2度目の邂逅⑦
その臭いは入室前から、だいたい格子窓の辺りが視界に入ってきた時ぐらいから既に俺の鼻腔をくすぐり始めていた。
初めは気のせいかとも思ったが、そうではなかった。
「部長」が扉を開けた瞬間、室内から飛び出してきた何とも形容しがたい、それでもあえて名状するならば酢に近い異臭に取り巻かれてしまった時点で、俺は全てを本当に理解した。
その、この世のものとは思えないあまりに強烈すぎる臭いは、全身の毛穴から体内に入り込んでくるようで、大げさでなく命の危険を感じた俺は耐え切れず、「部長」を押しのけるようにして駆け出した。
もはや「部長」の自己顕示欲の充足に奉仕する役割を担っている場合ではなかった。
練習中よりもよほど真剣に走った。走って走って走った。
しかし結局のところ、もう手遅れだった。
何とか学校の敷地から外には辿り着けたものの、校門を出てすぐのところで俺は強烈な吐き気に襲われ、再び静止せざるを得なくなった。
悪臭が自分の身体から発せられているように感じ、冷汗が収まらない。
暑いはずなのに寒いと感じ、心臓の震えが止まらない。
無意味な願望だと知っていながら、頼むから救いの手を差し伸べてくれと、俺は神に繰り返し呼びかけずにはいられなかった。
そうしているうちに気づけば時刻は既に午後7時を迎えようとしていた。
真夏の長い日がほとんど沈み、代わりに夜の足音が少しずつ忍び寄ってくる時間帯である。
そんな中、俺は並木の幹に手を突くようにして下を向き、ただ一人、悪感をやり過ごし続けた。
しかし、「補習」から、いや実際には家でハハオヤに罵られるところからいつも通り始まったそのあまりに厳しすぎる夏休みの1日は、まだ本領を発揮してはいないようだった。
そのことを身を以て知らされたのは、あらゆる意味でボロボロになりながら、ようやくたどり着いた地下鉄の駅のホームに、シライシアカネの姿を見かけた時である。




