後に一つ。……息子の骨はどこにあるか、答えて頂けるか」

「死体は売りました」

「……そうか」


ようやく見れた怒り顔。望外の追加報酬に喜びながら、俺は異世界最初の国を去った。

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