2度目の邂逅④
それでも俺は、どちらにせよ16時半までだ、と胸の内でそう自らに言い聞かせ続けて何とか冷静さを保っていた。
「学園祭準備」の最終下校時刻は、16時半と定められていた。
つまり何をするでもなくただぼんやりとして時間を潰し、数時間が経過するのを待ちさえすれば、必然的に「解放」がもたらされることが決定していたわけだ。
そしていかにそれが厳しい苦境であっても、「終わり」さえ見えていれば、耐え続けるのは造作もない試みとなる。
これはただの一般論ではあるが、実際それまでの夏休みの日々を、俺はそうして乗り切ってきたのであるからして、当該の時点においてもまた、同様の処世術で以て場を切り抜けることを試みるのは極めて論理整合的な正攻法であると言えるだろう。。
だがしかしその日に限って、状況は思いの通りに進展してはいかない。
「学園祭実行委員」とかいうのを名乗り、自らがどうしようもない暇人であることをアピールしているかわいそうな面々が、下校を促すために教室にやってくる直前に教室を出た俺は、これでようやく今日も夏休みが始まるのだと考え、密かに悦に浸っていた。
しかしそのある種の恍惚は、残念ながらすぐさま暗礁に乗り上げ、存在の余韻さえも残すことなく水泡に帰されることとなる。
そう、それはまさしく、「暗礁」と称されて然るべきだ。
なぜならその時廊下を曲がった俺の足許に、所謂「体育座り」の姿勢で硬直したようにうずくまる人物が出現してきたのだから。
もはや皆まで言わずとも明らかだろうが、その人物はラグビー部の部長である。
帽子やユニフォームなど、ラグビーの競技に必要な装備を身に着けてはいるものの、そもそも体躯が屈強であるどころかむしろガリガリであるせいで全く似合っていない。
だがその不調和の感こそが、むしろ当該の人物が「ラグビー部の部長」であることを、どうあっても打ち消しがたい確かな事実として証拠立ててくれていた。
「学校」という特殊な空間のご多分に漏れず、この高校にもおかしい奴は山ほど属しているが、ラグビー部の部長と同じレベルで奇矯な人物はそれほど多くはなく、だからかつて執拗に勧誘されたことのある俺は、しばらく会っておらずともその人物が「部長」であることにすぐさま気が付いた。
要するに、相変わらず部員数の窮乏に悩んでいるらしいそいつは、学園祭準備から家へと帰る連中に対して話しかけるきっかけを作るべく、身を挺して急造の「置き石」に自らを擬していたのである。
相も変わらず他に類を見ないなかなかスリリングな逸物として大活躍を続けてくれていたというわけだ。




