2度目の邂逅③
だが反面、「シライシアカネ」という名前の響きについては、何となく聞き覚えがあるような気がした。
いつかどこかで耳にしたものなのか、もしくは単なる気のせいにすぎないのか……。
思い出そうとしてはみたものの、すぐにタナカが許可してもないのに問いかけを重ねてきたことで、試みはいったん頓挫を余儀なくされた。
「あなた、シライシさんと友達なの?」
「え? ……いや、友達っていうか、まあちょっといろいろあって」
「じゃあよろしくね、ちゃんと気にかけて様子見ててあげて」
「なんで?」心の底から疑問の言葉が飛び出した。
「なんでもよ、じゃあ、今日もお疲れ様、昼からもちゃんと頑張りなさい」
そう言って、タナカは俺よりも先に教室を出て行った。
「……あんたはまず、生徒の話にちゃんと耳を傾けるところから始めた方がよさそうだな……」
こうしてその日の「補習」はひとまず幕を閉じたわけだが、それは所詮単なる「中断」にすぎず、すぐに別の種類の「地獄」が始まるのだった。
タナカとの楽しいお喋りのせいで、結局30分ほどに削られてしまった「トレーニング」ののち、例によって午後から「学園祭準備」に参加させられた俺は、いつも通り3時間ほど、ほとんどただ窓から外を見ているだけで過ごした。
だがこれは決して俺の怠惰さを意味しない。
もちろん積極的な参加はもとより御免蒙るつもりだったが、しかしそれ以前に、「学園祭準備」の最中であるはずの教室内はそういう一個人の主観的な意向が何ら影響を与えられないほど、見事なカオス状態が形成されていたのだ。
恐らく指示系統が崩壊していたためだろう、そこにいる誰もが、何をやればよいのかさっぱりわかっておらず、結果的に銘々が思い思いの行動に好き放題手を染めているだけという、悲惨極まりない帰結がもたらされていた。
例えば腕相撲をする者、ティッシュを箱から勢いよく引き出し続けて大笑いする者、縄跳びをする者、漫画雑誌で殴り合いをする者など、視界内は、そういう蛮族の謎の風習同然の行動で満たされていた。
俺に関して言えば、既に述べた通り、クラスのテーマであるらしい「ダイラタンシー」と「タピオカ」が何を意味するのかさえいまいちわかっていないという体たらくだった。
窓から外を見るよりほかに、いったい何をすればよいのか。




