「不幸」の連鎖、そして「ハゲ」の発覚①
紆余曲折あったが、そのように事実として「赤子」を手放せたことで、私はようやく平穏無事な生活を取り戻すことができるはずだった。
これは決して無根拠な願望、言うならば夢物語などではない。
実際、つい先日「赤子」と遭遇するまで、私はこの土地で、確かに「平穏無事な生活」を送り続けてきたのだ。
不吉の予兆を挙げるとすれば、唯一、毎晩の「リサイタル」(タカハシによる「アメイジンググレイス」の熱唱)があったくらいだ。
つまり私の生活は本来「平穏無事」な状態こそがデフォルトなのである。
だが、この語り口から容易にそれと知れる通り、実際には状況はさらに悪化の一途を辿っていった。
そう、「赤子」をめぐる問題は、まだほんの一端さえこちらにその全容を見せていなかったのだ。
例えばタカハシに「赤子」を押し付けた翌日からの2日間、さっそく私は立て続けにいくつもの「不幸」に見舞われることとなった。
時系列に沿って、出来事の発生した順番に箇条書きの形で列挙してみると以下の通りになる。
①翌日は日曜日で仕事が休みだったのでアニメを見まくろうと思っていたら、PCが故障して動かなくなり、修理を試みたり(しかも結局無駄に終わった)、新しいのを急遽購入しに行ったりしているうちに一日が終わってしまう。
②その翌日は出勤の日だったが例によって勤務は夕方からだったので、午前四時前に起き、前日の分も合わせて一日を有意義に使おうと思っていたのに、実際には十時過ぎまで寝過ごしてしまう。
③ただ惰眠をむさぼるためにのみ何時間も浪費してしまったということで、鬱っぽさが膨れ上がり身動きのとれなくなった自分を元気づけるため、前々から興味のあったラブコメアニメの映画を見に行こうとしたら、「架線にビニール袋が引っかかった」とかいうわけのわからない理由で電車が不通になり、席を予約購入しておいたにもかかわらず結局間に合わずに、1500円を無駄にしてしまう。
④既に最悪に近いところまで落ち込んでいた気分を直すために108円と表示のあったアイスを購入したら、なぜかレジで165円請求されてしまい、会計途中で買うのをやめようと思ったが、その程度の金額の誤差でゴチャゴチャ言うのが恥ずかしく思えてきて結局お金を支払ってしまう。
⑤ハゲがバレる。
⑥世界が消失する。
……たわけている、あまりにたわけていすぎる……。
そしてこれらのうちで最もキビしかったのは、言うまでもなく④、「塾生にハゲがハゲがバレ」たことである。




