そして「天国」へ①
街灯の淡い光の下で確かめると、封筒の中に入っていたのは、一枚のレシートだった。
もう一度繰り返そう。
封筒の中には例えば便箋の類いではなく、小さなレシートがたった一枚だけ入れられていた。
コンビニで酒とバニラアイスを購入したとの情報が、かすれかけの小さな文字が打ち出されている。正直言って、非常にどうでもいい情報だ。しかも一度そのままポケットに突っ込みでもしたのか、皺がついてくしゃくしゃになっている。なんでいったいこんなものが……?
訝しく思いながらレシートを裏返した私は、そこに長い文字列が、以下の通り三列にわたって細かく記されているのを見て取った。
僕はいつでもあなたを見ています。
いいか忘れるな。
僕はいつでも、どんな時でも、あなたとともにいる。
……え……っと、どゆこと? ……いや、どゆことも何も、ラブレターってこと? でもこれレシートだよね、……それに、これを渡せってことは、要するに俺の役割は、二人を結び付ける恋のキューピッドとってことか? ……たわけている、あまりにたわけていすぎる……。
私は途端に何もかもがアホらしくなり、そこですぐさま足を止めた。
そして進行方向を変え、新たに駅までの道を選んで歩き始めた。
路側帯の白線の上に犬のクソみたいなのがこびりついていて、ちょうど私の進路とぶち当たる位置だったが構わず踏みつぶし、さらに歩を速めた。
駅へと続く太めの通りの左右には焼き鳥屋、不動産屋、交番、書店や銀行など、いくつかの店舗が立ち並び、さながら商店街とでも称されるべき一帯を形成していた。
要するに頑張って駅前を開発しようしたということなのだろうが、残念ながら異様なほどの人気のなさと、どこからともなく漂ってくる濃密な草いきれの臭気は、間違いなくそこが「田舎」であることを示していた。
大通りの先にはバスロータリーがあり、中央には大仰に噴水がそびえ立っていたが、水は全く湛えておらず、実際にはただの邪魔くさいオブジェでしかなかった。
とは言え、私がやがて道をそれて細い路地に入ったのは、大通り全体を覆う虚飾めいた感じに嫌気がさしたからではない。
むしろその「寄り道」は、完全に予定通りの行動だった。
私は初めから、駅自体へ向かっていたわけではない。
駅近くのその「細い道」の先に、目的の場所は存在したのだ。




