「ハゲ」の発見と、「ミチ」との遭遇⑤
人形は全長30センチほどだったが、顔だけが異様にデカく、2頭身がせいぜいというサイズ感だった。
一丁前に瞼がついており、はじめ閉ざされていたそれを指でこじ開けると、舐め腐ったかのように大きな瞳が下から現れた。さらに全身ブヨブヨの締まらない脂肪だらけの肉体をむき出しにして裸だった。小指の爪と見紛うばかりにミニチュアな男性器までリアルに再現されている。
あらゆる細部に関して、よく平気で他人にそれを晒せるなあという感想を私は抱いた。恐らく合成樹脂でできているのだろうと思しき全身が、視覚の面からツルリとした感触を伝えてくる……。
しかしもちろん、その人形に関する最大の問題は、そいつこそがまさしく例の異音の主だったという点にこそ存する。
先から繰り返し提示している「ミチミチミチ……」は、間違いなく人形の内部から聞こえてきていた。
ゴミ袋の山を半壊させたことでより鮮明になった音が、何より能弁にその事実を告げていた。
一言でまとめれば、その時の私は「赤子が泣いている」場面に遭遇していたということになる。
……いや、だがどういうことだ? 「ミチミチミチ……」だぞ? 赤子の、「人形」だぞ? ……さっぱりわけがわからない……。
「真相」にたどり着く前よりもさらに多くの疑問符に頭の中を埋め尽くされ、困惑せずにいられなくなった私だったが、最終的に選択したのは、その人形を拾い上げて自転車の籠に放り込み、家へ持ち帰ることだった。
……いったいなぜ、そうしたのだろうか?
もちろん、誰もいないゴミ捨て場で一人泣き叫び、通行人に向かって助けを求める人形が、関わる者に対して絶対に幸福をもたらさないだろうということは、言わば「火を見るよりも明らか」である。存在自体が害悪であると言っても、過言ではないだろう。
だが私はその「赤子」に備わったある特徴に同情を禁じ得なかった。
その「特徴」とは、ハゲである。
そう、そいつの頭部は、私の脱毛斑が可愛らしく思えるほど、見事に完全にハゲ上がっていたのだ。
ハゲが今まさに死活問題となりつつある私からしてみれば、全く他人事には思えない。それゆえ放置して立ち去るということがどうしてもできなかったのである。
だが結局のところ、私はすぐに、自らの「選択」が、非常に短絡的で、極めて「間違い」に近いものであったと思い知らされることとなる。……でも、まあ、そうだよね。




