「不幸」の連鎖、そして「ハゲ」の発覚③
すぐ前まで調子こいて喋りまくってたクズどもが、どいつもこいつもアホ面下げて硬直し出したのが一周回って面白い。
つまりたった一言で、私はその場を収めたわけだが、反面、「沈黙」は「一瞬」しか続かなかった。
クズはさすがにクズなだけのことはあり、すぐに今度はアイドルの話題で盛り上がり始めたのだ。
誰々が「推し」だとか、誰々の主演ドラマが最高だとか、誰々がセンターじゃないのはあり得ないとか何とか……。
要するに、思考力が皆無で祖先のお猿さんに全力で謝罪した方がよいほどクズどもは、「授業中に喋っていること」ではなく、「話題が野球だったこと」によって私が気分を害したのだと勘違いしたようだった。……いやいや、なんでだよ、さすがにアホすぎるだろ……。
呆れた私はそれでも次に何を為すべきかを瞬時に判断し、行動に移った。
ホワイトボードの前を悠然と通過し、脇に設置された台の上の時計に手を伸ばした。タワシぐらいの大きさの四角い置時計。「19:46」と時刻が表示されている。
私はそれを取り上げると、一度目の「注意」とは比べ物にならないほどの大声で叫んだ。
「おいクズどもっ、よく見とけよっ!」
さすがに何かが始まろうとしていることに気づいたらしく、クズどもは揃いも揃ってこちらに視線を向けてきた。それでもなお、動きは緩慢であり、目つきには全く集中しようという兆しがない。
要するに、何が起ころうとも、結局それほどひどいことにはなるまいと、タカをくくって心底舐めくさることを続けていたわけだ。
もちろんクズどもが何をしようが今さら驚きなどしないが、舐めた態度をいつまでもとり続けさせてやるほど、私は寛大ではない。
早速、握りしめた時計を、近くの掲示板の表面に叩きつけた。
一度でなく二度、三度、さらに回数が分からなくなるぐらい何度も、無言で延々その動作を繰り返した。
初めは耳障りに思えた時計と掲示板との衝突音が、徐々に爽快さを伴って両の耳から体内に侵入し始め、かと思えば、やがて意識の裏へと後退していく……。
私が動きを止めたのは、合板製の掲示板が凹んで穴が開いたようになったところでだった。
つまり何かをそこに打ち付けることがほとんど効力を持たなくなったタイミングということだが、時計の方ももう既に原型をとどめていなかったので、いずれにしろ、潮時だった。
私は激しく立ち回ったことで乱れた呼吸を整えるため、しばらく膝に手を突き、下を向いたまま肩で息をしていた。
空調装置が生ぬるくかび臭い風を吐き出し、体表面に浮かんだ汗の粒を嫌な感じで撫でる。




