2度目の邂逅⑥
だがしかし練習自体に限って言えば、それはあらかじめ想定していたほど壊滅的なものではなかった。
少しずつ日が傾きかけているとは言え、まだまだ強烈な暑さの支配するグラウンドを、「部長」の指示で駆けずり回った俺は、むしろ大量の汗と引き換えに言い知れぬ爽快感を覚えさえしていた。
メニューの内容は2人きりでボールを放り合いながらただひたすらグラウンドの端から端まで往復し続けるという、なかなかどうして戯けたものであったが、その病的な単調さが逆に好感をそそった。
結局何事においてもシンプルなのが一番良いのだし、また下半身の強化は俺の望むところでもある。相手が「部長」でさえなければ、完璧なのだが……。
つまり練習自体は意外にもそれなりに滞りなく進行し、わずかながらの充実感とともに幕を閉じたのである。
逆に言えば、本当の意味での「鍛錬」、すなわち欲求の充足の対極に位置する厳しい厳しい苦行が始まったのは、練習後のことであった。
何しろ、これでようやく本当に解放されると思い、嬉々としながらグラウンド整備の体験にまで積極的に精を出した俺を、「部室見学」という名のイベントが待ち構えていたのだから。
そう、「部長」を自称するあのクソ野郎は、恐らく誰かと一緒に練習できたことがうれしくて仕方なかったのだろう、頼んでもないのに部室を案内してくれることをし始めてくれたのだ。
自分の体力や時間を削ってまで新入部員候補に「おもてなし」を施そうとする献身的な姿勢は、とらえようによっては、確かに「先輩の鑑」と言えなくもない。
だが少なくともこの俺にとってその気遣いは「ありがた迷惑」でしかなく、どれだけ好意的に評価しようと試みても、「厄介この上ないもの」以外にはなりようがなかった。
相手の事情を慮ることなく自分の要望をただひたすら押し通そうというスタンス自体が個人的には耐え難く不愉快だったというのもあるが、そういう情緒的な問題とは別に、「部室見学」それ自体に全ての元凶は存在した。
なぜならせっかくのご好意を無下にする形で断じてしまい大変申し訳ないのであるが、その部室は、あまりにも、臭すぎたからである。




