未踏の地に行ってみとう
各種の教育機関から十数名ほど頂いた。基準の一番は殺したくならない事、二番はそれなりに教育者っぽく振舞えそうな事。両者を兼ねる人は結構いたので、若い女性だけに絞っても十分な人数になった。政治だから。俗っぽさの演出だから。肌に触れる必要があるので若い女を選ぶに決まってるから。
この国の教育は前世よりずっとグロテスク度が低い。教育は洗脳だからある程度グロいのは当たり前なんだけど、そこの自覚を本気で失っているサイコパス(世俗用法)しか前世には存在しなかったので新鮮な感覚だ。
で、部下に国側との折衝を丸投げ。こちらの言いたい事は「隠蔽してこそこそ色々やるけど探らず触らず見逃してちょんまげ、その分そっちの頼みとかあれば聞くからぁ、おねがぁい」的な感じ。大人の言葉に翻訳して上手くやってくれたようだ。嬉ションしかねない醜態ばかり見せられるので忘れがちだが、知能面では俺より遥かに上だよなー。
国との調整も済んだのでしっかり隠蔽しまくった上で、さあさあ集めた皆さんにこそこそ、いけない事をたっぷりさせて貰うお時間だ。
「あなたの事は救国どうこう抜きでも気に入ってるから、任せるけど。ん、こそばい、本当にここまで触る事が、必要なの?」
「うん」
「そっか。じゃあ、うん。いいよ。そんな所、んっ、自分でも触った事なかったのに、ふふ」
実際必要以上の事はしない。敏感な部分に直に触れるのは、遠隔でやるより難易度を下げて万が一にも彼女達を「破壊」しない用心の為だ。
支援を超えた永続強化チート。最初のこの人には、技術者としての器用さや柔軟な発想とかその辺だな。いつも通りふわふわしたフィーリングなのだが、同じフィーリングでも気を抜いてても余裕で出来るのと集中しないと惨劇不可避ってのがある。永続強化は、少なくとも今の俺の実力では後者に属する。
「……これで、いいはず」
「もう終わりかぁ」
「変化の実感は?」
「……凄い。ちょっと時間貰える?」
愛用の道具を取り出して事前に用意しといた材料を用い何やら組み立て始める。完全に集中していて、声をかける気にもならない。かけても聞こえないだろう。
「……できたっ!初めて、初めてできたよっ!凄い、凄いっ、ああ、ありがとうございます。あなたって、本当に凄いわっ!」
素直に喜んでくれると結構嬉しいなー。何が出来たのかは全然わからんので説明を聞いたけど全然わからんかった。
ともかく永続強化チートを全員にかけた。効果は上々。皆感動してくれている。それはいいけど、コツを掴んで後半は頭に触るだけで出来るようになり乙女の聖域を穢さずに済んだのに何故か不満がられた。んー、天界での経験がこういう方面にも影響してるのか?嫌な気はしない、するわけないが、あんまり度が過ぎると面倒に繋がるか。気を付けよう。何をどう気を付ければ良いのか分からなくとも。
二回目の永続強化。今度は教育者としての資質的なのを伸ばす。こっちはおまけ程度のものだが、今後生徒を取ってカモフラージュとはいえ教育を担って頂く以上、少しでも良い先生になって貰うのに越したことはない。
「えー、皆さん、身体の調子は?へんなとこないでしょうか」
「最高!」
「凄く、良かったです、あ、いえ、凄く良いです」
「問題なーし」
「わ、私はちょっと調子悪いかもです、やはり初期の方法で改めてお願いしても……?」
うん、大丈夫そうだ。これで教育機関ごっこを始めて実験材料を集められる。
「あ、一つ聞いてもいいかしら」
「どぞ」
「ここは結局主に何を教える学校なの?」
「……それが問題だ」
困った時はどうする?そう、丸投げだ。教育者として開花した皆さんにあーでもないこーでもないとアイデアを出して貰い、結局は普通の高等学校にしようという事になった。皆さんがそう決めたなら従いましょう。
そしてオープンした高等学校。生徒は一期生は麗しい女生徒ばかり集めてたけど、実験を重ねて遠隔でも不安なく出来る位にチートが上達したので二期生は数を重視して誰でもいいからよこせとなり、国に借りた敷地一杯に並べたモルモットもとい生徒達に永続強化をかけまくる。
成果は素晴らしい。凡百のボンボンが一流の魔法使いの道を歩み出したりは珍しくもない。元々才能のある者も更に伸ばせる。
ただ、調子にのってやり過ぎたな。結局隠蔽した意味を捨てて国側に概ね全部明かしておいた。今後毎年やる気もないし。この二年で強化した若人達を上手く活用して国家運営頑張って下さい的なメッセージをまた部下に丸投げして、俺は天界に高飛び。
教師陣と一期の女生徒達とついでに有能変態ペットからの好意で俺も苦しいんだ。解消すべく天界で再びめくるめく日々を送り、堕ちてきた頃には決意を固めていた。
部下を呼ぶ。いつもうるさい彼女が無言。察しているようだ。いつもこうなら完璧な有能美女なのにな。まあそれじゃこいつらしくない。
「餞別だ」
言って、敢えて一番最初の方法で部下に永続強化をかける、かける、かけまくる。真っ赤に頬を染め静かに涙する顔を見てたら名残惜しくなったが、でも、連れてはいけない。
「この国にこだわらなくていいから、とにかく生き延びろよ。生きてたら……まあ、いつかまた会おう」
「主様も」
いつになく強い口調で言われる。
「主様も、絶対に死なないで下さい。生き延びて、あなたの望みを叶えて下さい。それだけが私の望みです」
「……分かった。これまで、ありがとうございます。クビっ!」
「ひぅぅうん、うわぁあああんっ!」
悪いな。さよなら。長生きしろよ。
移動チートで世界中を巡り始めた。先ずは情報収集。嫌いなおべんきょも頑張った。が、成果はいまいち。未踏の地について。なんせ未踏だからなー。難しい理論による仮説はいくつもあるけど役に立たない。いや、役に立ちうるとしても俺の頭には入らないんだから意味がない。結局は自分で足を踏み入れてみるしかない。
踏み入れた。初めの内は静かだったが、静かなまま、何十万を超える魔物達に囲まれた。なるほど。そりゃ「未踏の地」だわ。皆殺しにする。魔石はほったらかし。俺には要らないものだ。それより、魔物達がいるって事はダンジョンがあるって事だろうか?
軽く感知しただけでダンジョンの入り口を数百以上見つけた。ここはまだ未踏の地の端も端。
いよいよダンジョン攻略のお時間か。




