2度目の邂逅②
「どう……って、何のことですか」
「あたし……、教員向いてないでしょ」自覚していたのか……。
「……なぜ?」
「いや、キミ、はっきり言ってくれたじゃんこの前」
「コノマエ?」
「あたしが教員として全然ダメだって、ズバッと言ってくれたでしょ、だからキミなら、包み隠さずに、本当のことを言ってくれるんじゃないかなあなんて、期待したわけ」
「……あのなあ、『包み隠さず』なんて、そんなのはただの幻想だよ、俺が本当に口にしたい気持ちは、いついかなる時も、誰に対しても、『俺の邪魔をするな』ということそれだけだ、お前らは邪魔だ、目障りだ、汚らしい、みっともない、そもそも甘えるな、お前はそうやって問い訊ねているようで、実際にはただ自分の気持ちを誰かに後押ししてほしいだけだ、そのことをまずしっかり自覚しろ」
「え? なんだって?」
「いや、何でもないです、えー、っと、あくまで個人的な考えなんですけどね」
俺は顔を上げ、タナカの姿を輪郭を中心にぼんやりとだけ捉えるようにして言った。
既に述べた通り、ここで会話を交わすこと自体が俺の本望から大きくかけ離れていたが、何かそれらしい言葉を具体的に与えなければこの場を離れられないらしいと、現状を正確かつ冷静に分析して判断した結果だった。
「まず、生徒に相談しているようじゃダメじゃないですか? 教師は演技でもいいからあくまで、高い気位を保っておかないと」
「……そうよねえ、やっぱ無理かなあ……、新しい仕事、探そうかなあ」
ようやくひと段落ついたようだと俺は思い、ドアの方向に向かって進み始めたが、不意に一つ思いついたことがあって再び立ち止まると、俺はそれをそのまま口にした。
「……ああそうだ、俺からも一つ、質問いいですか?」
「なに?」
なぜかタナカは少し顔をほころばせながら言った。
「……こんくらいの髪の毛で、身長は先生と同じぐらい……、の真面目そうな女子生徒って、誰か知ってますか?」
首の下辺りで横向きに手刀を切るようにしながら尋ねると、タナカは小首をかしげるようにした。……相変わらず芝居じみた野郎だ。
「え? ……そんな生徒なんて、たくさんいるわよ、他に特徴ないの?」
「えーっと、あ、そうだ、確か右の小指の爪だけがめちゃくちゃ長かったような」
「コユビノツメ? ……あ、もしかするとシライシさんかな」
「しらいし?」
「そう、同じクラスのシライシアカネさん、知ってるでしょ?」
「……あ、ああ、ああ、ああ、なんか、そんな奴も、いた、ような、気もするな」
もちろん嘘だった。
そもそも高校に入ってから、俺は女子の顔をまともに見たことすらない。
代わりに煩悩に襲われそうになるたび、九九を初めから終わりまで高速で唱え、タイムアタックをしてやり過ごしている。
だから俺の頭には、顔と名前が合致した状態で記憶されている女子など、今日の今日まで1人として存在しなかったのだ。




