ラスボスさんいらっしゃい
俺は天界の新妹女神達がはにかみながら女神としての一歩を踏み出すのを、じっくり、たっぷり、これでもかと堪能し尽くしてから、ひとり「元」殺し合い界に戻っていた。だだっ広い空間に1500余りの石や部品?や謎の道具?を散らかして。
四つの世界。人間の世界と魔界は表裏だが実際の行き来は俺以外には不可能な難易度設定で、天界とここは、より近くワープ一つで飛べる仕様だがノーヒント。天界にここの事は微かにも伝わってなかったし、逆も然り。
……等と情報を並べてみても俺の頭でどうしろと。いかにも作り手が居そうな世界って事は分かるけど。
という事はまあ、もう一つの世界なり「デバッグルーム」があり、そこへの到達か+アルファなんかするのが永命の種族になる条件という気がする。
正確には「願いが叶う条件」かなー。でもクリアさせる気ないだろ。俺は異物で、作り手の意図ではなかった……直感だけどそんな風に思う。まあ、そう思いたいだけで手のひらで転がされているのかも。今の所、どっちかなんて分かりはしない。この世界の制作意図からしてさっぱりだ。意図なんて無いのかも。
まあ分からない事は分からない。
で、現状唯一の手がかりっぽいものを適当にいくつか手に取ってみるが。これまた何にも意味不明。
自分で分からないなら?そう、分かる奴を連れて来ましょう。つっても女神達は古参新妹のいずれも何も知らなそう。俺よりはいい考えをくれる可能性は十分あるから後で聞きに行って(建前)くんずほぐれつして(本音)しに行くのも良いけれど。
んー、餅は餅屋……といってもこれらが餅なのかすら怪しいが。
人間界から直接ワープさせるのはやっぱり無理そうだ。じゃあチートで魂的なのだけを抜いてみる。あ、これなら行けそう。魂を誘拐してここに拉致。ついでに授肉。蘇生より遥かに容易い。永命にもなってる。
「おめでとう。これで君も女神の仲間入りだ」
「流石に急すぎてついていけない。……でもね、あなたにまた会えたのは嬉しい。すごくっ」
可愛い事を言ってくれてるのに申し訳ないが、シリアスな相談をしないとね。
「きゃっ、もぅ。そんなアイデアばっかり出して。……じゃあ、こういうのはどうっ?」
「くっ、やりおる。流石は技術者、凄いテクニックだ……」
尻でアスな花し愛を続けながら、餅屋の見解を問う。餅ではあると思われる……と。
「ごめんね。せっかく呼んでくれたのに大して役に立たなくて」
「いやいや。勝手に魂にして授肉して永命にしてんのに許してくれてるだけで女神がすぎるから」
「それは、その、あなたが望むなら私はどんな事でも……」
もちもち屋のおもちをいっぱい食べて、さて次の一手は。
数で勝負だ。教師ごっこ兼実験体を務めた十数名と、一期生の美少女中、俺がグッと来た娘達の魂をお呼び出し。総計68魂。授肉。よし!
もう人間界に戻る気は無いので政治だ何だはどうでもいい。
だからまあ、ついでにまあ、ついでにね。
「主様、主様、主様ぁああああっ!」
「黙れ」
「でもこの身体を頂いて分かります今なら主様が私を受け容れて下さるとそれが分かってしまったからには主様は今その崇高な目的の為最後の一歩を進む大事な時期だと分かっているのにこのはしたない雌が思いを堪え切れず主様の優しさを知るからこそ甘えてしまう愚をどうかお叱りくださ」
69名の新妹女神達に丸投げして俺は寝た。起きたら元部下が絡みついてて何だこいつと思った。結局何も分からないそうだ。謝られるとこっちが申し訳なくなる。ここに居る全員俺より頭が良い。その集合知で何も分からんならしゃーなし。
俺は数百年ほど遊び散らかした。新妹女神達も今ではすっかり古参と言えるでしょう。半永命でもたかが数百年程度なら支障はない。じゃあ焦りは全くないかと言えば嘘になる。
ある日、新規結成されたヴァーチャル女神アイドルグループが先輩達に微笑みながら宣戦布告する生配信を技術者女神が作ってくれたつよつよPCで眺めていたら、前世の嫌な記憶が浮かんだので記憶をこの世界に慌てて切り替える。
天界は素晴らしい。殺し合い界は意味不明だったけど蘇生して女神が増えた。魔界はほぼ素通り。人間界は……。オバキョダは納得のいく一生を送れたのだろうか。死。死にたくない。ああ、ほら、別の事を考えろ。山賊おばさんに見送られた頃はこの世界の人間界でやっていくのかと思っていたが、無理だった。天界があったから生きてこれたけど、無かったら俺はとっくに人間界全部を巻き込んで拡大自殺とかしてそう。いや、ないか。どうせ直前で躊躇って、半端に殺して、半端に病んで、この世界にも馴染めないのかと悩んでいた事だろう。
……馴染めない?
天界は何らかのバックアップ、または郷愁?殺し合い界はそれが歪んだ形。
人間界や魔界こそ本命の遊び場、実験場、シミュレーター、ドールハウス、何でも良いけど、それを作ってみたはいいが結局馴染めなかった。遊び方が分からないまま途方に暮れている……。
何一つ根拠はない。ないが。
唐突な思い付きに任せて、それをチートに丸投げして部品やらなんやらにドカーンとぶつけてみるイメージ。
部品たちが形作るものは意味不明。それらが更に組み合わさってグロテスクな巨塊と化しなおも蠢き続ける。空間を埋め尽くすほど巨大な機械達の奇怪なダンス。理論も理屈も知らない。それでも何故かその蠢きに、懐かしい、反吐の出る、逃げ切れない、親しんだ、感情を想起させられる。
やがて小さな扉が出来た。小さくはないな、目の錯覚。俺はその扉を開くと、6畳ほどの狭い天井の部屋で、幼女のような見た目の「それ」と対峙した。
「お見事だね。攻略おめでとう、と言いたい所だが残念!まだ君には試練が」
レーザービーム。素通りしているようだ。
「……はっ、ぜっ、はっ、はぁ、はぁこ、怖いじゃないか、いや違う、怖くなんてないが、無いが!?はは、残念だったね。私が創造主だと分かっているんだろう。つまり私こそこの世界の絶対的な支配者。君の、そんなこ、攻撃……いきなり攻撃?しかも完全に殺す気で?まずは話位するだろ普通、私の見た目を見ろよか弱い幼女だぞ何で微塵の躊躇いもなく殺そうとか出来るの?……いや、怖くないぞ……っ!」
こいつの所業を考えれば可哀そうとも可愛いとも思わないけど、見た目は凄くこっちが悪者っぽい感じになってるとは思う。




