「ハゲ」の発見と、「ミチ」との遭遇④
それでも少しの間、私が同じ場所に滞在を続けていたのは、異音の出所が「ゴミ捨て場」ではないかと疑っていたためである。
ちょうど脇を通り過ぎるか過ぎないかというタイミングで、その音が聞こえてきた気がしていた。
もちろん普通の物音であれば、興味を持つことさえなかっただろう。だがその音は特別で、妙に気にかかる響きを伴っていた。
何しろ「ミチミチミチ……」なのだ。声なのか単なる雑音なのかさえ定かでなく、意図的に再現することも叶いそうにない。できることなら正体を確かめたいという強い思いが生まれるのはむしろ必然と言うべきではなかろうか。
しかし実際には、どれだけ耳を澄ませてみても、再びその異音が聞こえてくるということはなかった。
念のためもう一度イヤホンをはめ、同じ曲を再生してみたが、同じだった。
気のせいなのだろうか……。
数分の後、私はいわゆる「空耳」の可能性について考え始めていた。というよりも元より他に可能性など、ありはしないだろう。
繰り返しになるが、「ミチミチミチ……」なのだ。これまでの人生で一度として耳にしたことがなく、普通に生活していれば、金輪際永遠に関係を持つことのないはずの音なのだ。それが一度だけたまたま発生したとするよりも、初めから単なる聞き間違いだったとする方が、解釈としては間違いなく論理的に妥当である。
それで私は結局踵を返したわけだが、頭を捻りながら再びスタンドを倒し、改めてサドルに跨ろうとしたところで、再び例の物音が響いた。
「ミチミチミチミチミチミチミチミチッ……!」
次の瞬間、私は弾かれたように動いていた。
自転車が倒れるのにも構わずゴミ捨て場に向き直ると、悪臭の壁を突っ切ってゴミ袋の山に強烈な蹴りをかました。何度か繰り返したところで破れ目が広がり、中身が力なく漏れ出てくる。
胸のあたりのムカつきが急激に強まるが、蹴り出しを止めるわけにはいかない。
なぜなら私がそうしたのは、ストレス解消のためではなく、ストレスの度合いが限界を超えてついに気が触れたためでもなく、異音の発信源を突き止めるためだったからだ。
つまりその下に、「発信源」があるのだと、既に私は確信していたということになる。
そしてその「動作」は、やがて確かに一つの「成果」へと結実する。
「これは……」
誰もいないのにもかかわらず、思わず声を漏らしてしまったが、ある意味、それは当然の反応だったのかもしれない。
なぜならゴミ袋の山を散乱させた末、発見に至ったのは、世間一般に言うところの、「赤子の人形」だったからだ。




