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2巡目⑨

 反射的に目を向けると、彼女もまた、俺の方を見ているのがわかった。

 視線が交錯する。警戒を怠っていたぶん、心臓が再び大きく跳ねることを開始する。

 これはよくないと思った俺はすぐに視線を足元に落とし、言葉だけで小さく応答した。

「ナニガ?」

 しかし、サイトウに毒されでもしたのか、もしくは元から2人で共謀していたのか、定かではないが、女生徒もまた、わけのわからないことだけを口にし始めた。

「ビスケットって、落とすと粉が出るんですよ」

「……?」

「知ってますか?」

 内心強く困惑していたが、真剣に考えるだけ無駄だと思い、そのまま何事もなかったかのように答えた。

「え? ああ、だいたいイメージできるよ」

「でもこの世の中にはビスケットを落とさずに済む人もいる、そんな人は粉が出ることなんて、知らないんだろうなあ」

「……? ああ、そうなんだ、それは面白いねえ、ハハハ、ハハハハハハハハハハ……」

 俺はそう言いながら、鞄を背負い直すと、再び廊下を歩き始めた。

 もちろん何も面白いことなどなく、代わりにもうさすがに潮時だと、そのことばかりを思っていた。

 精神的に限界を迎えたというよりも、わけのわからない奴らのわけのわからない戯言に耳を傾けてこれ以上長い時間を無駄にしてしまうことに耐えられなかったというのが本音だ。

「鍛錬」がまだまだ不足しているということなのかもしれないが、それでも今日のところはもうこのくらいで、十分だろう。

 校舎内のどこかに入り込んでいるのではないかと疑わしく思われるほど、蝉の鳴き声が大きく響いて聞こえる。

 俺はそれを耳にしながら、二度と振り返ることも立ち止まることもせず、汚れた上靴のかすかに黒ずんだつま先だけを見て歩き続けた。


  ※


 展開からしてまた失敗して初めからなのかと観念したが、どうやら正解を引き当てていたようで、2巡目の終りはまだ来ない。

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